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それぞれの問題解決(2)

「ようこそ、いらっしゃい」


お邪魔しまーすと言って家の中へ入る俺達3人。お出迎えしてくれたのは柊本人だ。


「うわー!柊くんの家って凄いんだね!」


まるで漫画に出てくるような豪邸に住んでいる柊。俺達も最初は驚いたが、まだ本田ははしゃいでいる。部屋を暗くして1日中パソコンしてるニートが似合う格好をしている柊が、なんでこんなにも立派な家に住んでいるのだろうか…。それに魔法も優秀だし、世の中は理不尽である。



「そんなことないよ…勉強部屋はこっちだよ」


柊に案内されるまま長い廊下を歩く。おそらく1人で帰ろうとしたら迷いそうだ。


付いていく事数分、ようやく勉強部屋に着いた。中の様子は勉強部屋というより会議室に近い。


コの字に並んだ机に、正面にはホワイトボート。20人くらいが座れそうな広い空間に俺達4人だけというのは、どうも落ち着かない。


「柊、ちょっと広すぎないか?」


「…狭いよりはいいと思ったんだけど…。仕方ない、僕の部屋に行こうか」


再び俺達は柊に着いて行き廊下を歩く。


「ここだよ」


歩くこと数分、案内された柊の部屋は、至って普通だった。家具はベッドにテレビに柊自身の机。部屋の中央には4人で勉強するのには丁度良いテーブルが置いてある。


「うわーここが柊くんの部屋か〜!」


家に入った時と同じようなリアクションを取る本田。そんな彼女は置いといて、俺と瀬川は中央のテーブルに座り、勉強道具を取り出す。



「それじゃさっそく始めようか」


「そうだね、じゃあまず今回のテスト範囲の確認からやろう…」



勉強が始まってからというものの、時間の流れがとても早く感じた。実際柊の勉強の教え方は上手く、俺と瀬川は集中して勉強に取り組むことができた。


本田は逆にあまり集中できなかったようだが、最初ははしゃいでいたものの、途中からはちゃんと勉強をしていた。



気が付けば時計の針は正午を指していた。もう昼か、と呟くと本田が血相を変えて突然立ち上がった。


「ヤバっ!私昼から別の用事あるんだった!みんなごめん、私帰るねー!」


急いで部屋から飛び出す本田。そして数秒後、再び戻って涙目で助けを求めてきた。


「柊くんごめん、玄関の場所がわからないよ〜」


「フフッ、そうだよね、案内してあげよう。早乙女くん瀬川さん、申し訳ないけど待っていて…」


パタンと音を立てて閉まる扉。柊の部屋で瀬川と2人きりになってしまった。


朝から約3時間連続で勉強すると、流石に身体中あちこち痛い。少し体勢を崩して楽にした。


「ふ〜っ、疲れたなぁ」


溜息を吐いて独り言を呟いていると、何故か瀬川から横目で睨まれる。そして今度は俺の様子を見た瀬川が溜息を吐いた。


「全くお気楽ね。気付いてないのか、気付いた上での余裕なのかわからないけど…」


「なっ⁉︎なんだって?」


「…その様子だと気付いてないようね」


俺が柊の家に入り、今までに気付いた事と言えば、柊の勉強の教え方が上手いくらいだ。それに彼女は最初から柊の家に来るのは警戒していた。彼女の様子からしても、俺もちょっと警戒した方がいいかもしれない。



「仕方ないわね、教えてあげる。この屋敷の広さからして、柊くんただ1人しかいないのは不思議と思わない?」


「…確かにそうだな。けど単純に俺達が会ってないだけじゃないのか?…いや…違う。…そういうことか…」


「本当、警戒してないってのは恐ろしいわね」


瀬川の言う通りだ。俺はまんまと柊の思惑にハマっていたのかもしれない。警戒していれば気付けていただろう。こんな事に気が付かないなんて…



この屋敷内に俺、瀬川、本田の3人と柊以外の魔力を感じない。



「この感じは…柊の魔力が俺達を囲ってるって言う方が正しいかもな」


「そうね、恐らく私達に気付かれたくない事があるはず。この屋敷の広さからして柊くん1人しかいないのは不自然。必ず使用人や他の人がいるはず…」


柊がいない今も俺の周り360度から彼の魔力を感じる。こうして魔力で囲まれると、俺の魔力感知力でもどうする事も出来ない。


「いっそ柊のこの魔力を消せばわかるんだけどな」


「けど、そんなことしたら確実に彼にバレるわね」


俺の魔法の事は極力周りに知られるのは避けたい。結局はどうする事も出来なかった。


そうこうしてる内に、部屋の扉の奥から柊の魔力が濃くなって来る。彼が戻って来た。



「お待たせ。実はこの後食事にしようかと思っているんだけど、2人も一緒にどうかな?」


「………」


明らかに警戒し過ぎたか、俺達の様子を見て柊は気付いたようだった。


「なるほど、そうかそうか、まぁ君達はもう迷路のようなこの家からは出ることは出来ないし、強制的にも昼を共に取る事としよう。付いて来て」



柊はそのまま部屋を出て、長い廊下を歩き始めた。俺達もその後を追っていく。


歩いても歩いても、感じる魔力は柊の魔力のみ。どれだけ感覚を研ぎ澄ませても、他の人の魔力を感じることはなかった。



「着いたよ、ここだ」


言われた部屋に入る。中は、これまた漫画で見るような金持ちの家族がディナーを食べてるようなテーブルと中央に花瓶と色とりどりの花が生けられている。窓からは明るい日の光がレースのカーテン越しに丁度良い光量で入ってくるが、俺達の不信感が晴れる事はない。


「さぁ席に座って」


柊の言われた通りに席に着く。部屋の奥に柊、隣に俺と向かい合うように瀬川が座る。そしてもう1つ、部屋の入り口の方に席が1つ用意されていた。


「君はここに座ってていいのかい?」


「ん?どういうことだ?」


「君がここにいたら、誰が俺達の昼飯を作ってくれるんだ?」


「この家には専属のコックがいてね、朝昼晩と3食バランスの良い料理を作ってくれるのさ。それが何か?」


「ではそのコックさんの魔力が感じないのは何故だろうか?」


俺のこの問いかけに柊は黙る。瀬川も俺に続いた。


「この屋敷の中を掃除、洗濯、あらゆる家事をこなしているのは誰?あなた以外にも人はいるはず…なのに柊くんの魔力しか感じないのは何故?」


柊の様子は変わらない。長い髪で隠れてるせいか表示はよくわからないが、口元は少し笑っている様に見えた。



「俺に興味があると言っていたな…それはどういうことだ?」


柊がピクッと動き反応を示した。そして閉ざしていた口を開いた。


「君達はせっかちだねぇ、料理が来るまで待てないかなぁ。実はこの開いてる席は本田さんの席ではなく、この家の使用人の席だ。是非とも一緒に食事をしようと思ってね。君達に悟られない様にわざと周りに僕の魔力を纏わせている」


「何故こんなやり方をするんだ?別に俺達が気付いても問題ないんじゃないか?こうして実際に会うまでこんな事しなくても…」


「まぁそれは会わなきゃわからないだろう」



部屋の扉からコンコンとノックをする音が聞こえる。失礼しますと言って使用人が扉を開けて入ってくる。


「やっと来たよ、君達お待ちかねの彼女が今昼を共にしようとしている使用人だ」



扉の影から姿を現した女性。俺は彼女を知っている…というよりも何故彼女がここにいるんだ⁉︎


「…早乙女くん、どうかしたの?」


瀬川が俺が驚き様子が変なのを心配して声をかけてくる。そして俺が驚いていることに柊は満足の様だった。さっきよりも口元が曲がっている。




「フフフッ、さぁ彼らに自己紹介したまえ」




「はい、柊家使用人をやらせて貰っています。佐奈田千亜紀です。あの時以来ですね、早乙女さん」


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