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夢子と筋トレと魔物の森について

「腕立てと腹筋を100回してから森に行って魔物を倒してこい。」


「「「はい!よろこんで!!」」」


 女メイド教師の命令に、メイド冒険者学園の1年生たちが一斉に答える。そして即座に、メイド服のまま両腕を地面に付けて腕立てを始める。(ちなみに執事服の男性もいるが、この世界ではまとめてメイドと呼ばれている。)


「ひぇぇ。」


 夢子は慌てて小さく悲鳴を上げると。他のメイドたちに合わせて腕立て伏せを始める。


 他のメイドがすさまじい速度で腕立て伏せをこなしていくのに対して、夢子の腕立て伏せは1回、1回とゆっくりしたものである。


 メイド冒険者には魔物と戦う力が最も求められる。そして、メイド冒険者に入学する者は元から実力に自信がある者たちであり、腕立てを素早く行うなど造作もないことだった。


 一方で、ごくごく一般的な身体能力しか持たない夢子にとって、腕立てを100回もするのは非常に困難なことだった。


 それこそ、夢子がメイド冒険者学園に来てから最初のうちは、腕立てを100回するまでに力が尽きて地面に伏していたのである。


 入学してからしばらく経った今では、時間を掛ければ回数をこなすことができるようになっていたが、それでも他のメイドたちとの差は大きいものだった。


 筋トレを終わらせたメイドたちが武器を携えて次々と外の森に向かう中で、夢子は1人残されて「ひぃ。ひぃ。」と悲鳴のような掛け声を上げていたのである。


 そしてやっとの思いで腕立てと腹筋を終えた夢子は、学園の訓練場として使われている、魔物が出現する森へ向かったのだった。




 夢子が森へたどり着くと、周囲からまき割りの音を鈍く大きくしたような、重い物体が何かにぶつかったような音が断続的に聞こえてくる。


 メイドたちが森の中で魔物と戦っているのだろう。


 実際のところ、訓練で使っているこの森は初心者向けの魔物しか出現しないのだという。なので、重たい剣やハンマーを振り回しているメイドたちにとってこの森の魔物は弱すぎるかもしれない。


 ではなぜ、メイドたちが弱い魔物を倒しているのかというと、それにはいくつかの理由があるのだという。


 まず、夢子たちは1年生なので、ある程度実力が備わっているとしても初心者向けの森で経験を積ませようというのが一つ。


 次に、魔物はどこからか出現してくるので、定期的に倒さないと魔物が増えすぎてしまうということ。


 最後に、生徒に魔物を倒させて魔物から出る魔石を回収し、魔石を売って得た資金を学園の運営に回すためだ。


 メイド冒険者学園は貴族からお金を受け入れているのだが、それで全ての運営資金を賄うことはできないらしく、生徒に魔物を倒させることで訓練のついでに魔石を集めさせているのだという。


 ちなみに、魔石を売ったお金は学園に全て回収されるわけではなく、ある程度メイドたちに還元されるので、筋トレなどの訓練と比べてメイドたちのやる気は高いらしい。


 そんなわけで、森のいたるところで武器を持ったメイド服と執事服の生徒たちが走り回っているのだが、夢子はあまり乗り気ではなかった。


 それは夢子の魔物との戦い方に原因があった。

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