Hello World
「初代勇者様“ギルバートン”様と創世の神子“アルネ”様お二人のご助力の元、我が国家エル・モルゲンに巣食う化け物 魔身“エルモニア”を封し、我々の御国を起こしたのです。」
王都の北西、スラムに近い場所に汚れた教会があった。この教会の象徴たる神像は極彩色のガラスから零れる眩い光を受けている。様々な色彩の中、室内は多少の花々と長椅子にピアノがある程度。清貧と言えば聴こえはいいが単に質素とも言える。
祭壇の前にいる司祭の男性が物語を語っている中、周りにいる他の子供達はそれを横聞きし、友達同士で話し合っている。
司祭の男性は今日の分を語り終えたようで、解散の合図を周りへ伝え始めた。体が痛い…そんな事を考え、動きたくないからか下を見て最低限周りの子供がいなくなるまで待つことにした。
周りの子達も少しづついなくなっていく中、皮の靴を鳴らし司祭の男性が近づいてくる。自分に向かって来てるのかなんて分からない中、なんだかその顔を直視出来ず、椅子の端に移動して目線を外す。
「初めまして、お名前はなんて言うのかな?」
「… 」
向けられる言葉に反応できないまままた顔を逸らし続ける、そんな自分に言葉をかけ続ける司祭。服を強くつかみ、謎の感情で逃げ出したくなり、席を立とうとした時司祭の後ろから声が聞こえる。
「ボスコさまぁー何をしているんですか?」
鮮やかブロンドの髪を靡かせ、司祭の背後から顔を覗かせる少女がいる。声に驚き少年はその少女と瞳を合わせる。少年の暗く褪せた紅色の瞳と、少女の鮮やかに澄んだ碧色の瞳が交差する。その場にいる3人の間に数秒ほどの間があった、その間を切り抜けたのは少女だった。
「初めまして、わたしはアグネス。貴方はなんて言うの?」
「あ… えっと… クロ… て呼ばれてる… 。」
「いい名前ね!ねぇボスコ様!彼と遊びに行ってもいい!」
ボスコと呼ばれた男はアグネスの勢いに押され自ずと良いよ、と言ってしまった。クロは自分の意思を答えられず、そのままアグネスに手を掴まれ、教会の外へと連れてかれた。
少女が小走りで連れていったのは中央広場と呼ばれるこの市街地の要所のひとつ、スラムに近いながらも多くの商人が露天を出し、食べ物や道具、装飾品を売っている。その最中には大きな噴水が有り子供はその周りで水をかけあったり、大人が下卑た商いに使ってたりしている。
「ふふん、この辺りはねぇ遊ぶのにちょうどいいんだよ?色々と見れるし、この当たりなら私は顔が聞くからね!」
太陽のように輝く笑顔で、ここはいい場所だよ。と紹介するように言葉を紡ぐ。掴まれた手はほんのりと暖かくて、この陽光と一緒に心が落ち着いて行く。
アグネスは色々な物をクロに見せ始めた、輝かしい装飾品、家事に使う道具、動物の肉や皮、中には子供が遊びながら自分の商品を売っているモノまである。色んなものを見ていくと店主の人達がアグネスに向け良く声をかけていた。『久しぶり、また買いに来てね』と言う大人と子供、それに律儀に毎回毎回返事をして楽しそうだ。
しばらく後、アグネスは青果店の店主から貰ったリンゴを分け合い、クロと一緒に中央広場の外れの裏路地の入口、その付近の木箱で食べあっていた。
クロがリンゴを食み、流れる果汁で頬を汚したり。アグネスが落としかけて慌てたりと2人で微笑ましくいた。
「ふふん、どう?楽しかった?」
「あんまり… よくわかんなかったな。」
「え〜私は楽しかったんだけどなぁ〜。 」
アグネスとクロはリンゴを食べ終わり、少しの間おしゃべりをした。今日連れてったところはどうだとか、どうして教会に来たのだとか、そんな話を続けてたら、もう夕方だ。地平線の先に見える赤色の煌々とした夕陽を背にアグネスがまたあしたの言葉をクロに向け、帰っていく。
クロはそんな彼女を見送り、一人で木箱の上に座ってる。プラプラと足を振り子のようにして、空を見ている。少し、少し、雲が動き、夜の蒼黒のベールが空を覆い、クロの見る先を無くしてゆく。
数分後、街の街灯には光が灯され、頬に仄かな火光が刺す、何分、何十分。どれ程の時間が経ったかは分からない、ただ昼から夕方までのアグネスとの遊びを反芻していた。
今日できた大切な記憶を思い浮かべ、微笑を浮かべながら夜の寒さに体を刺激され木箱の上から地面に足をつける。仄暗い街中、多くの大人が行き交いながらも、幼い少年が通る姿に疑問をだくものなどいなかった。
歩いていると昼間とは違う声が聞こえてくる、怒り狂う酔っ払い、他人を罵る仕事終わりの人間、武器を握り酔っぱらいを脅す傭兵、国や領主に文句を言う者たち。こんな者たちの声に身を竦め、見られないように歩く少年。
クロはある建築物の前で立ち止まる、でかい集合住宅、周りで女性達が声を貼り男を集めている。その姿を見ても気にせず、家の中に入っていくとランプの火にともされた廊下で女性の嬌声と男の乱雑な声が全体に走る。
とある部屋の前で、クロは壁に背中を預け時間が来るのまで誰にも見られないような小石の様に意識を殺し、ただ1人を待っている。一刻ほどの時間が過ぎ、腹の音がなり自分の空腹に気づいた頃部屋のドアが開き男が外へ出ていく。
その男の後ろには20代後半程の女性がクロを見て、冷たく入れと言葉をかけてくる。
「今日の飯は客が残した飯、それでいいでしょ?早く食って寝てね」
そうして、クロは自分を最低限しか見てない母の命令に従い、パンとワインを喉に通し眠りにつく。明日もまた教会であの少女に会いに行くと決心しながら。
初めまして小説家になろうの皆さん、私は非道井ヒトシと言います。
今後よろしくお願いします




