表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/49

新たな約束

佐奈田はひと通り話し合えると、テーブルに置いてあった水が入ったコップを手に取り、それを飲み干した。


柊はようやく体調が良くなってようだ。顔を上げてこちらの様子を伺っている。


彼らからしたら俺の事や力…魔法はわからないことだらけだろう。興味を持つのはわかるが、流石にやり過ぎではないだろうか?


その気持ちを代弁したかのように瀬川が柊達に強く言った。


「なるほど…話はわかりました。では帰りましょう早乙女くん」


俺の手をぐいっと引っ張って立ち上がり、部屋から出ようとする彼女。



「ちょ!ちょっと待って下さい!」


佐奈田が瀬川を引き止めた。



「私達の話をもう少し聞いてくれませんか⁉︎もしかしたら君達にも何か良い事が…」


必死の佐奈田に瀬川は冷たく言い放った。


「申し訳ないですけど、あなたが清水様とやらに捕まろうが、売られようが、のたれ死のうが私達には関係ありません。テスト前で忙しいのです」


「そんな…」


瀬川がドアノブへ手を掛けた時、今度は俺が瀬川を止めた。



「瀬川さん、ちょっと待って!もう少し話を聞いてみようじゃないか。状況によっては俺も自分の事を教えてやってもいいと思っている」


実は瀬川も俺の魔法を消せる力は知ってるが、その正体までは知らない。


瀬川は俺の言葉に大人しく従い、席に戻る。彼女も俺の力を知りたいのはわかっていたから、当然の行動だ。



「まず俺の事を教える条件として、柊の異常な魔力量と先程の異様な様子…なんか『黙れ』だとか言ってたよな?それを説明して欲しい。それと俺の事を教えるのは今月が無事終了し、来月になってからだ」


「何ですって⁉︎」


佐奈田が驚き立ち上がった。


「佐奈田さん、何か問題があるんですか?」


「え⁉︎…い、いえ、何も問題は無いです…」



どうせ、俺の情報が手に入ったら組織のボスの清水とやらに情報をリークして、それで助けてもらおうと思っていたのだろう。お前の考えてる事など丸わかりだ!


さて問題なのは柊と瀬川だ。柊は自身のことを教えてくれるのかどうか…。瀬川も俺の事を知りたくて留まってくれた。来月まで待ってくれると言うのだろうか…。



柊は俯き気味で、喋り始めた。


「…早乙女くん、わかったよ。僕の魔力や、さっきの出来事を説明しよう。けどもこれも来月になってからだ。今は無事に佐奈田さんを組織から守る方法を考えよう。どうやら僕だけでは力不足みたいだ…」


「俺たちも協力しろって事か…その前に俺は佐奈田さんがちゃんと協力関係にあるのか再度確認したい」


「何だって?彼女はとても協力的じゃないか?」


「何言ってんだ柊⁉︎こいつは誘拐犯で犯罪グループの一員なんだぞ!お前だって佐奈田を助けた後に、未遂とはいえ奴の魔法の水を飲ませられたみたいじゃないか。それに彼女はさっきまでギリギリまで俺達に協力し、そして組織に俺の情報を売り裏切るつもりだった。流石に俺の前で魔法は使わせない。が、何をするかわからない奴なんだ」



場が静まりかえる。柊も佐奈田も何も言えずにいた。


実際のところ俺の言ってる事は合ってるだろう。いつ裏切るかわからない女の護衛など誰がするだろうか。


何も答えが出ずに、続く沈黙を破ったのは瀬川だった。



「あまり深く考えなくていいんじゃない?来月またここに集まれたメンバーは情報交換するってことで。佐奈田さんも元犯罪グループの一員なら自分の身は自分で守るか、私達に守らせる価値を感じさせるかしたらいいんじゃないですか」


「そんなの…できたらやってます!清水様から身を守るなんてできるはずない…近くで見てた私だからわかる…彼は私や君達とも比べ物にならない程強いんです。早乙女さんの魔法を消せる力があったとしても無駄でしょう」


佐奈田の訴えに瀬川はいまいち納得してない様子だった。清水が強敵なのはわかったが、具体的にどういう事をするのかわからないと理解するのは難しいだろう。


「佐奈田さん、組織のボスの清水さんはどんな戦い方をするんですか?」



「清水様は、風魔法を使います。武器は何でも使います。銃やナイフ、刀などですね。それに何処に隠れても必ず見つけ出します。逃げ切れた人は今までいません。それに目的の為なら何事も躊躇しません。それが彼の恐い所です」



佐奈田の事を助ける気がないのかどうかわからないが、瀬川の様子は変わらなかった。


すると佐奈田は立ち上がり、瀬川のもとへ行き耳打ちした。すると瀬川は顔を真っ赤にして叫んだ。



「…はぁ⁉︎な、なんでそうなるのよ!」


そして佐奈田はそのまま俺にも近づき耳打ちした。



「…私を守りきる事が出来れば、魔法制御不能症の治し方を教えます」


佐奈田はそう言って俺から立ち去り、自分の席へ戻った。心なしか彼女は薄ら笑みを浮かべている様に見える。なるほど…彼女なりに俺達に自分を守らせるよう価値を付けたつもりなのだろう。


それよりも気になるのは瀬川だ。チラチラとこちらの様子を伺っている。佐奈田から何を言われたのか、彼女も気になっているのだろうか…。


「わかった、佐奈田さんを組織から守ることに協力しよう。約束は守って貰おう」


「私も…佐奈田さんを守ることに協力します…」


瀬川はボソボソと小さい声で言った。柊は、よし、決まりだなっと言って、さらに口調を変えて続ける。



「では犯罪グループの清水相手に、僕達3人で勝算はあるだろうか?」


「俺もそれは思った。警察官の息子なら、警察に動いてもらえないのか?」


「証拠不十分で捕まえられない佐奈田さんのことを良く思ってない警察に、そんなことは頼みにくいな。それに脅迫状の様な物が送られたわけでもないし、実際に清水が来るかどうかもわからない。そんな状況では警察は動いてくれないな」


「そうか…」


数秒考え込む、そして瀬川が発言した。


「清水が来たとして、私達の魔法を使う事が許されれば勝算はあるんじゃない?少なくとも私には勝算は見えてくる」


「…なるほどな、襲ってくる成人男性に魔法を使っても、免許が無くても護身目的だとしてお咎め無しになる可能性はあるな」



「あまい…あなた達はあますぎます!」



1つの勝算が見えた時点で、佐奈田が言った。だが、その言葉に瀬川は言い返した。



「忘れてるみたいだから教えてあげます。私達は魔法の名門校、魔公学園の生徒です。魔法が使える環境下であれば、相手が多少武器を所持してようが問題無く戦えます」


「そう…そこまで言うのなら、もう何も言いません。怪我などしない様に…無事終われるようにお願いします…」


佐奈田は、これ以上発言はしなかった。着々と3人で話を進めて行き、結果は次のようになった。



・佐奈田は来月まで柊宅で待機、保護される

・早乙女、瀬川、柊は普段通りに生活を送る。月末日は終日柊宅で佐奈田の護衛に付く。

・こちらからの清水に対する詮索はしない。清水の情報は佐奈田から聞くことにする。



最後の1つは、こちらからの詮索で足がついて、こちらの事がバレないようにする為だ。そしてもう1つ。清水が柊宅に潜入した場合は、柊と瀬川が佐奈田の護衛に付き、俺は後方で援護することになった。


魔法が使える環境下であれば、俺は1番戦力外だろうからな…当然の結果である。


ある程度話もまとまり、昼食も片付いた所で、そろそろ帰ろうと思った。


瀬川も同じく思ったようで、柊と佐奈田に挨拶し、一緒に部屋を後にした。


長く迷路の様に続く廊下を見て、とりあえずため息を吐いた。



「瀬川さん、そういえば気になってたんだけど、佐奈田さんに何て言われたの?」


「は、はぁ〜?そんなの今は関係無いのでは⁉︎⁉︎それよりも、この迷路の様な廊下をどうやって帰るつもりだったの?まさか道筋を全て覚えているとか?」


「まさか…そんなに頭は良くないさ…。けども、瀬川さんの考えそうな事くらいは思いつくかな。ちゃんと道標を残しているのは流石だよ」


迷路のような廊下に、点々として残されている魔力。これは瀬川の物だ。彼女はここまで来る途中で、廊下に魔力を残してきた。まるで森で道に迷わないように木の実を落としながら歩くように。この魔力を辿っていけば、やがて玄関に辿り着く。



「でも俺がいなかったらどうするつもりだったんだ?瀬川さんでも、この微力な魔力を感じるのは難しいんじゃないかな?」


「なっ!それじゃあ私がバカみたいじゃない、そこまで私の魔力感覚は鈍くないわ!」



瀬川は先陣を切って長い廊下を歩いて行った。俺もその後を付いて行く。



さて、今回はどうしたものか…。



とりあえず最悪の事も考え、保険を掛けるとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ