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塚原の選択

清水が気を失って、30分が過ぎた。


その間柊らと清水の仲間らには動きはなく、互いに手を出す事なく拮抗状態に陥っていた。


だがその戦況は1人の男によって動き出した。




倉庫の入り口が突如開いた。そして1人の男が入ってくる。


倉庫内の全員がその男に視線を向ける。逆光で見えない姿が、入り口の扉が閉じて見えるようになると、清水の仲間らから声があがり始める。


説明せずとも柊達は理解した。彼が塚原なのだと。



勝利を確信し雄叫びをあげる清水の仲間らを掻き分け、塚原は柊達に向かって近付いて行く。


瀬川が塚原の前に立ち身構える。塚原は瀬川の前で立ち止まり、天野に話し掛ける。



「これも全部、お前の思い通りなのか?天野!」


「まぁ、概ね上手くいったと思っているよ…」


塚原はチッと舌打ちしてしゃがみ込んだ。彼はその場に倒れている清水の様子を伺っていた。瀬川は塚原から目を離さずに警戒していたが、それを見て一度身を引いた。


「本当に気失ってやがる…」


清水の様子を確認すると、彼は立ち上がり瀬川達に背を向けた。もちろんその姿を見て清水の仲間達はどよめき始める。


「どうしたんですか⁉︎塚原さん!」


「そいつらやっちゃって下さいよ!」


「清水様の仇取って下さい!」


各々が騒ぎ始める。だが塚原は動かない。


そしてだんだんと騒ぎが大きくなっていく中、塚原は口を開いた。



「いいかお前ら」


塚原が一言発した。それだけで騒ぎが一瞬で収まった。シーンと静まり返る倉庫内に、塚原の殺し屋としての風格が感じられる。


「清水さんはもう終わりだ。この業界でやっていくのは難しいだろう。だからお前らも彼を見限って別の道を選んでいった方がいい」


塚原の言葉を聞いた彼らは、もちろんそのままはいそうですかと聞き分けのいい連中なわけがなく、再び叫び出す。


けれどもそれはすぐにまた収まった。


1人の男が携帯の画面を見て気付く。その男はすぐさま叫んだ。


「おい!みんな!これを見ろ」


その画面には、とあるSNSの掲示板。書かれていた内容は、清水が1人の女子高生に倒されたという内容だった。


周りの男達も携帯を取り出しネットを見始めた。中には清水のライバルグループのメンバーの書き込みや、清水の客の書き込みもあった。『清水は信用できない』や『これを機に清水から客を取るチャンスだ』といった内容だった。



騒ぎは収まり静まり返る倉庫内。それに加え清水の仲間らは青ざめた表情になりつつある。



そんな中、塚原は再び声を掛ける。



「さぁどうするお前ら?信用を失った清水と共に地獄を見るか、彼を早い段階で見限った目利きとして別の道を行くか?さぁ選べ!」



一瞬どよめく清水の仲間達。だがその内の1人が叫びながら倉庫内から出て行った。


それからは早いものだ。俺も俺もと言わんばかりに、男達は持っていた武器をその場に投げ捨てて倉庫内から出て行った。


その壮絶な光景を見て、清水の仲間達がいなくなると塚原は笑い出した。


「ハハハッ!これだけあっさりと見捨てられて、清水さんも可哀想なやつだ。まぁ俺が言う事じゃないけどな。それよりもお前ら、早くここから逃げた方がいい。清水さんの噂を聞きつけた輩が流れ込んで来るぞ」


柊と瀬川はまだ塚原という人物に対して不信感を抱いていた為、警戒している。


「清水に信頼されてるあなたの言うことを、そう簡単に信じるとでも思う?何を考えているの?」


「僕も瀬川さんに同感だな。彼と清水を一緒にしておくのは不安だ」


敵意むき出しの後輩達に天野は声をかける。


「安心して柊くん、瀬川さん。僕が思うに今の塚原さんは味方だ」


「味方ってわけじゃねぇ、清水さんの仲間じゃないってだけだ」


すかさず塚原は天野の言葉を訂正した。


「とりあえず説明は後だ。ここから逃げよう」


柊と瀬川は天野に大人しく従った。天野はだいぶ回復し、後輩達に肩を貸してもらい歩いて倉庫の出口へ向かっていった。


倉庫内に残ったのは、気を失って倒れてる清水、塚原、そして情報屋の女ともう1人…



「いい加減出てきたらどうだ?そこにいるのはわかっている!」


塚原は倉庫の入り口の方に向かって叫んだ。コツコツと足音を立ててこちらに近付いてくる。


「流石は塚原さんですね。気配を消していたつもりでしたが、バレてしまいましたか?」


影から姿を現したのは佐奈田だった。そう言う彼女も気配を隠すのが下手なわけではない。先程塚原が病院内で彼女の魔法で不意打ちを食らったり、今もいつ倉庫内に入ったのかまでは塚原自身も気付かなかった。



佐奈田はゆっくりと笑みを浮かべて歩いてくる。


「おめでとうございます塚原さん。概ねあなたが清水様から依頼された仕事は私をこのアジトへ連れ戻す事でしょう。見事に依頼は成功しました」


「その肝心の依頼主が今どんな状況になってると思ってる?こんな状態で成功もクソもあるか!」


「フフフッ、冗談ですよ。それよりも塚原さんがあの場ですぐに寝返ったのは素晴らしい判断でした」



この倉庫に来る前。病院内で塚原は早乙女から携帯で、とあるネットの記事を見せつけられた。その内容は、清水が1人の女子高生に倒されたという内容だった。


それから塚原の態度は一変し、全面的に早乙女達に協力しようとするものの、結局は何もせずに今に至る。というよりも、早乙女らは塚原の協力など必要にしてなかった。


「まぁな、もともと俺はお前を連れ戻すのに反対派だったからな」


「本当にそうでしょうか?確かに塚原さんは優秀な人物です。こうなる結果も見据えた上で私を連れ戻す事を拒んでいたのでしょう。けどもあの場で、早乙女さんが塚原さんに携帯電話を見せた時はどうでしたか?」


「何が言いたいんだ…貴様は?」



「塚原さん、もちろん持っていたのでしょう?魔薬を。それを武器に色々と行動できたはずです。でもそうしなかった、それは何故なんですか?」



佐奈田が何を言いたいかわからない塚原だったが、今の言葉でおおよそ理解できた。


「そうかそうか…あん時にお前の相手をしたのが、あのガキだったってわけか…」


おそらく佐奈田は先程の塚原と自分を重ねている。早乙女相手に魔薬を使って堕ちた自分と、魔薬を使わず上手くやり過ごした塚原と。


「そうだなぁ、何故魔薬を使わなかったか…それは秘密だ」


塚原は出口に向かって歩き出した。佐奈田を横切った瞬間に、彼女は彼の腕を掴んだ。


「待ってください!」


塚原は掴まれた腕を容易く振りほどき、佐奈田の胸倉を掴んだ。とっさの出来事に佐奈田は驚き怯えていた。


「どうしても知りてぇなら俺にあのガキの事を教えろ。それが出来ねぇならもう俺に関わるな」


塚原はそのまま手を放し歩き去って行った。その姿を佐奈田は呆然と見ていた。


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