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都合の良い奴

時は少し遡り、4月最後の今日。早乙女大知は相変わらず学校内では蔑まされた目で見られていた。それでも中には彼を認めてくれた人もいる。


ちょうど昼休み。彼はその認めてくれた人達、言わば友達と共に食堂で昼食を取っていた。


「そういえばさ、魔法研究同好会はどうなったの?」


彼女、本田真奈美は昼食を食べながら俺に聞いてきた。


「そうだな、こいつの言う通り俺も気になってたんだよ、教えてくれ」


本田と同意見で便乗して聞いてくる彼、長谷部誠も最初は俺に突っかかっていたが今は友達として仲良くやっている。


「と言うか、その前に何故私があなた達と一緒に昼食を取らないといけないのか教えて欲しいのだけれど?」


冷たい態度で接する彼女は俺の隣の席の瀬川早苗。気付けばこのグループの中の入っていた。彼女はこう言っているが、いつものことなので、俺達3人は特に気にせず話を進める。



「今はまだ魔法が使える見込みは無いけど、とりあえずしばらくは魔法研究同好会に居ようと思ってる。天野会長はみんなが知るようにお気楽能天気で毎日遊んでばっかだけど、俺は魔法使えないし、急いでどうにかしなくてもゆっくりでいいかな〜なんて…」


もちろん俺や天野会長がキメラで、毎週日曜日に俺の魔法の特訓をしているのは、この友達グループであっても秘密である。まぁ瀬川には俺が魔法を消す何かがあるという事はバレているが、口封じはしてあるし、問題ないだろう。


「ふ〜ん、まぁ早乙女くんがいいなら良いのだけれど、前まで結構心配してたからさ。とりあえずは現状維持ってことで解決かな」


「本田さん、心配かけてごめん。俺も言えばよかったね。まさか俺のことそんなに考えていたとは知らなくて…」


一瞬気まずい空気が流れる。しまった!と思った時には既に遅かった。隣では長谷部がニヤニヤしていて、本田は少し頰を赤くしている。長谷部が口を開いて喋るのを遮るように本田は話し始めた。


「そ、そうだよ!『友達』が困っていたら気にするのは当たり前だよ!ハハハやだなぁ早乙女くんは、早く言ってくれればいいのに!」


本田に再び俺はごめんと謝った。とにかく話題を変えてこの場の空気を変えたい。


「そうだ!長谷部、魔法研究部の人はどうなんだ?」


「お!よくぞ聞いてくれた!」


長谷部がパッと笑顔になり話し始めた。こんなにも上手く話題が変えれるなんて思ってもみなかった…。



「実はこの前の総合試験で1位の小鳥遊賢が、俺と同じく魔法研究部にいてな…」


小鳥遊賢。彼は勉強運動魔法に秀でていて、この前の総合試験後に、俺と長谷部に絡んできて、喧嘩になりそうになった。そして俺のことを魔法が使えないからと馬鹿にする内の1人だ。なのにその後の長谷部の言葉に俺は驚いてしまった。


「意外にも、小鳥遊と仲良くなっちまって…部活ではいつも一緒にやってる」


「マジかよ⁉︎信じられん…」


喧嘩になりかけた時、俺と一緒に長谷部もいてクズ呼ばわりされた。それなのに仲良くなるとはどういう風の吹き回しなのか。


「そして、たまに奏ちゃんとも話したりして仲良くなった!まぁもちろん彼女にはなれないけど気持ち的には悪い気はしないな!」


「っていうかなんで小鳥遊と仲良くなれたんだ?」



「ちょいちょいちょい!お2人さんだけで話を進めないでください!私達にも詳しい経緯を教えて下さいな」


俺達の話に本田が突っ込む。流石にみんながいるのに俺と長谷部との2人での話をするのは失礼だ。俺は本田と瀬川にこれまでの経緯を話した。本田はなるほどなるほどーっと言って聞いていたが瀬川は上の空だった。


「事情はわかったよ早乙女くん。そりゃ驚くのも無理はないね。それで、どうやって仲良くなれたの?」


一通り説明をすると、再び本田が俺に変わって長谷部に質問をした。


「まぁこの学校の連中の典型的なパターンなんだが、小鳥遊も魔法で人を評価する奴だ。最初は馬鹿にされたものの、部活で魔法を使う度に仲良くなり友達になれたんだ」


長谷部は魔法の腕に関しては、学年内では上位に入る。流石に柊や雛形、小鳥遊の3人には劣るが、俺が総合試験で妨害してなければ、そこそこ良い成績を取れたはずだ。魔法過敏症の俺がそう感じているのだから間違いない。だから小鳥遊が長谷部を認めるのも納得がいった。


「そうか、まぁでも俺は別に小鳥遊と仲良くする気は無いし、仲良くもなれそうに無いな…」


俺は昼食を食べ終え、食器を片付けに席を立った。


「あ〜ほら!あんたがあんなこと言うから、早乙女くんが行っちゃったじゃない!何であんたはこうもっと考えて…」


特に俺は気分を悪くしたとか、何も理由無くただ食べ終わったタイミングで席を立ったのだが、本田がそうは思ってないみたいだ。なんとなく戻りづらい雰囲気のため、そのまま俺は教室へ向かうことにした。



「小鳥遊賢。彼と喧嘩になりそうになって、仲良くする気も無く、これまで犬猿の仲でやっていこうとは、中々余裕があるじゃない?」


「うお⁉︎びっくりした…」


瀬川も何故か俺の後を付いてきた。驚いた俺を見て少し微笑んでいる。


「小鳥遊賢より俺の方が上だ。そう思ってる?確かに早乙女くんも勉強も運動もできるから、彼から魔法を取れば同格に落とすくらいはできるよね」


「何が言いたいんだ?」


「魔法研究同好会に入っている今、毎日魔法の研究をしていないにも関わらず現状維持っていう余裕のある回答。何か隠してそうね?」


総合試験の時もそうだったが、彼女は鋭い。こうして俺が思っている事を見破ってしまう。もちろんだからと言って秘密を漏らす訳にはいかない。


「さっきも言ったと思うけど、別に急がなくてもいいと思ったんだ。今の俺は魔法研究部には入らないし、仕方ないだろう?」


「ふ〜ん、そう」


瀬川は納得してなさそうな素っ気ない返事をしてきた。彼女に対しては警戒して接しないといけないな。


教室へ着くなり瀬川は自分の席で読書を始める。自分の世界に没頭する彼女の横で、俺は席に座って一度一息ついた。今日の授業や同好会の事を考えていると、長谷部と本田が遅れて騒ぎながら教室に戻ってくる。そして俺の方を見るなり近づいてくる。


「早乙女さっきはすまん!お前の事をもっと考えていればあんな事…」


「いやいや、俺は全く何とも思ってないから!それより…」


俺が瀬川の方に視線をチラッと移す。彼女は読書を邪魔されるのを嫌がり、長谷部と本田も入学早々怒られた記憶が頭をよぎる。


察して彼女から離れ、窓際の場所へ移動した。窓を開けると心地よい春風が教室に入ってくる。


「いや〜すまんな早乙女、そしてその小鳥遊なんだが今日は部活休むって連絡がきてさ、あいつ部活は凄い真面目に取り組んでいるのに何かあったんだろうか…」


「あのギャル男が部活を休むっていうのは、見た目から判断して普通の様な気がするんだが…。っと、俺も人を勝手に評価してるな…これじゃ俺も奴と同じか」


「いやいや早乙女くんは普通だよ!誰だって普通は小鳥遊くんが優等生だって事なんて信じないし、部活もサボる様な人だと思うよ」


正直なところ、小鳥遊の事は興味無い。永遠に関わらずに学校生活を送りたいっていうのが本音だ。きっと小鳥遊の方もそう思っているか、いじめる格好の相手だと感じてるはずだ。


その後も長谷部の話を俺は窓から春風を受けながら景色を眺めて、適当に流していた。



…。



午後の授業も特に何も問題無く過ぎていく。そしてホームルーム時に意外な人物がクラス全員に声をかけた。


「最近港町近くで殺人が起きてます。明日からゴールデンウィークですが、気をつけるように」


ホームルームの終わりかけに、立ち上がりそう言ったのは、柊だった。相変わらずの俯き姿勢でボソボソ声だったが、彼の日頃の行いを知る俺達には、意外な行動過ぎてインパクトを感じるのには充分だった。


教師の鬼嶋も一瞬戸惑ってからの、さようならの挨拶。それ程にまで強烈な意外性だった。


ホームルーム終了後はクラスから一斉に足を運ぶ生徒。各々帰宅だったり部活や委員会に向かうが、俺が向かうのは魔法研究同好会室。いつもの様に俺が会室前で待ち、鍵を持った植田の到着を待つ。


数分後、植田が会室の鍵を開け、中へ入る。2人で他愛もない話をしながら茶を淹れて、一息ついた。


「いつもならそろそろ会長来るのに、今日は遅いね」


「そうですね」


魔法研究同好会会長の天野会長は、天然でマイペースだが、何処か抜け目のない人物。彼との付き合いも約1ヶ月経ち、完全ではないが性格も理解してきた。


将棋にオセロ、トランプ等一通りプレイした後、ようやく会室のドアが開く。


「お待たせ〜」


「会長遅いですよ!もうかれこれ1時間半はいつものより遅れてます!」


「いや〜ごめんごめん植田くん、ちょっと急用ができちゃってさ」


「会長、急用って何だったんですか?」


「明日からゴールデンウィークでしょ?もちろん休みだけど、部活は休みじゃないよね?明日なんと!魔法研究部が部活を休むって情報を手に入れてね、魔法館の使用許可を取ってきました!」


「会長!ナイスです!」


喜ぶ俺とは打って変わり、植田はそうだったんですか〜と普通な反応。植田は魔力が少なく、魔法館での魔法研究は魔力酔いを起こす可能性がある為参加していないから、当たり前というば当たり前の返答である。


魔法館での魔法研究は、言わば俺の特殊な魔法の魔法を消す魔法の特訓を行なっている。相手は生徒会長と天野会長という豪華メンツ。最近は良く使いこなせる様になったが、まだまだ2人と比べると甘いところがある。魔法館での研究内容は、もちろん植田には秘密にしている。


「さぁ会長!私と今度は将棋しましょう!今日は負けませんよ〜!」


「おっととと、ちょっと植田くん⁉︎落ち着いて!」


会長が加わり、いつもの魔法研究同好会の活動が始まった。




…。




次の日、朝9時前。俺は魔法研究同好会の貴重な時間、魔法館での魔法研究をするため登校していた。


校門前に着くと、そこには意外な人物が立っていた。


「早乙女くん⁉︎」


「雛形…さん?」


俺のことを見て走って近づいてくる彼女。何かあったのだろうか…?目が充血していて、腫れている。


「…今日は、魔法研究部の人達は…」


「あぁ、今日は魔法研究部は休みだよ。代わりに今日は魔法研究同好会が魔法館を使う予定なんだ」


俺がそう言うと、目からぶわっと涙を流す雛形。大丈夫かと声をかけると、彼女は涙を拭ってこう言った。



「早乙女くん、お願い…賢くんを助けて!」




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