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奇襲開始(5)

この世界には魔法がある。


属性が火、水、風、土の4種類あり、人はそれぞれに合った魔力を生成する魔生核というのを1つ持つ。


そして中には魔生核を2種類持つ者がいる。それをキメラと言い、通常よりも多くの魔力を持つ。そのキメラの中でも特に珍しいのが火と風の属性を持つキメラだ。


火と風の魔力は珍しい事に混ざりやすい性質を持ち、さらにその混ざった魔力は魔力のままで安定させる事が難しく、すぐ魔法として発動してしまうほど不安定だ。


現に今の世の中で、火と風の混合型のキメラは存在しない。何故なら存在した瞬間に生成された魔力から魔法が発動して自分自身を殺してしまうから。


その魔法の正体は、爆破魔法だ。


自身すらの身を滅ぼす高威力の魔法は、扱いがとても難しい。魔生核が単独型の火と風属性のキメラがいたとしても、常に魔力を分けていなければ、たちまち魔法が発動してしまう。そのため爆破魔法を扱える者は、例え単独型のキメラであっても存在しないと言っていいだろう。


だがこの魔法は悪い事ばかりではない。まずは他の魔法と比べ物にならない程の威力があり、僅かな魔力でも充分な殺傷力を持つ。


そして最大の利点が、この爆破魔法に関しては、魔法発動時に魔力波動が発生しない。通常ならば魔力が魔法に変換される時に、魔法にならない僅かな魔力が存在し、それが魔力波動として放出される。爆破魔法に関しては、魔力がとても不安定な状態で魔法になりやすいため、魔力が完全に魔法へと変換させる事が可能なのである。


つまりは、この世に存在する魔力探知機は魔力波動により魔法発動を記録しているので、爆破魔法は発動しても感知されないのである。


この俺、塚原はそうとは知らずに、この魔法を最も活用できる方法で既に使っていた。



数々のターゲットを仕留め続け、この魔法の特性を知ったのは、清水という客に会ってからだ。





俺は幼い頃から、無意識のうちに魔力を完全に分けていた。それは寝ていて意識が無くても悲しくて泣いても、腹が立ち怒っていても常に完全に分けれていた。つまり魔力を完全にコントロールする事が出来ていた。


そして周囲には爆破魔法を使える事を秘密にし、風属性の魔力を抑え、あたかも火属性の魔力しかないように学生時代は過ごした。


大人になると俺は道を踏み外し、気付けば殺し屋という仕事をしていた。爆破しそうな所へターゲットを誘き寄せ、来たら魔法を発動させる。ただそれだけの仕事である。現実に爆破魔法を使える人間などいないから、これが魔法の仕業だと考える人もいない。そのおかげで俺は上手くやっている、そう思っていた。


やがて年月が経ち、清水という男から仕事の依頼が入る。俺は難無く仕事をこなして彼に報告した。その数日後、彼から連絡が入る。


君はどうやってその魔法を使ったのだ?魔力探知機は魔法を感知していないのにと。


俺はこの時に初めて爆破魔法の特性を理解した。そして俺が今まで上手くやってこれた理由も。



それから稀にではあるが清水から依頼が入るようになり、俺も仕事をこなすに連れ信頼関係ができた。今ではかなりの信頼を得ていると思っている。最近入る仕事では絶対に失敗できない仕事や、危険な仕事などの難易度が高い内容が多い。


今回の佐奈田を回収するのも、それなりの仕事なのだと理解しているつもりだ。



「どうした?ボーッとして」


「いや、何でもないですよ」


「頼むぞ、何としても佐奈田は取り戻さなくちゃいけないからな」


清水より注意を受けてしまった。集中力が切れているのかもしれない。


「すまない、ちょっと外の空気を吸ってきます」


俺は倉庫から外に出る。夜のこの辺りは明かりもなく真っ暗だ。潮風を手で遮りながら煙草に火を付けた。


息を吐いて気分を入れ替えて、今回の作戦を再度頭に思い浮かべる。



倉庫のアジトに捕らえている天野を柊が助けにくるタイミングで、俺が病院から佐奈田を回収しに行くという内容だ。柊が万が一アジト内で暴れられないよう俺は紅蓮を人質兼協力者として同行する。俺の爆破魔法にかかれば人1人殺すのも容易い。


なのに、それなのに俺の心の中には不安が残っていた。それは天野の余裕ある態度だった。


天野という男をただの高校生として甘く見過ぎているのではないか?清水に捕らわれ、魔薬も打たれた今の状況すらも、彼の思惑通りに進んでいるのではないかと。



煙草の火を消し、倉庫の中へ戻る。


俺を不安に陥れている男は床に寝そべっている。出会った時のような魔力はなく、とても衰弱しきっている。目は開いているが、意識は無いのか何の反応もない。



「どうだ塚原?まだそいつから只ならぬ気配を感じるか?」


「…いえ、感じません」


「そうか、なら集中して仕事してもらうぞ。丁度天野の携帯にメールがまた届いた。柊から、明日に天野を助けに行くって内容のメールだ。お前の方も準備しておけよ」


「わかりました」



俺も携帯を取り出し、紅蓮と連絡を取る。


「もしもし、塚原だ」


『はい、紅蓮です』


「この前は辛い事をさせてすまなかった」


『いえ、大丈夫です。それより天野はどんな様子ですか?』


「彼はとても捜査に協力的だ。何でも打ち明けてくれている。それで1つ頼みがあるんだが、いいか?」


『なんでしょうか?』


「明日病院へ行き佐奈田の身柄を確保することにした。そして君の魔公学園生徒会長としての実力を見込み、彼女の身柄確保に協力してもらえないだろうか?成功すれば天野の身柄も引き渡すように今は進めている」


『本当ですか⁉︎』


「あぁ、捜査に尽力してくれたとして今回の件は警察としても目をつぶる事にする」


『…わかりました。私も協力させて下さい』


「ありがとう!助かるよ。ではまた明日、詳しい時間等決まったら連絡する」


『はい、失礼します』



携帯をパタンと閉じる。今回も問題なく話を進められた。だが順調過ぎる事に俺は僅かな違和感を感じていた。



「清水さん、ちょっといいですか?」


「何だ?どうした?」


「今回の作戦で、ちょっと変更して欲しい事があります」


「…言ってみろ」



「佐奈田を回収に行くのは俺1人で行きます。残りの人員はアジトの守りに徹していただきたい」


「おい、それはどういう事だ?」


「それともう1つ、魔薬を1つ俺にくれないでしょうか?」


清水は一瞬真顔になって、次の瞬間に大笑いした。


「なるほどなるほど、塚原はやっぱり面白い奴だよ。いいだろう、お前の言う通りにしよう」


「ありがとうございます。あくまでも魔薬は保険です。使う事は無いと思います」



俺が魔薬を使うという事は、魔力量が約4倍近くに跳ね上がり、魔力コントロールもままならなくなる。


つまり俺が魔薬を打った瞬間、とてつもない程の爆破魔法が乱発する事になる。俺が死ぬのはもちろん、俺の魔力が4倍になれば被害は病院1つでは済まないだろう。流石にこのアジトまで被害は出ないとは思うが。



「塚原、お前が失敗するとは思えないが、どうすることも出来なければ、最悪魔薬を使ってもいい。佐奈田を殺してしまうのは俺の意に反するが、お前の死に免じて良しとする。期待している」


「わかりました」



俺は清水から魔薬を受け取り、倉庫から出て夜の街へ歩いて行った。

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