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カモミールティー(閑話休題)



 <BGM>


 「はい、番組のご覧の皆様、こんにちわー!那珂乃カナと申します。本日は特別番組となっておりまして、なんとこちら、ウォールドウォー対策部隊<センチュリオン>悠南支部から、皆様に今まで公開できなかった秘密情報をこっそりお知らせいたします!解説は悠南支部紅一点!美少女パイロットの奈々瀬ルミナさんにお願いいたします!」


 「も、もう!そんな紹介やめてください!……あ、失礼しました。ご紹介に預かりました奈々瀬ルミナと申します。本日は日頃ご支援、ご声援を頂いている皆様へ新しく情報を公開できるようになりまして、そちらを私達でご説明させていただきます。よろしくお願いします」


 「そんなカチカチじゃ視聴者の皆さんも距離を感じちゃうよルミナちゃん!もっと明るく笑顔で!」


 「私、こういうの苦手で……とにかく、行きましょう。今回は私達パンサーチームが使用するWATSと、それをコントロールするトレーサーポッドのご紹介をいたします」


 「はーい、質問です!WATSってなんの略ですか?」


 「あ、はい。WATSはウォールドウォー・アーミング・トルーパー・システムの略で、ウォールドウォーで戦闘する兵器の総称です。本来は戦車、ヘリ、戦闘船舶など全てを指しますが、最近では特に私達が使用している人型戦闘マシンを示している事が多いですね」


 「なるほど!わかりました。……あ、これがパンサーチームの使っているWATS『ファランクス』シリーズですね」


 「そうですね、今回公開いたしますのは空戦型の『As』と前衛戦闘型の『5Fr』の二機になります。まずは『ファランクス』シリーズの説明からさせていただきます。『ファランクス』シリーズはWATSの歴史の中では第二世代後期に属するシリーズです。最近ではさらに新しい第三世代というのが開発されていますが、今前線で使用されているWATSの中では最新鋭の部類に入ります」


 「ええと、1年位前に開発されたシリーズなんですね」


 「はい。とは言っても純粋に正式採用機として生まれたわけではなく、第三世代開発の為のデータ収集の為、というのが主目的でした。『ファランクス』シリーズで培われたデータは、静岡支部で開発された『サリューダ』シリーズを始め世界各国の組織で有効活用されています」


 「第三世代の前にちょっとお試しで作ってみよう!って事だったんですね!」


 「そ、そうですね。他の機体の実戦データももちろん参考になりますが、『ファランクス』シリーズは特に実験的な装備、武器が揃えられていて、実際に戦闘で勝利する事ももちろんですが様々な局面やマイズアーミーに対抗できるように実験を兼ねた作戦行動が出来るよう、拡張性を考慮して建造されました。例えば『As』の飛行ユニットは、今まで実用化は不可能だと言われていた物でしたが、この悠南支部で実験を繰り返し実用レベルまで完成させることができたんです」


 「それは凄いですね。じゃあこれから飛行型のWATSがどんどん開発されるんですね」


 「はい、既に海外では『As』のデータを研究して実用化されたWATSもいくつかあります。でもまだ操作性や量産性にクリアしなければいけない問題もありまして、その研究が進められています。この『As』もさらにデータを収集して貢献しなければいけません」


 「『ファランクス』は今4機運用されていますが、みんな外見が大きく違いますよね。ワタシ、最初全然違う機体だと思っていました」


 「それは『ファランクス』シリーズ独特の特徴ですね。最初にご説明しますと、この四機は外見上同じパーツは一つもありません」


 「そうなんですか!?」


 「はい、ではなぜ『ファランクス』シリーズと呼ぶかと言いますと、中に入っているフレーム……骨組みが一緒なんです」


 「骨組み……ですか」


 「文字通りWATSの骨格ですね。この人型マシンの中にある一回り小さい、芯になるフレームが共通なんです。これにそれぞれ別の装甲、推進器、センサー、武器等をつけると見た目ではまったく別の機体になってしまう訳ですね」


 「うーんと……例えばワタシとルミナちゃんは背格好が似てるけど、お互いに筋肉や髪の毛を交換してそっくり入れ替われるって事ですか?」


 「……ちょっとグロテスクな喩えだけど、そういう事ですね。こういう設計にする事で、頭だけもっと装甲を厚くしてみよう、背中にバーニアを追加したらどうだろうか、といった試験がやりやすくなるんです。解りやすくこちらに『As』と『5Fr』、そして芯になっている『ファランクス』共通フレームの頭の図をご用意しました」


 


挿絵(By みてみん)




 「へえー、中身は共通なのに周りのパーツつけるとホントに違うマシンに見えますね」


 「そうですね。やろうと思えばお互いにそっくり頭のパーツを交換することも出来ます。ただボディとマッチングしないために性能は落ちてしまいますが。アンテナ一つにしても、『As』は上空での高機動時でも受信しやすいように多方向に複数付けられています。対して前線で活動する『5Fr』はこの、オデコのヘッドガード裏に一つ。そして頭部後方に装甲に包まれたロッドアンテナが一つと戦闘による損傷を想定した作りになっています」


 「なるほどー、設計者のコダワリが感じられますね!ええと、(チラッ)それではお次にこの二機の図を見せていただきましょう。まずは、パンサーチームのエース、アイドル活動も絶好調の神谷カズマさんの愛機、『ファランクスAs』です」



挿絵(By みてみん)




 「『ファランクスAs』は飛行型のマイズアーミーへの対抗策として、空戦用WATSのテストベッドの一つとして建造されました」


 「羽がたくさんありますね」


 「はい、大小10枚の可動型ウィングにより自由な空戦運動能力を獲得しています。これまでも飛行できるWATSはいくつか存在しましたが、マイズアーミーと近接距離でドッグファイトができるようになったのはこの『As』が初めてです。空戦用の速射ライフルと、左腕の小型シールド内にある強力なレーザーブレードは大型機相手でもひけをとりません」


 「すごいですね!じゃあこれをたくさん生産したら有利になるんじゃないですか?」


 「残念ながら現実的な問題がいくつかありまして、まず建造工程が大規模かつ複雑で大量生産に向いていません。本体カウルはもちろん操縦系のプログラムも一般的なWATSの4倍のコード量になってしまいます。そしてそれより大きな問題が、操縦の複雑さ、トレーサーへの負担の大きさです」


 「操縦難しいんですか?」


 「かなり難しいです。普通に飛行するだけならともかく、近距離戦闘を行おうとすればコントロールは非常に困難になります。私も一度シュミレーターで操作しましたがすぐに失速して墜落してしまいました」


 「そ、そうなんですか!じゃあ操縦しているパンサーチームの神谷さんは相当凄い腕前という事なんですね」


 「はい。彼の場合は技術もそうですが、空線の直感、反射神経が優れている点が大きいと思います。現状この悠南支部でもこの『As』で戦闘を行えるのは彼だけだと言われています。性能向上の為に操作性が犠牲になっていることは『As』の弱点で、今後はその改善に向けてスタッフが一生懸命取り組んでいます」


 「解説ありがとうございました。では次はこちら……ええと、『ファランクス5Fr』ですね」




挿絵(By みてみん)





 「『As』と違って、ずいぶんゴツいですね」


 「はい、この『ファランクス5Fr』はワタシたちパンサーチームの要となる機体です。最前面に立ち、戦線を維持する為に全身を重装甲で覆っています。最大の特徴はこの巨大シールド『ヴァルナ』ですね」


 「大きいし、重そうですね」


 「そうですね。このシールドだけで並のWATSの総重量の20%ほどになります。高密複合装甲による対実弾防御に加え、フィールドジェネレーター及び展開式光学防護壁・バリアツェルトなど防御装備としては破格の性能を誇ります。この重さや、全身の装甲の重量に対し、本体各部に多数の高出力バーニアが配置され高い機動力を実現しています」


 「そうなんですか、意外に凄いんですね」


 「もちろん、推進剤の消費も激しいため長時間の作戦行動は難しいですが。またその為に火力が犠牲になっており、右腕の二連装ビームガンのみが固定武装で、右肩の武装ターレットに重ガトリング砲やエネルギー兵器・PMC砲を搭載して対空戦闘などを行います」


 「攻撃より防御を考慮しているんですね」


 「はい。それでも、当機のトレーサーは使いようだと言って攻撃的な運用をすることもありますが……」


 (ニヤニヤ)


 「ごほん……『5Fr』は『ファランクス』シリーズの中でも最後発のグループで、それほど尖ったコンセプトで設計されたものではありませんが、新素材の装甲や新型火器のテストベッドとして運用される事も多く柔軟に運用されています。配信されている戦闘動画などではその一部も確認する事ができますので興味のある方はご覧下さい」


 「ありがとうございます。それでは最後、コクピットの解説をお願いしますね」





挿絵(By みてみん)





 「こちらは悠南支部で使用されているコクピットポッドのものになります。国内ではこの形が一般的ですが海外では大きくレイアウトが異なる事もあります。一度アメリカ製のポッドを使用した事もありますが、レバーが大きかったりペダルが重かったりして大変でした」


 「そうなんですか。なんかいろいろ画面やボタンがあって操縦が複雑そうです」


 「実際の戦闘中は両手のコントロールレバー以外はほとんど触らないんですよ。では順番に説明いたします。中央にあるのがインフォパネル。主にレーダーや作戦行動時間など戦闘に必要な情報を表示します。その上にある透明なパネルはマルチディスプレイと言って、精密照準やオンモニターキーボードなど様々な用途で使われます。下にあるコンディションパネルは自分の機体の受けたダメージや残りの推進剤などが表示されます」


 「どれも大事なモニターなんですね。このコンディションパネルの右のはなんですか?」


 「これはメモリーキースロットですね。この中に自分が使用するWATSのデータが入っています。各人で普段から管理するので扱いは慎重にしなければなりません。スロットは二つあって、別機体のAIだけを流用する事もできます」


 「家のカギより大事ですね!このぶら下がってるネコのキーホルダーは……」


 「ああ!取材前に外そうと思っていたのですが……あまり見ないで下さい……」


 「ルミナちゃんはネコ好きなんですね!ウチのお兄ちゃんと一緒!あれ、もしかしてプレゼントとか……」


 「次!次に行きましょう!足元にはフットパネルが左右二枚ずつあります。踏み間違えないように突起のパターンが変えられています。左右にはサブモニターがありまして、これは味方機や敵機、防衛対象の状況などが表示されます。コントロールレバーの前にはAIモニターと情報共有モニターが備えられています。AIモニターは、戦闘を補助するAIからの情報などが自動的に表示されますね」


 「こちらは、レバーの図ですね」


 「そうですね。形は似ていますが使い方はそれぞれ別です。右レバーには武器の発射トリガー、そして親指部分に照準用のターゲットスティックがついています」


 「これで狙いをつけるんですか?」


 「はい、とは言っても大体の照準はAIが自動的にやってくれます。普段の戦闘では目標の切り替えなどにしか使いませんが、私みたいに長距離狙撃をする場合には重要な機器です」


 「なるほどー!んじゃこの左側のレバーはどう使うんですか?」


 「左レバーの親指部分にはウェポンセレクターレバーがあります。これを上下する事で武器が切り替えられます。左レ


バーの上側にはモニターがついていて、各武器の弾数などが表示されています。リロードが必要な時や弾切れ、故障等の異常事態もこちらに表示されますね」








 「今日はいろいろとありがとうございました。今まで知らなかった事ばかりでとても面白い内容になったと思います」


 「私達<センチュリオン>メンバーもなかなか情報の公開が出来ない為、このように一般の番組に紹介してもらえるのはありがたいことです。今後とも皆様のご理解とご支援をどうぞよろしくお願いいたします」


 (カット)


 「はぁ、大変だったねルミナちゃん。ありがとうございました」


 「カナちゃんこそ、急に代役で番組のパーソナリティ振られて大変だったね」


 「最近代役が多くって、なんか野球の外人バッターみたい。しかも特別番組なんて……でも楽しかった。ルミナちゃんのお陰で気楽にやれたし!」


 「私は、もうちょっと緊張感を持ってほしかったかなー……」


 「まぁまぁ、細かい事は気にしないで!今度また遊びに来てね!」


 「うん、しばらくはそんなに忙しく無さそうだから……」


 「そーなんだ!じゃ、これからまたレッスンだから!じゃあねー!」


 「……元気だなぁ」


 


更新が遅れ気味ですみません。

今回はメカ周りの資料をわかりやすく説明できればと思いこのような形になりました。

次回から本筋(一応この回も本筋に組み込んでいくつもりですが…)に戻ります。

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