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裏切り者

塚原には早乙女の声に気を向ける事なく、紅蓮の首を絞め続けた。紅蓮は必死に手足を動かして抵抗するも、相手は成人男性。塚原には効果がなく、腕が絞まる一方だった。


これでどうだと言わんばかりに苦しませ、塚原は早乙女の顔を見た。不安と恐怖に満ちたその顔を見たかったのだが…早乙女の表情に変わりはない。それどころか怒りに満ちた目で塚原の事を睨みつけていた。


「ウチの生徒会長を苦しませていい気になっているようだが、何か忘れていないか?」


「何だと⁉︎」


この言葉には、流石に必死の塚原も気を向けた。


「大の大人で、見るところこういう修羅場を潜り抜けている様に見えるあんただ。1人の女子高生くらい相手にしても何も問題ないだろう。では大の大人の女性が相手だったらどうだろうか?」


「何っ⁉︎」



突如、塚原の視界が歪んだ。



「何がっ…⁉︎ごばっ!」



何か液体の様な物が塚原の頭部を包み込んでいた。その液体は塚原の口や鼻に入り込み呼吸を遮る。彼は紅蓮を突き離して、その場に立ち崩れた。


歪む視界の中で塚原が見た液体は、この部屋とガラスの窓の奥で眠る小鳥遊の妹と佐奈田が眠る部屋を繋ぐ唯一の出入り口の扉から出てきていた。これでこの液体の正体はわかった。佐奈田の魔法による物だ!


ここで佐奈田が起きていたなら、一緒にいる小鳥遊の妹の魔法が何故発動しなかったのかなど疑問が残るが、そんなのはどうでもいい!塚原は怒りに身を任せて魔法を発動させ佐奈田の魔法を吹き飛ばそうとした。


だが塚原の魔法が発動することはなかった。魔力をどれだけ込めて魔法を発動させようとしても、発動する直前で魔力は消えてしまう。



「遅くなってすいません、そしてお久しぶりです。早乙女さん」



佐奈田が扉の向こうから出てくる。彼女の魔法を見る限り、魔薬の後遺症からだいぶ回復してる様に思えた。そして彼女を見た小鳥遊が少し気まずいように視線を下げていた。


塚原から解放された紅蓮もなんとか息を整えて、しゃがみ込んでいた。早乙女は紅蓮の元へ駆け寄り声を掛けた。



「紅蓮会長、大丈夫ですか?佐奈田さん、挨拶は後だ!」


「どうやらその様ですね。本来ならこの男は私でも敵わない相手、それに私はまだ完全に回復してないですが…早乙女さんがいるならば問題ないでしょう」


塚原の頭部を覆っていた水は、彼の手足へと移動した。手錠を付けられたように自由を奪われた塚原に、さらに追い討ちをかけるよう佐奈田は自身の水魔法を発動させた。


腕や膝にも佐奈田の魔法で縛られ、塚原は芋虫のようにしか体を動かせない状況になった。最後に佐奈田は再び魔力を込めて、水魔法で彼のことを締め付ける。万力のようにゆっくりと大きな力で締め付ける塚原は、次第に苦しい表情になっていった。


「これでどうでしょうか?ゆっくり落ち着いて話ができますかね」


「あぁ、問題ないだろう」


とりあえず紅蓮を塚原から遠ざけ、彼女を落ち着かせた。すると、彼女は数分で呼吸が整い回復した。



「すまない早乙女、助かったよ。後もう1人向こうの部屋に心配しなきゃいけない人がいるだろう?」


「そうですね…気付いたらもうそっちに行ってますわ」



この騒動の中、小鳥遊は自分の妹の水奈の元へ駆け寄っていた。いつ行ったのか早乙女も気付いていなかった。


水奈はずっと寝たきりの生活をしている為、足の筋力が低下し、思うように歩く事が出来ない。壁に寄りかかった体勢でいた彼女を賢は何年か振りに抱きしめた。


「水奈!無事で良かった!」


「兄ちゃん!でもなんで⁉︎火が全く出てこないよ?」


「説明は後だ、それよりも本当に無事で良かった…うっうっ…」


「え⁉︎兄ちゃん泣いてるの?やだ、私まで泣いちゃ…うじゃない…」



数年ぶりに直接再会し会う小鳥遊兄妹。しばらく2人きりでそっとしとこうと早乙女は思った。


頭を切り替え今の状況を把握し直す。塚原を捕え無力化することには成功したが、天野の救出については未だ進展無しだ。とりあえず塚原をどうにかしないといけない。


そう考えていると、塚原がふと早乙女に話しかけてきた。


「早乙女と言ったか?どうやらこの一連の出来事は君がやった事のように思える。俺をよくここまで追い詰めたものだ、見事だよ。それに俺の魔法が発動しなかったり、小鳥遊の妹の魔法も発動してないようだが…これらも君の仕業なのか?一体君は何者なんだ?」


「俺はただの天野会長の後輩だ。今回の事もほとんど天野会長が考えた」


そうは言っても、魔法を消す力があっての作戦だった。病院内の爆破魔法の解除や、佐奈田の小鳥遊の妹と一緒にいる部屋からの奇襲に塚原の魔法の無力化は早乙女がいなきゃ実現不可能だ。


佐奈田を起こすタイミングも正直なところ賭けに近いようなものだった。塚原と共に行動していた紅蓮の魔力を目印に、早乙女は近づいて来るタイミングを計っていた。


佐奈田の奇襲が成功するよう塚原が部屋に入る前に、佐奈田達が眠る部屋の睡眠薬の投与を解除し換気をした。そして向こうの部屋へ繋がるドアを僅かに開け、水奈の魔法が発動しないよう気をつける。


その為塚原が部屋に入る前に感じた風と火の魔力は、小鳥遊兄妹の物だった。塚原が部屋に入った時に違和感を感じさせないよう早乙女なりにカモフラージュをしていた。もちろん佐奈田の魔力は感じさせないように消していた。


そして塚原が紅蓮の首を掴みピンチに差し掛かるところで、水奈の魔力に動きがあった。つまり彼女らの目が覚めたということだ。乱発する水奈の魔法を漂う魔力ごと早乙女は消し去り、佐奈田も辺りを見渡し状況を確認する。後は説明せずとも上手くやってくれたというわけだ。


残る問題は目の前の男をどうするかだ。



「なるほど、流石天野だ。けども清水さんの元へ行った君達の仲間はどうなっているだろうか?無事に天野を救出できていると思うかい?」



ここで早乙女は1つ考えが閃いた。


「塚原さん、どうだろう?あなたが寝返って俺らの仲間になり、天野を救出しに行くっていうのは?」


「…なんだと⁉︎」


「良く考えて欲しい…どうするのかが1番自分にとっていいのか。どっちにしろ清水はもう終わりだ」


早乙女は携帯を操作し、ある記事が載ってるページを開き塚原に見えるように床に置いた。



「なんだ?これ?嘘だろ⁉︎」

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