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天野の考え

時は少し遡る。


柊の家を瀬川と共に出た翌日。俺は毎週日曜日は同好会で魔法館に通っている。今日も例外ではない。


それと天野に報告しなければならない事がある。昨日の出来事だ。柊にも俺の力の事が知られた事だ。この際だから瀬川にも知られてる事も言うつもりでいる。


学校に着き、魔法館に向かう。いつものことながら天野はまだ来てない。というか、俺より先に天野が来たことは1度も無い。



「や〜お待たせ〜」


「おはようございます会長」


天野が魔法館の鍵を開けて、中に入る。


「実は会長にお話があります」


準備運動をしていた天野の動きが止まった。俺の方を振り返り、どうしたのと聞いてくる。


俺はこれまでの経緯を全て話した。佐奈田の事、柊の事、佐奈田の組織から彼女自身が狙われている事。


そして瀬川の事も。彼女には天野と会う前から俺の力の事が知られていた。その事も全て話した。



終始天野は俺の話を真剣に聞いてくれた。瀬川の事も、俺が今まで黙っていた事も含め怒られるのを覚悟していたが、彼は常に冷静だった。


全て話し終える。長い時間話したと思ったが、時計を見るとまだ9時15分。天野相手にこんなにも真剣に真面目に話し、彼も真剣に聞いてくれたのは初めてじゃないだろうか?余計に俺も力が入ったようだ。まだ今日は始まったばかりだと言うのに、疲労感に襲われている。


「そうかわかった。で、君は僕に何をして欲しいんだい?」


天野は俺の心を見透かしている様だった。彼にこの話をしたのは、彼の言う通り。最悪の事も考え保険をかけるつもりで話した。


天野の助けを借りれば、最悪の結果にはならないと俺は考えた。けども天野は俺の力の事が知られるのを避けている。これ以上足を踏み入れるなら、もっと他の人に知られると考えるはずだ。


俺が何も言えず黙って俯いていると、天野は近付き肩に手を置いた。



「まぁ落ち着いて。よく話してくれたね、ありがとう」


「…すいません」


「君は僕の魔法研究同好会の会員だ。そして君の友人達を僕は見捨てたりしない。だから安心して欲しい」


一気に肩の力が抜けた。安心して深呼吸をする。緊張から解放された今、もうそのまま横になって眠ってしまいたい。けどそんなことは言ってられない。


「とは言ったものの、僕もどうすればいいかわからないからね。佐奈田さんとは連絡できそう?」


「柊の携帯知ってるので、大丈夫だと思います。少し待ってて下さい」


ポケットから携帯を取り出し、柊に電話をかけた。


『もしもし…』


4コール目くらいで柊は電話に出てくれた。普通の高校生なら休みのこの時間には、まだ寝ている人も少なくはないはずだ。きちんと起床している点は、流石は学年のトップの成績を誇る生徒といったところである。


「もしもし、早乙女だ。休みの早い時間にすまないな」


『別に気にしてないさ、ところで用事はなんだい?』


「佐奈田さんと話がしたい。君も一緒でも構わないが…」


『…ちょっと待ってて』


ゴソゴソっと携帯を何処かにしまっている様な物音が聞こえる。数秒後に再び同じ物音が聞こえてきて、女性の声が聞こえてきた。


『はい、佐奈田です』


「朝早くにすいません、実は昨日の件で話をしたい事がありまして…ちょっと時間いいですか?」


『はい、構いません』


俺は、天野にも話せるように携帯をスピーカーモードに切り替え床に置いた。そして天野に話してもいいよう合図をした。


「佐奈田さん、初めまして。僕は天野風馬です。話は早乙女くんから聞いてます」


『…天野ですって⁉︎』


電話越しでも俺にはわかった。天野の名前を聞いた瞬間、佐奈田の様子が一変した。


「その様子だと、僕の自己紹介は以上でいいみたいだね。では話を進めよう」


「いや、進めないで下さい!どういうことですか?天野会長は佐奈田さんの事を知ってたんですか?」


え?っとでも言いたげなおとぼけ顔で俺の顔を見る天野。電話の向こうの彼女も何も言わずに黙っている。俺だけが状況を理解できていなかった。



「彼女はこの前、小鳥遊くんを誘拐するにあたって、この魔公学園の事も調べたはずだ。それなら僕の名前を出せばどんな人物かくらい分かるだろうと思って言ったんだけど、合ってるよね?」


『…そうですね、天野さんの言う通りです。ですが驚きました。あなたがこの件に関わっているなんて。正直なところ、天野さんの助けを得られるなら私も安心できます』


なんでこんなに天野は佐奈田に信頼されているのだろうか。俺はまだこの時は理解できなかった。


「では話を進めよう。あなたの組織のトップには、早乙女くんのことをどこまで話していますか?」


『名前までは話してません。魔法と魔力を消せる男子生徒としか言ってないです』


「なるほど、次に佐奈田さんの今の場所は清水さんに把握されてると思いますか?」


『既に知ってると思います。清水様は、情報屋と呼ばれる人と付き合いがあるみたいです。その情報屋の事は良く知りませんが、正体不明の女性のようです。とても情報通で、彼女から逃れるのは不可能だと思います』


「何故情報屋から逃げ切れないと言い切れるんだ?」


『彼女は魔力探知機の記録も見る事ができるみたいです。それに引っかからないで逃げるのは不可能でしょう』


「魔力探知機の記録を見る事ができる…か」


会話が一旦ストップした。天野は俯いて一点を見つめている。何か考えているようだ。


彼が考えている事は俺にはわからない。ただただ天野が再び口を開くのを待っていた。


『もしもし?天野さん?』


佐奈田が声を掛けた。天野は我に返ったようにごめんごめんと謝り、話し始める。


「情報屋の彼女は、僕の事を知ってると思いますか?」


『知らない筈が無いと思います。それに天野さんがこの件に絡んでいるなら、彼女は清水様に私を諦めるよう言うと思います。清水様は従わないと思いますけどね』


「…なるほどなるほど、佐奈田さん、ありがとうございます。ところで僕に考えがあります。早乙女くんも聞いて欲しい。なんなら柊くんも」


『わかりました。ちょっと待って下さい…はい、大丈夫です』


佐奈田は携帯をスピーカーモードに切り替えた。


「まず、佐奈田さんが今いる柊くんの家は安全な場所だと思う。だが逆に柊くんが危険だ。僕が清水さんなら柊くんを誘拐して脅したりして佐奈田さんを家から出そうとする。そうならない為に、まず佐奈田さんを移動させようと思う。場所は病院、小鳥遊くんの妹が眠っている病室だ」


この話を聞いている3人が耳を疑った。佐奈田はえっ⁉︎っと言って天野に聞き返していた。


「みんながそう思うのも当然だろう。けどもまぁとりあえず話を聞いて欲しい。佐奈田さんは小鳥遊くんの妹さんと一緒の病室で眠ってもらう。確かその病室は魔力を一切通さないんだよね?それなら魔力探知機から逃れる事ができる」


『ですが、情報屋の彼女は魔力探知機の記録を見る事ができるんですよ?履歴を辿れば何処にいるか分かりますよ?』


「それで佐奈田さんを病院まで行く際に僕が同行する。そして情報屋に僕がこの件で関わっている事を知ってもらう。僅かな可能性として、これで向こうが諦めてくれれば吉だね。もし攻めて来たとしても、特殊な病室だから入室は困難だろう。人も多いし目立つ行動はできない筈だ」


大体の天野の考えは理解できた。けども実現可能かどうかはわからない。俺は質問する。


「でも佐奈田さんを小鳥遊の妹と同じ病室に入れるのは、流石に難しいと思いますよ。小鳥遊に黙ってやる訳にはいかないですし、どうやって説得するつもりですか?」


「その点については僕に任せて欲しい。そして説得に成功したら佐奈田さんにも連絡します。病室に行く段取りをしなきゃいけないからね」


『わかりました。では連絡を待っています』


「朝からすいませんでした、それではまた」


『はい、失礼します』


電話は切れた。プープーと電子音が鳴っている携帯を取ってポケットにしまう。


「さてと会長、俺は何から聞けばいいですかね…?」


「ん?何のことだい?」


「とぼけないで下さいよ、何で佐奈田が会長のこと知ってるんですか?どうやって小鳥遊を説得するんですか?」


「…」


天野は黙り込み、扇子を取り出して優雅に顔を仰いでいる。その姿を見て俺は溜息を吐いた。また話してくれないのかと失望していると、天野は独り言を呟くように言った。


「そうだよね、君に秘密にしているのは確かに良くない…。いいかい、この事は穂花ちゃんと片野先生と校長先生しか知らない。そして小鳥遊くんにも説得する時に言うつもりだった」


珍しく真面目に話す天野。俺はつばを飲み込み彼の話に集中する。



「実は、僕は既に魔法免許を取得しているんだ」


「本当…ですか?」


天野の様子から見て、冗談を言っているようには見えない。


「あぁそうさ、僕はこの学園に入る前から免許を持っている。僕は混合魔法を研究する為に、1人で魔法館を使用したいが為にこの学園に入学した。学園内での僕は成績は平凡で目立たないように日頃から魔力も抑えているから、もちろんその事がバレる事はなかったけどね」


「そんな…。っていう事は、実質的に会長は魔公学園内での魔法の腕は1番という事ですか?それとも生徒会長も魔法免許を持っているんですか?」


確か、前に同じ同好会会員の植田が言っていた。天野は学園内で生徒会長に次いで2位の魔法の実力だと。


「あぁ〜もしかして植田さんから何か聞いてた?確かに彼女には、穂花ちゃんも生徒会長としての立場もあるから、そういう風に言ってたっけな…。自分からは言いにくいけど、僕が学園内でトップの魔法の使い手だよ。昔は穂花ちゃんと一緒に魔法館で魔法の特訓をしたもんさ。未だに彼女は魔力を抑えきれてないけど、僕が魔法をよく教えていた」


「なるほど、そういう事だったんですね」


天野の実力が本当に理解できた気がする。こんなにも凄い魔法の実力ならば、情報屋や佐奈田が知っていたり、天野に対して安心するっていうのも納得できる。



「それに、これは君にしか教えないけど、いいものを見せてあげよう」


天野は両手を広げて、魔力を集める。そして魔法を発動させ、右手から霧を生成する。それとは別に左手に風の魔力を集めた。


霧の中に天野は左手を入れる。すると中から青白い光がバチバチと音を立てて発生した。


「これは、電気ですか…?」


「そう。水と風を合わせて霧を作り出し、それに風を合わせると電気ができる。僕が今まで魔法館で研究し成功した新たな魔法だ。僕は上位魔法と呼んでいる」


天野は左手を霧の中から取り出し、霧魔法も解除した。霧は煙草の煙のように消え去った。


俺は天野の凄さを再認識した。そしてやっと分かった気がした。魔法研究同好会も部活に拘らない事や、生徒会長に対する態度も日頃の行いも。彼にとって魔法研究部は、もはやお遊びにしか見えないだろう。この学園のトップの生徒会長は、魔法を教えてる弟子のような認識だろう。学校での評価はむしろどうでもいい。魔法免許も取得しているのだから、目立たないよう平凡である事の方が重要だ。



「さて、僕の魔法を見たからにはお願いを聞いてもらうよ」


「えっ⁉︎」


「さっき佐奈田さん達と話した話だけど、ちゃんと瀬川さんにも話しといてね。そしてこれから話すのは本当の作戦だ。よく聞いてね」


「本当の作戦…って事は、さっき話してたのは嘘なんですか⁉︎」


「嘘ではないけど、まぁ聞いて欲しい」



そう言うと、天野は再び長々と作戦の内容を話し出した。

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