それぞれの問題解決(3)
わけがわからない。何故彼女が柊の家にいる⁉︎彼女と柊が通じていたのか?
「ちょっと早乙女くん⁉︎大丈夫?」
いつの間にか瀬川が俺の元へ駆け寄っていた。体を揺らされてようやく気付く。
「…あぁ、大丈夫だ…」
「まぁ話は後だ、料理が冷めないうちに早いとこ頂くとしよう」
佐奈田が料理を運び始める。運び終えると佐奈田自身も席に座って料理を食べ始めた。使用人といえども服装はメイド服ではなくタキシードで、正直とても似合ってる。
目の前の料理を食べれるほど俺の精神状況は安定してなかった。
「先に説明してくれよ柊…」
「話は後だと言ったはずだけど…」
「人が人だからな。ただの使用人の紹介ならいいかもしれないが、彼女は違うだろ…」
「まぁそうか、なら先に話をするとしようか」
柊は食事の手を止め、手元のナプキンで口元を拭いた。
「僕の父親は警察官の刑事で、たまに僕も捜査を手伝ったりすることがあるんだけどね。父は、とある犯罪組織グループを追っていた。その組織は臓器売買や麻薬の密輸など行っていてね。最近になってやっと足が掴めたんだ。ちょうどゴールデンウィークに入る前かな?僕がクラスのみんなに忠告した事があったよね?」
あれはそういうことだったのか…。とても印象に残ってる出来事だったから俺は覚えている。
「でも、それと佐奈田さんに何か関係あるの?」
事情がわからない瀬川は柊に質問するが、それについては佐奈田が答えた。
「それは柊さんが足が掴めたと言っているのは、私の事だったからです」
「…えっ⁉︎」
「彼女の言う通りだ。僕…いや、僕の父は佐奈田に目を付け、犯行について調べていた。だが決定的な証拠が無く逮捕までには至らなかった。そんなある日、彼女の魔力が港町の繁華街で観測された。その量は推定で混合型キメラの2倍だ。だが、この魔力を観測したのは、現場から大分離れた魔力探知機だった。近くの魔力探知機には彼女の魔力を観測した記録は無く、現場にも大量の魔法が使用されたにも関わらず、魔力は一切残ってなかった。これはどういうことだと思う?早乙女くん」
俺に柊はニヤニヤとした表情で問いかけてきた。おそらく彼は気付いている…というか、佐奈田から俺の事を聞いているんだろう。だが万が一聞いてないかもしれない。とりあえずここはとぼけたフリでやり過ごすことにした。
「そんなこと聞かれても俺にはわからないな」
「…なるほど、そうか。では実験してみよう」
そう柊が言い放った瞬間、彼から魔力が溢れるように出てきた。
止めどなく出てくる魔力に、瀬川も佐奈田も驚きを隠せない様子だった。
そのまま魔力を放出しながら柊は続ける。
「知ってるかい?早乙女くん、人は己の魔力量よりも多い魔力を目の前にすると恐怖を感じたりするが、度が過ぎると失神したり、あるいはショックで魔法が使えなくなるような心の病気になったりする。大体自分の魔力量の2〜3倍で恐怖感、5倍で失神、7倍で心の病にかかると言われている」
「何が言いたいんだ?…まさか君がそんなに魔力量を持っているとでも言うのか?キメラでもないくせに…」
キメラという言葉を口にすると、柊はクックックッと笑い出した。それでもまだ彼から魔力が溢れ続ける。
「キメラか…まさかあの生徒会長の事かな?あんなのと僕を一緒にしないで欲しいな」
柊から魔力がさらに溢れ出した。まるで部屋の中に水が溜まっていくかのように、俺達3人を囲っていく。
瀬川は恐怖で、体を震わせていた。彼女の手から俺の体へ震えが伝わってくる。佐奈田も同様に目を見開いて、両腕で頭を抱えながら恐怖感に耐えていた。
「柊!今すぐ魔力を抑えるんだ!でないと2人ともこのまま…」
「フフフ…この魔力を前にしても恐怖するどころか他人の心配とはね…。もしこのままだったら、何かな?そんなに2人が心配なら、自分でどうにかしたらいいんじゃないかな?」
おそらく柊は俺の事を知っているんだろう。俺が魔法を消すのを見てみたいんだ。けれども簡単に俺の力を見えるわけにはいかない。
「さぁそろそろ常人の3倍の魔力量だ」
瀬川と佐奈田の様子は、先程よりも震えが長 激しくなっていた。それに加え額からも冷や汗を流し始めている。
そんな2人と困っている様子の俺を見てニヤつく柊。それでも魔力が溢れ出す勢いは止まらない。
「これでようやく常人の4倍ってところだね。そろそろ2人とも限界かな?」
この魔力量までくると流石に危険だ。彼女達2人の様子は一変した。佐奈田は体を丸めて、頭を抱え込み震えている。瀬川は俺の横で震えているが、彼女はもはや俺を認知していない。ただただ魔力に恐怖するだけの2人。俺が声をかけたり、体を揺さぶっても反応しないだろう。
ここまでくると、俺も自分の力がとか言ってられない。もう柊の魔力を消すしかない。
「さぁ、いよいよ常人の5倍の魔力量だ…」
俺が覚悟を決め、魔力を集めて柊の魔力を消そうとした瞬間、異変が起きた。
「…ぐっ、うぁぁぁ!黙れ黙れ黙れ!」
柊が突然叫び出した。それに伴い彼の魔力もスーッと消えていった。
頭を抱えて苦しみながら悶える柊とは逆に、瀬川は体の震えが治まってきた。魔力が段々と弱まってきて、体が思うよう動けるようになると、彼女はすぐさま立ち上がり、柊の元へと駆け寄った。
いまだに悶絶している柊の首元に彼女が向けたのは、昼食で用意されたナイフ。テーブルから取り彼に向けるまでの一連の動作は、まるで忍者の様な素早さで見事なものだった。
「大人しくして、そして落ち着いて全部説明しなさい。でないと…」
瀬川のナイフを持つ手に力が入る。刃先が柊の首に当たり、数ミリ食い込んだ瞬間に佐奈田は叫んだ。
「やめて下さい!わかりました、話しますから、どうかやめて下さい…」
瀬川は佐奈田の方に目を向けた。そしてナイフをしまい、ゆっくりと柊から離れた。
柊はまだ頭を抱えながら、俯いている。どうやら落ち着いて話せる様子ではないようだ。
「…では、柊さんはこんな様子ですし、私が全て話しましょう。どうして私が柊さんといるのか、そして何故こうなったのかも全て」
佐奈田はこれまでの経緯について語り出した。




