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2度目の脅迫

「はぁ、はぁ、はぁ…」


時は少し遡る。小鳥遊は父親から佐奈田から要求された現金2000万円を借りて、渡された地図のビルの前に着いた。


額が額なだけに、説得するのに時間がかかった。こんなに息が切れるほど走ったにも関わらず、日は沈み、代わりにネオン街の灯りが辺りを照らしていた。


さっそくビルの中に入る。中は店の看板や案内なども特に無く、ただただ階段が続いており、不気味な雰囲気を感じた。


3階まで登ると、ある店が出てくる。看板が剥がれ落ちて名前は分からない。目の前の木製のドアもボロボロ。所々テープで補強しているが、いつ崩れ壊れてもおかしくはない状態で、誰が見ても営業してないのは明白だ。


壊れないように、慎重にドアノブを回して中へ入る。最初に目に入ったのは、外装からは想像出来ない内装だった。映画やドラマでしか見た事のない黒塗りのカウンターが奥まで続き、反対側には4名程が座れるテーブル席が4つ。ここは大人が来る場所。驚いていると、カウンターの1番奥に座っている佐奈田から笑い声が聞こえてきた。


「ふふふっ…やっと来たようですね〜」


店内を見る限り、客や店員はいない。どうやら俺と奏と佐奈田しか店内にはいないようだ。奏は佐奈田の隣のカウンターに座っていた。


「さぁ2000万持って来た、奏を解放しろ!」


現金が入ったバックを見せ付けた途端、奏が突如胸に手を当て苦しみだす。


「ぐ、ううっ…」


「奏⁉︎大丈夫か!」


奏に近づこうと走り出したが、間に佐奈田が立ち塞がる。


「おっとぉ、2000万を渡す方が先です。でないと彼女は苦しみ続けますよ?」


「どけ!奏の解放が先だ!早くしろ!」


金を渡したからといって、佐奈田が魔法を必ずしも解除してくれるとは限らない。身の安全が先だ。


「賢…くん…ゲホッゲホッ!早く…」


奥では奏が咳込み苦しんでいる。そして横から笑みを浮かべた佐奈田が顔を出してくる。


「いいんですかねぇ?こうしている間も彼女は苦しみ続け、懲りたあなたがお金を渡してくれた時にはもう死んでいたりして…」


「…くそっ!」


佐奈田に金の入ったバックを差し出した。佐奈田は嬉しそうにヒョイっと受け取り、中身を確認する。だが奏の様子は変わらない。


「なっ⁉︎金は渡しただろ!奏を早く解放しろ!」


「そう言われましても、お金が偽札だって可能性もありますし、念の為確認させてもらいます」


バックの中からドサっと音を立てて落ちる札束。それらを凝視する佐奈田。もちろんこれらは全て本物だ。


「ふむ、いいでしょう。彼女を解放しましょう」


佐奈田も納得したようだ。これで奏が助かると思うと、少しだけ安心した。



「ん…んぐっ!ゲホッゲホッゲホッ…っはぁはぁ…」


奏が水を吐き出した。その水は地上ではあり得ないような動きをした後、姿を消した。奏も安心し、落ち着いて深呼吸している。


「これで彼女の中には私の魔法の水は無くなりました。安心して下さい」


佐奈田の話を聞く間も無く奏に近寄る。


「大丈夫か⁉︎奏!」


「賢くん、私は大丈夫だよ」


俺と奏は抱きしめ合い、互いの無事に安心していた。佐奈田はそんな俺らを見て、その場から立ち去ろうとした。




佐奈田が背後を見せたその一瞬。俺は見逃さなかった。




「きゃぁっ!」



佐奈田に突然の強い衝撃が襲いかかった。体は出入口まで吹っ飛び、持っていた現金も辺りに散らばった。



「まさかよーこんな事は考えてなかったのか?魔法を解いて解放された後に俺らから襲われるって事をよ」


俺は佐奈田が背後を見せた瞬間に、彼女にタックルを食らわせていた。魔法が解除された今、奏を心配する必要もない。



「奏!絶対に周りの水や飲み物を飲むんじゃないぞ!」


「うん!わかってる!」


吹っ飛ばされた佐奈田はピクリとも動かない。まさかとは思うが、死んではいないよな…。少し心配にはなるが、相手は俺達を脅迫した奴だ。同情することはない。


佐奈田の様子を確認しながら、辺りに散らばった金を拾い集める。だが、こんなにも順調に作戦が上手くいくとは思わなかった。


数分後、ようやく全ての金を拾い集め終えた。佐奈田の様子は変わらない。



「よし、終わったな…」


やる事も終えて、これから帰らなきゃいけない。だがその為には出入口まで吹っ飛ばされた佐奈田の横を通らなきゃいけない。何か嫌な予感がする。佐奈田を見て不安になる俺に、奏は声をかけてくれた。



「賢くん大丈夫!さっきも言ってたけど、水や飲み物に気をつければ佐奈田の魔法はなんてことない」


「そうだな!よし、一気に駆け抜けるぞ!」



現金2000万円を持ち、佐奈田の横を通り抜けることにした。店内は広く助走を付けるのには充分だった。


走り出し始めて、緊張が走る。これが罠だったらどうしよう?ビルの下で仲間が待ち伏せしてたら?もし彼女が死んでたら?いや、今は奏を安全な場所へ連れてく事が最優先だ。緊張感を押し退けて走るも、俺は見てしまった…。


佐奈田は声を殺して、腹だけを動かして笑っていた彼女の姿を。



一瞬で罠だと気付いた。そしてその場に立ちすくむ。奏が俺の様子に驚いて、え?何⁉︎と言うが、俺には聞こえてなかった。



佐奈田は突如立ち上がり、声を上げて高笑いした。




「あーっはっはっは!最高!最高ですよあなた達!ぜーったいに逃しはしませんからね!今夜はこの店で…お姉さんと…いい事いっぱいしましょ!」


頬を赤らめて、体をくねらせて話す佐奈田。これは関わったらいけないと俺の本能が告げている。


「賢くん!奴はまだ立ち上がっただけ!逃げるなら今のうちだよ!」


「お…おう!すまん!」



奏の声で再び走り出した。だが出入口に差し掛かったところで、俺と奏の体の四肢が佐奈田の水魔法によって捕まった。そのままズルズルと床に擦られながら佐奈田の前まで戻された。


両手両足、佐奈田の水魔法により固定され自由を失った。そして持っていた2000万が佐奈田から抜き取られた。


「ふふふっ!水魔法解除した後に襲われるか考えたかですって?考える訳ないじゃーんそんな愚かな事!それに水や飲み物に気をつければ大丈夫なんて…舐められたものですね〜。それに別に飲ませなくてもいいんです、こういう風に…」


佐奈田の腕に水が集まる。そしてその水が俺の顔に近付き、頭全体を覆った。


「⁉︎」


「賢くん⁉︎」


「っ!ぷっはははは!そうです!こうして頭を覆えば嫌でも口や鼻から水が入るでしょう?別に飲ませなくってもいいんです。まぁ死ぬまで息止めるのなら話は別ですがね。死ぬのはつまらないですから、耳の中とか肛門からでも水は入れれますから好きな方で楽しんであげますよ!耳は多分痛いでしょうね〜。肛門からなら腸内を綺麗にした後、それを口から吐き出させましょう。苦しそうですね〜あぁ、想像しただけでもう!」


息が限界だ!思わず口が開いてしまった。その一瞬、水が凄い勢いで口から喉奥へ流れていった。



「お!入りましたね!ではでは始めましょう!」



その後はまさしく地獄だった。胃の中には常に何か生き物がいる様な感覚。鼻の中に水が入り込み痛みが走る。呼吸が自由にできず咳込み、次第に喉の痛みが出てきた。


朝になると、俺は放心状態になっていた。体の周りには、ヨダレなのか鼻水なのか、又は佐奈田の水魔法なのかわからない液体の水溜りの状態だった。


横には俺を見守ってくれた奏がいた。俺と同じく体の自由はないが、俺程にはやられてはいない。一晩中佐奈田から水魔法で責められ、目が腫れ気味だった。



「さて、そろそろ雛形さんにも仕事してもらいますかね」


「な…何をする気だ?」


「小鳥遊さんの家に行ってもらって身代金…んーと5000万くらいいけそうですかね?」


「な⁉︎なんだと!」


「元々はあなたが悪いんです。あの時大人しく私を帰して置けば良かったのに…。まぁ私としては結果オーライですが」


「奏、ちょっと…」


俺が声をかけると、奏はできる限り身を寄せた。


「多分、学校は休みだろうが、今日も魔法研究部はやってるはずだ。もし心配だったら長谷部に相談しろ」


「わかったよ」



佐奈田が手に水を集めて近づいてくる。


「何話してるかわからないですが、もちろん警察や強力な魔法使いを呼んだ時点で、小鳥遊さんを殺しますので、気をつけて下さいね。それと…」


「⁉︎んぐっ!っ!」


佐奈田は奏の頭を水で覆った。俺と同じように体内に水を入れるつもりだ。


「一応保険です。何かあった時に彼女も殺せる様にね」



奏が水を飲み込むのを確認すると、佐奈田は奏の四肢を掴んでいた水魔法を解除した。



「ゲホッ、ゲホッ!はぁはぁ…賢くん、行ってくるね」


「あぁ、頼む」


ヨロヨロと危なっかしい足付きで店から出て行った。



…。




睡魔と不安と精神的な疲れで朦朧としながら、なんとか学校に着いた。いくら学校が休みでも魔法研究部の活動があるはずなのに、学校は静かだ。


校門で待つ事数分後、現れたのは意外な人物だった。



「早乙女くん⁉︎」


「雛形…さん?」


何故彼が?とにかく今日は長谷部が来るかどうか知りたい。彼に近づいて聞いてみた。


「…今日は、魔法研究部の人達は…」


「あぁ、今日は魔法研究部は休みだよ。代わりに今日は魔法研究同好会が魔法館を使う予定なんだ」



頼りにしていた人が来ない⁉︎やはり私1人で何とかしなきゃいけないの?賢くんの家に行って正直に話す?そして警察沙汰になったら賢くんが危ないし…。でももしかしたら彼なら…!


「早乙女くん、お願い…賢くんを助けて!」

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