表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相棒はお前だけ!  作者: 沽雨ぴえろ
2/5

今の英雄その一






「おらぁっ!」



毛の生えていない真っ黒な巨体、鼻の突き出ていない犬のような顔、体に見合わず小さく蹄のある四肢、白く濁った眼。口から止めどなく溢れる唾液に顔を歪めながら、私は魔物に剣を振り下ろす。



「ギュイイイイイイイッ」



甲高いような、低いような、そんな気味の悪い声を上げて血を撒き散らす。

私はすかさずもう一撃を脇腹に食らわせる。

またもや声を上げるが、私はそれを無視して少しかがんた状態になった魔物に飛び乗る。



「ギャイイィィィッギュイイィィィッ!」


「っとぉ!振り落とすなよぉ糞野郎!」



私は頭を振って落とそうとする魔物に、にやりと笑って言う。

若干の伸縮性のある皮を力任せに引っ掴み、刺しやすい位置を探す。



「じゃーな、来世で会おうじゃないの!」



出来るなら会いたくないけどな!最後の最後にそう叫び、私は魔物の首元に剣をズプリと柄までぶっ刺した。

叫び声を絶えずに上げていた魔物は一瞬、びくりと体を震わせるとぐらりと斜めに揺れた。

倒れるより早く私は飛び降りて、依頼完了の印として魔物の両耳を削ぎ落とす。



「じゃーな魔物さん、静かに眠ってな」



私はポンと白目をむく死体を叩くと、ギルドに依頼完了を伝えるためにそこを後にした。











■■■■■




「マナさん、依頼完了しました」


「あら、コアちゃぁーん!相変わらず速いわねぇ依頼!」


「そうですか?ありがとうございます」


「どれどれ……うん、やっぱり新種の魔物よねぇ」



私は魔物の耳をギルドの受付嬢マナさんに渡す。彼女は魔力が特殊で、所謂透視のような、千里眼のような、鑑定のような魔術が使える。

私はマナさんの言葉を聞いて顔を顰めた。



「最近妙な魔物ばかりいますよ」


「依頼もそれ関係ばっかりだものねぇ…そろそろ国が動くかしら」



その言葉にぴくりと反応して、私は受付を離れた。

帰り際に依頼板を見てみると、確かに半分ほど奇妙な魔物関係だ。

それを確認して、魔物について考えながら帰路につく。

――最近、見たこともない魔物が居るという情報が絶えない。元々いる魔物に似ている所もあれば、何故か他の魔物の特徴を持っていたり、本来持っていない筈の能力を持っていたりする新種の魔物たちは、ギルドのみならず非戦闘民である一般人の間の中でも噂され、国の実験で造られた合成獣なのではないか、とまこと密やかに囁かれていた。

かくいう私もその噂を信じる一人だ。



「………、」



一般人には知られてはいないが、ギルドに所属する者、戦う者は―――言い換えれば非戦闘民以外―――その魔物にはある特徴があることが通達されている。

『新種の魔物にはどこかしらに番号の焼印が入っている』。

一般人を怯えさせないように秘匿の魔術を使う程の徹底ぶりだ。それ故、私は合成獣なのではないかという噂を信じているのだ。信じない者もいるが、魔術は常に研究されている。今の時代、魔術で魔物を合成することなど容易いのではないか?

私は自宅のドアを開けつつを比べてみた。



「……………全っ然変わったよなぁ」



三百年前はもっと生活水準が低かったし、あんなギルドなんてなかった。ほぼ個人経営みたいなものだった。

三百年前に英雄として死んでから生まれ変わるまでの間、コツコツと色んなことを学んできたのだろう。

きっと大変だったろうなぁと他人事のように考え、ふと思った。



「………………ルディは、どこにいんだろ……」



かつての相棒、ルディアロ・ラオリーことルディは、唯一私と渡り合った強者だった。こう言ってはなんだが、私はかなり強かった。特に剣術が。魔術も使えたは使えたが、いかんせん魔力をうまく使えなかった。

一方のルディは私とは正反対だった。私は魔術よりも剣、ルディは剣よりも魔術だった。

正反対でもあれだけ息の合う相棒はいないと、私は胸を張って言えるくらいに息があっていた。合いすぎて他とは組みたくないくらいだった。

そんな相棒は、私みたいに生まれ変わってはいないのだろうか。いや、これだと語弊があるな。私はあいつが生まれ変わっていると感じる。何故かは知らないが、確信を持って言えるのだ。

ルディアロ・ラオリーは、私同様現世で生まれ変わっている。

私はぼんやりと天井を見つめつつ、そんなことを思っていた。

あぁ、会いたいなぁ。



「…見つけられるかなぁ」



どこにいるかも分からないし、今何歳で、どんな状況にいるかも分からない。しかし、それでも私はルディを見つけ出すと心に決めていた。

その為に私はギルドで旅のための金を集めているのだ。

私は何もいない天井を見つめ、にやりと不敵に笑った。



「絶対見つけ出しからなぁ…待ってろよルディ」



まぁ、旅に出るのは金が集まるのと、今回の合成獣疑惑が解決してからだが。これでもギルドで上位にいるのだ、話が来ないわけが無い。

私は軽くため息を吐くと、立ち上がって昼飯の準備に入った。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ