ストーカーですけど、色々と間違えてしまいました。
途中から夜中のテンションで書きました。
良かったら、見てください。
「シャーペンを貸してくれ」
「うん、いいよ」
喋ったのはその言葉だけだった……でも、運命だと思った。
私、恭白 春子はストーカー気質である。
好きな人の私物を盗んだり、盗撮が気持ちの悪い行為であることを自覚しながらも止める事が出来ない…そんなこなのだ。
「あぁ……今日も光一くんは格好いいなぁ……」
今日も自分が盗撮した意中の相手である光一の盗撮写真を見ながらニマニマと笑みを浮かべる。
光一くんとは、性格は男前、顔はイケメン、成績優秀、剣道部武将、更には大きな会社の御曹司というのだから、冗談のように非の打ち所がない。
ある意味では、彼に恋をしてしまうのも、そして、自分では付き合うことは絶対に出来ないと自覚している私がストーカー行為を及ぼすのは当たり前だったのかもしれない。
「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き……あぁ~……この思いが伝わればなぁ……本当に大好き……」
そう言いながら、光一くんの机に赤いペンで『好き』と無数に書いた手紙を入れてその日は帰った。
ストーカー行為がダメなことは知っている。けれども、どうやっても接点が出来ない自分はこのような行為で満足したいのだ。
思いに答えてくれなくたっていい。ただ、反応を見たい。印象付けたい。
次の日、登校すると、光一くんは何時もと変わらない、寧ろ少しご機嫌な様子で机に座っていた。
どうしてご機嫌なのだろう、あの気持ちの悪い手紙を見たならばこんな風にはならない筈なのに…
「どうしたんだよ光一ー!ご機嫌だな~」
と、光一の友人が聞く。
ナイス!と思いながら、私は何食わぬ顔をして聞き耳を立てた。
「実は、俺の親友がやっと両思い」
「マジでか!?」
「あぁ、俺も告白されて嬉しいよ」
ハハっと、彼は笑った。
ショックはデカイ。
私は、光一くんの驚く姿が見たかったのだ。気味悪がって、印象付けたかったのだ。
それなのに、何の反応も示さないなんて、許せない。
「(光一くんの親友に恋人出来たんだ……畜生…それさえなかったら、素直に気味悪がってくれたかもしれないのに…)」
ギリィっと、私は静かに嫉妬の炎を燃やす。
誰だ、光一くんの親友って…そんな奴、何人かいたけど、どいつだ……
「なぁ……」
爪を噛んでいた私に突然、誰かが話しかけてきた。
誰だよ、あ゛ぁ゛ん?
少し不機嫌だった私は睨みつけるように後ろを振り返った。
「よぉ」
そこに居たのは、金髪ピアスの超怖い男でした。
「え!?あ…夜草くん…」
夜草 和流。
夜草組の組長の跡取り息子。
日本最大チーム、白虎隊の3代目総長でもあり、眉目秀麗、色の虎の異名をもつ男。
意味の分からないカリスマ性を持ってるから、うちの学校にも大量の信者がいる。
私との接点なんて、無かった筈だし
「なんか……今日はいい天気だな」
え、何なのだろうか?何で話かけるの?
キモいよ。話しかけないで欲しいよ。
ぶっちゃけ、いい天気とかどうでもいいし、雨が降ろうがどうでもいいし、周りの視線痛いし、っていうか邪魔。光一くん見れないじゃん。
でも、そんな事言える訳ないし、コイツ、どうやって立ち退かせようかな…
あ、そうだ。
「あの!!……これ、あげる」
視線も合わせたくないので、下を向きながら、持っていたクッキーをあげる。
「あの……それ、試作品で……あんまり、美味しく……ないかもだけど」
これは、光一くんにあげる為の試作のクッキーだ。
本来ならば、血液と髪と唾液と爪を混ぜたものを作るのだが、こっちは普通のクッキーだ。
もう、これで勘弁してほしいと、ビクビクしながら、相手の反応を確かめた。
「スッゲェ嬉しい!!サンキュー!!めっちゃいいな!!」
物凄く嬉しそうな顔をして、私の両手をガシっと握った。
よかったぁ……一応は気に入ってくれたみたい。
「う、うん………じゃあ」
私は無理矢理、夜草くんの手を振りほどいて、逃げるように自分のクラスへと走っていった。
あぁ、汚い。さっさと手を洗おう。
その日の放課後、私はリベンジとして、特製クッキーを光一くんの机の中にいれました。
私の愛情と、髪の毛と、爪と体液……気づいてくれるかな?
「大好き」
我慢が出来ず、チュッと、光一君の机にキスして、帰った。
「春子」
光一くんの反応を知るために、A組に行ったら、なんか夜草くんに呼び止められた。
その目が、すごいギンギンで、ちょっと怖い。
「……あ……の、何でしょうか」
ビクビクしながら、私は仕方なく訪ねる。
というか、この人は何で私を呼び捨てにしてるのかな?文句を言う事は怖くて出来ないけど、普通に疑問だ。
「昨日のクッキーありがとうな。あの後、食べてみたんだが、スッゲェ美味しかった」
「そう……ですか」
何で距離が近いんだろ…。
一歩離れて距離を置こうとしたら、何故かまた近づかれた。
「ぁあ!!愛情が、こう……詰まってるっていうの?なんか、斬新で……嬉しかったぜ」
愛情?斬新?
あぁ、多分、信者や舎弟からの差し入れは、大体が高級なものだから、あんなプレーンなクッキーが逆に新しい……とか?
別にお前の為にやった訳じゃないし、もうどっか行ってよ。
キーンコーンカーンコーン
あぁ…チャイム鳴ったよぉ…光一くんが見れなかったよぉぉ…
「あ…じゃあね」
「おう、またな」
仕方なしに手を振って、教室を離れた。
あぁ、やだなぁ…最悪だなぁ…もう、関わって来て欲しくない。
なのに、その日から、やたら絡まれるようになりました。
光一君を見たくて教室に行ってるのに、何故か夜草くんに話しかけられる。
そろそろ、靴をコッソリ盗んだり、体操服を盗む事を実行したいのに、何故か現れるから、それが出来ない。
「っよ、春子、今日も可愛いな」
しかも、何かやたらスキンシップが激しいというか、抱きしめられたり、この間はキスされてしまった。
汚い。キモい。本気で死んで欲しいし、嫌悪感半端ないし、周りの視線も凄く痛い。
気がつけばウェットティッシュの出費が凄いことになっていた。
「(何で、こんな酷い事をするのだろうか?他の人間にすればいいのに)」
それともからかわれているのだろうか?だったら最悪だ。
ストーカーをやっている私がいうのもあれだけど、人の嫌がることはしないで欲しい。
全く、何で人の気持ちが分からないんだ。どうみたって、嫌がってるだろ。
「春子、今日、一緒に飯食わねーか?」
今日も彼は何故か絡んでくる。
もう、ガマンも限界だ。
「あ…あの!」
両方の手を握り、初めて反論する。
怖い、足も震えている…けど、ちゃんと言わなければならないと、夜草君の服を掴んで前を向いた。
「……」
ソッと、目を離した。
…夜草くん、どうして無言で目を見開いて私をガン見するのですか?凄く怖いです。
だけど、怖がっているだけじゃ駄目だ。
「私…人と喋るのが、苦手で…人の目も…凄く…ききき気になってしまうので…あんまりというのですか…そのご遠慮していただければなと…すすみません」
何度も噛んでしまったし、声も裏返ったし、顔も見れないから目を瞑って言った。
あぁ、夜草くんに反発してしまった。どうしよう、やっぱ言わなければよかった。死ぬほどキモい奴だけど、ガマンすればよかった。
ビビりながら、そろりそろりと、夜草くんの方を見れば、口元に手を当てて、何故か震えていた。
「ヤベェ…超可愛い…」
口元を覆っている手のせいで、ぐぐもった声になっている為、余り聞こえなかったが…
何故か、全身に蛆虫が付いているような、ゴキブリだらけのお風呂に入ったような嫌悪感が体中を駆け巡った。
しかし、そんな私とは正反対に、何故か夜草くんはご機嫌なご様子だった。
「そうだな、よく考えればそうだよな!悪ぃ、あんまり考えが及ばなくって」
「あ、ううん…こっちこそ…ごめんね」
よかった。怒ってないし、一応分かってくれたみたいだ。
何故か赤くなっている顔が凄く気持ち悪くて、吐き気がするけど、意外といい奴なのかもしれない。
「ありがとう!じゃあね」
ばいばいと、私は夜草くんに手をふって、走り去った。
さて、ファブリーズを買って、除菌するか。
その日から、夜草くんが現れなくなった。
まぁ、元々ただの悪ふざけか、いじめの延長みたいなもんだと思うけど、本当によかった。
「大好き…」
これで思う存分ストーカー行為が出来る!と、私は有頂天になった。
手始めに、彼の机の中に愛の手紙を書き連ねた。
私の特製クッキーも入れた。
光一君のそばにいるメス豚が気に入らなくて『メス豚と一緒にいるな』っていう文字100回書いて送った。
思う存分、ストーカーが出来る。物凄く楽しい。
なんて幸福なのだろうか。私は幸せ者だ。
しかし、そんな幸福も長く続かなかった。
「何よ…あの女…」
光一くんに恋人が出来た。
いや、恋人なのかは分からないが、彼の横を陣取り、楽しげに喋る女が現れたのだ。
とても、綺麗な人だった。
足は長くてスラッとしていて、髪の毛はサラサラ、顔なんて神様が極限の愛情を注いだとしか言えない作りをしている。性格も明るそうで、明るそう…。
私とは正反対の、美女だった。
「(許せない許せない許せない許せない……!)」
ガリガリと、壁を爪で削る。
そのせいで、爪が捲れて柔らかい肉が剥き出しになり、血が滴ったが気にする余裕は無かった。
すぐさま、手紙を何度も送った『あの女から離れろ』『メス豚と別れろ』『私を裏切る事なんて許さない許さない許さない』『貴方にあの女は似合わない』『酷い目に会わせるぞ』
しかし、光一くんに、変わった様子は無かった。
手紙ごときでは、気にしない人なのかもしれない。それか、気にしていないフリか…
「あぁ…もしかしたら本気だと思われてないのかしら…」
だとしたら、心外だわ。
私は本気なのに、光一くんを心配してあげているのに…。
『お前を殺す』
剥がれた爪から出てきた血で書いた文字で、最後の手紙をだした。
「大きい家だなぁ…」
私は今、光一君の家にいる。
純日本風の、旅館みたいな豪邸で、王子さまっぽい光一くんのイメージとは少し違うけど、まぁ家なんてどうでもいい。
「えっと…サバイバルナイフ…は、ちゃんとある。スタンガンも一応装備してるっと…」
持ってきたバッグの中身を確認して、家へと侵入した。
大きな柵を乗り越え、カメラの線を切り、警備員らしき人をスタンガンで眠らせて、彼の部屋までよじ登った。
真っ暗な部屋で、物音を立てずにそろりそろりと忍び足で、懐のサバイバルナイフを取り出した時…
カチッ
いきなり、部屋が光った。
「…うぁ…」
いきなりの光に、一瞬目が潰れた。
「やっぱり、来てくれたんだな」
何故か、夜草くんがいた。
は?なんで?どういうこと?
「えっとここって、光一くんが居たような…」
状況が理解
「あぁ、光一の親は夜草組の幹部で、海外へ行ってるから、俺の家に住んでいるんだ」
なんて…こと。
え?光一くんの親が夜草組の幹部!?知らないよそんな事!っていうか、情報に載ってないよ!
えぇっとつまり、私は間違って夜草くんの家に来ちゃったってこと?
最悪だ。
「あ…あの…ごめんなさい!出来心だったんです!」
両手を下につけて、私は必死に懇願する。
都合がいいと思われるかもしれないが、一旦冷静になると、警察に行くのは嫌だったのだ。
必死で涙を流しながら懇願する私はさぞかし滑稽かもしれないが、知った事ではないとばかりに、意地もプライドも捨てて謝罪した。
チラリと、夜草くんの方を見れば、何故か顔を赤くして、プルプルと震えている。
「そりゃあ、俺も悪かったし、許すに決まってるだろ……すっげーマジで可愛い…」
最後の部分は聞き取れなかったが、許すという言葉は聞こえた。
あぁ、この人本当にいい人だ。
ゴキブリ人間とか、気持ち悪い男とか、ヤクザとか、吐き気製造機とか思っててごめんなさい。
と、心の中で懺悔している私をよそに、ゴゾゴゾと何かを取り出した。
「その代わり、コレにサインしてくれ」
夜草くんの手が邪魔で何を書かれているか、見えないのだが、何か書類的なものだ。
えっと…コレは何だろうか?
けれど、これにサインするだけでいいのであれば、サインするしかないのだ。
「あの…書きました」
本当に、コレは何なのだろうか?嫌な予感しかしないが、今は、仕方が無い。
「これで婚約成立だな」
笑顔とともに、言葉がハッキリ聞こえた私は、本能的にサバイバルナイフを握って、夜草くんへと突撃していた。
実は奇跡と偶然により、夜草君に間違ってストーカー行為を行っていたことや、これまた奇跡と偶然的に光一くんの状況と夜草君が重なっていたので、不自然に思われず、上手い具合に勘違いを引き起こして居たことに気づくのは、また別の話。
因みに…
「違うんです!すみませんでした!……え?…いや、寧ろ嫌……嘘です!愛してます!愛してます!……ごめんなざぃい…あいじでまずぅぅ…もう許ぢぇぇ…」
結局勝てずに屈服し、騒ぎを駆けつけた怖いお兄さんとお姉さんに囲まれて銃を向けられて脅され…
命欲しさに愛していると大泣きしながら連呼したのは…今の話。
恭白 春子
光一が好きな、ちゃんと見れば意外と可愛い女の子。
実は、過去のストーキング行為からそれなりにハイスペックなのだが、自己中で、周りが見えていないのと、奇跡的な偶然により、ドツボにハマる。夜草のことは、本気で嫌っている。
夜草
昔、シャーペンを春子に貸して貰ったことをきっかけに、一目惚れする。自分にストーキングしていると思い込み、嬉しがる。
物事が自分の思う通りの方向に進む幸運体質である。
違うベクルトのヤンデレ同士を会わせたいという妄想から発展しました。
よければ、感想下さい。