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最弱で最強

「そんな…」


「ふう、終わったね〜」


蓋を開けてみれば、勝負の結果は圧倒的な差をつけられて天野の勝利。俺は敗北した。


「会長やっぱり強いな〜、早乙女くんも飛車角落としてよく頑張ってたよ!」


俺からは実力差があり過ぎて、全く歯が立たなく、逆に会長が飛車角落ちで指した方が良かったんじゃないかと思う。まぁそれでも勝てる気がしない。


「さて、今日は早いけどこれで終わりにしよう。これからコーヒーサーバーを買いに行くからね」


「え〜」っと言って残念そうな表情をする植田。それとは逆に悔しく恥ずかしい俺は早くこの場から去りたい。


「まぁでも会長がそう言うなら仕方ないですね、今日はもう終わりましょう」


せっせと後片付けをする植田。俺も将棋盤をしまったり湯呑みを洗ったり、できることは一緒に手伝った。


「それでは2人とも、日曜日は研究頑張ってくださいね!お疲れ様でした、また月曜日に会いましょう!」


元気に挨拶して植田は帰って行った。同好会室に残ったのは俺と会長だけ。この状況は初めてである。



植田がいないだけで、凄く静かだ。なんとなく気まずい。…もしかしたら俺が勝負をふっかけた事に会長は怒っているのかも…。謝った方がいいだろうか…。何か喋ろうと俺が口を開いた瞬間…


「いや〜ごめんね〜今まで散々不安にさせてさ〜」


何故か天野が謝ってきた…。訳も分からず俺が何も言えずにいると


「確かに毎日こうやって遊んでたら魔法使えるようになるのか〜?って話だよね?わかるよ君の気持ち。でもしょうがないんだ」


なんだこの流れは?この人は俺の気持ちを知った上で今まで何もしないで遊んでいたのか?何も説明してくれなかったのか?


「知ってたんですね、俺の気持ちを」


「うん、だからこうして謝っている」


「でも説明くらいしてくれてもいいんじゃないですか⁉︎何の理由があるのかは知らないですけど、毎日こうやって遊んでばかりで魔法なんて使えるようにならないし、会長自身を信じていいのかどうかだって………⁉︎」



俺のここ数日の気持ちが爆発して興奮してしまった。けれどもその興奮が一瞬にして収まった。信じられない事が起きた。


「そんなバカな…」


「やっぱり君は僕の思った通りの反応をしたね、植田くんがいたらこの状況をどう説明する?そしてその反応をしたって事はつまり君は…」



その時、天野風馬は凄い魔法使いだと、俺は確信した。



………。




あれから2日経ち、日曜日の朝9時5分前。9時に魔法館で集合だが、未だ天野会長の姿はない。魔法館には入れず、俺は魔法館の前で待っていた。


日曜日の学校は驚くほど静かだ。日々過ごしている場所と同じ場所なのに、違う感じがする。ちょっと近くでも歩いて、少し雰囲気が違う学校でも楽しもうかなと思っていると、こちらに近づいてくる人がいた。


「おう早乙女くん」


「生徒会長⁉︎何でここに?」


「ん⁉︎えっ⁉︎天野から聞いてないのか?何故か呼ばれたんだよ」


驚くことに生徒会長が出てきた。やはり天野と生徒会長は親しい関係なのか?でなければ日曜日なのに休まないで来るのはさすがにおかしいのではないか…。



「もしかして生徒会長、天野会長と仲が良いですか?」



「は⁉︎はははははぁ〜⁉︎そんな訳無いだろ⁉︎大体なんであんな奴の為に私が日曜日を潰してまで来なきゃいけないんだ!全く、この前だって会費増やせって生徒会まで来て迷惑かけてきて…」


顔を真っ赤にして慌てて否定する生徒会長。すると奥から天野会長もやって来た。



「早乙女くん!穂花ちゃん!お待たせ〜!」


手を振りながらこっちへ歩いてくる天野会長。そして聞き捨てならない言葉が…


「穂花…ちゃん?」


「違うんだ早乙女くん!これはアイツが勝手に言っているだけで私達は決して君が考えているような関係ではない!」


「僕と穂花ちゃんは最近はしてないけど、前はよく日曜日には魔法館でこうやって2人で…」


「貴様はもう喋るな!早く魔法の研究を始めるぞ」


生徒会長が天野の口に手を当てて喋るのをやめさせた。大体2人の関係がわかった。そして心の中で植田にエールを送った。あなたの想い人を振り向かせるには簡単にはいかないよ、頑張って!と。


生徒会長が魔法館の入口にある鍵を開ける。安全性の監督役を任してもらっている人しか持っていないみたいだ。


音を立てて開く扉。2人は慣れたように中に入っていき荷物を置いて準備する。



「先輩達は何回も日曜日に魔法館を使っているんですか?」


「私は来るのは久しぶりだな。だが天野は毎週来てるぞ?」


「え⁉︎魔法館は使ったこと無いって言ってませんでした?」


「僕は同好会として使ったこと無いって言っただけだよ。個人としては毎週魔法館を使っているよ」


会長の知らない面が次々と出てくる。でもそれはお互い様だと気付く。


「じゃあ僕達の事も知った事だし、そろそろ早乙女くんの事を教えてもらおうか?」


「え⁉︎」


「魔法を使えるようになる為に、まず君のことを知る必要がある。なんならまだ僕達のことで足りない事を教えてもいい」



2日前、同好会室で起きた現象が再び起きた。信じられない事だが現実だ。


天野からは通常は風属性の魔力が感じられるが、それが段々と水属性に変わっていく。


「僕の名は天野風馬。公には僕の魔法は風属性ってことになっているが、風と水のキメラです。そして魔生核が半分だけ混合している為、風と水と、その混合の霧属性の3種類の魔力の生成が可能だ。そして完全にコントロールし、キメラであることを隠すこともできる」


天野の右手からは水が、左手からは風が出ている。そして次には両手から霧が出てきた。


「次は私か?名前は紅蓮穂花だ。知っての通り完全な混合種のキメラで混合魔法しか使えない。属性は火と土の混合の溶岩だ。あと、生徒会長を務めている」


生徒会長の足元からは、ポコポコと溶岩が湧き出てきている。こうしてキメラの魔法を実際に見るのは初めてである。


「次は俺ですね、早乙女大知です。魔法は使えませんが、使えるようになる為に頑張ります」



「それだけではないよね〜?」


俺の紹介に突っ込んでくる天野。確かに俺はまだ隠していることがある。


「天野、どういうことだ?」


「何故早乙女くんが魔法を使えないと思う?魔力が無いから?それとも魔力を魔法に変換できないから?」


「魔力が無いからだろう。早乙女くんからは魔力を全く感じない。魔力も無ければ魔法も使えないのは当たり前だ」


「では魔力が無い早乙女くんは、何故魔力酔いを起こさないんだろうか?魔力耐性は全く無いはずなのに、こうして魔法を使っても平気そうだ。例えばこうやっても…」


その瞬間、天野からは膨大な量の魔力が溢れ出した。柊とは比べ物にならない程の量と密度である。魔法館に凄い速さで天野の魔力で満ちていく。


「やめろ天野!」


すかさず生徒会長は天野の胸ぐらを掴み、やめさせた。


「早乙女くんが魔力酔いをして気を失ったらどうするんだ⁉︎今日は保健室も人がいないし、このまま病院行きになったら、日曜に魔法館の使用なんて2度と許可できないぞ!」


「まぁまぁ落ち着いてよ穂花ちゃん、僕もいきなり物騒な真似して悪かった。でも当の本人は多分、凄い魔力だなーくらいにしか思って無いと思うよ?」


えっ⁉︎っと言って俺の方を振り向く生徒会長。天野の言う通り俺は、凄い魔力だなーと思っていた。恐怖感や体調が悪くなったりはしていない。


「天野…これはどういう事だ?お前の魔力でも平気な顔してる奴なんて、私と…」


「僕がこんな量の魔力を出すのを見てたのは、今まで穂花ちゃんくらいしかいないよ」


「…そうか」


「まぁおそらく早乙女くんは、本当は凄い量の魔力を宿していると僕は思っている。けど彼自身からは魔力は全く感じられない。それは魔力過敏症の彼が良くわかっているはずだ」


天野よりわからない単語が出てきた。すかさず俺は質問した。


「あの、魔力過敏症っていうのは何ですか?」


「魔力過敏症は極僅かな魔力でも感じられてしまう症状だよ。中には魔法属性や魔力波長もわかるくらい敏感な人もいる。魔力が少ない人に起こりやすい。僕が同好会室で魔力の属性を変えた時に、君がすぐ気付いたからわかったよ」


俺と瀬川で言っていた魔力超感覚の事か…。正式な名前があったと今初めて知った。


「でも魔力に敏感な早乙女くんが自分に魔力を感じられないのに、魔力を宿しているとはどういうことだ?」


「穂花ちゃんはあの実験を知っているかい?キメラの双子の全魔法属性混合実験。火と土のキメラと風と水のキメラの双子が魔法を混合したらどうなるか?」


天野が言うこの実験も有名な実験の1つであった。その結果は…


「もちろん失敗さ、魔法は混ざる事なく弾け飛んだという結果になっている。それと早乙女くんと何の関係があるんだ?」


当たり前のように答える生徒会長。だが天野の口元は僅かに曲がっていた。


「僕はあの実験は成功して魔法が混ざったと思っている。そして魔法が弾け飛んだという結果になった。いや魔法が『消えた』というべきか…。これは全属性が混ざった混合魔法の効果なんじゃないかと…」


俺は驚いて鳥肌が立った。バッと天野の方を見ると、満足気に俺の顔を見ている。やっぱりねと言いたげな表情の天野に負けて、俺は自分の秘密を言うことにした。




「…俺は、天野会長が思っている通り魔法を消すことができます」




「そして君は火水土風の4種のキメラで完全混合型だ。魔力も魔法を消す魔法だからか感じられないだけで、膨大な量を持っているはずだ。4種のキメラだからね。少なくとも僕と穂花ちゃんのを足しても足りないくらいだろう」



突然の意外な結果に、本当に自分がそうなのか信じられない。そう思うのは俺だけではなく、彼女もだった。


「待て待て天野!早乙女くんが4種のキメラって…そんなバカなことあるか⁉︎」


「何なら試してみようか?僕と穂花ちゃんで早乙女くんに最大限の魔法を放つ。それを消したら信じる?」


「…いや、私が信じないからと言って、そんな危ない真似することはない」



この時は、天野会長の言うことが信じられないが本当なのかもしれない。そんな気持ちになって天狗になっていたのかもしれない。だから口が滑ってしまった。



「俺は別にいいですよ。生徒会長くらいの魔法だったら消せると思うので…」



ゆっくりとこちらを振り向く生徒会長。先程俺を心配してくれたような優しさはもうない様子だった。



「そこまで言うなら試してみようか…。でも私の魔法で怪我をしても、魔法館を2度と使えなくなっても責任は取らないからな」

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