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学園の部屋割りと、夢子の日記

(はぁ。今日もつかれた~。)


 訓練やメイドの仕事といった、メイド冒険者学園での長い1日が終わると、枕木夢子をはじめとしてメイド達にはその日に寝る部屋が割り当てられる。(その日と書いたが、部屋の割り当ては1日交替ではなく、1週間程度同じ部屋ということもある。)


 部屋には1人部屋、数人程度が泊まれる中部屋、十数人が泊まれる大部屋があり、部屋のキレイさなどもさまざまである。


 さらに、運が悪いと外でテントで寝ることになったり、テントもなく野宿をさせられることもある。


 割り当てについては、学年が上だったり成績が優秀な者ほど、1人部屋や質の良い部屋が割り当てられる可能性が高い。(このためか、夢子は1人部屋に泊まったことが1度もない)


 だが一方で、どんなに学園が上で成績も優秀なものであっても、野宿をさせられることもある。


 このことについて、成績が優秀でも野宿させられることに文句を言う者もいたが、


「お前それ外で魔物と戦っているときにも同じこと言えんの?」


 という女メイド教師ハリスの言葉と圧力によって、文句を言う者は一人もいなくなっていた。


 そうしたなかで、今日、夢子に割り当てられたのは4人が寝る部屋であった。


 それを知った夢子は、心の中で笑顔を浮かべる。


(今日の部屋は中部屋か、よし!ついてる。)


 中部屋で、夢子にはやりたいことがあったのだ。



 意気揚々と夢子が今日寝る4人部屋の前にくると、すでに他のメイドは部屋に入っているらしく、中から談笑するような声が聞こえてくる。


 夢子が扉を開けて部屋に入ると、部屋には四隅にベッドが置かれ、中央には大きくはないテーブルがある。


 そして、談笑をしていた3人は丸テーブルのイスに座っており、夢子が部屋に入ってくると談笑をやめて夢子に視線を集中させた。


「「「……」」」


「は、はじめまして。よろしくお願いします~。」


 無言の視線に耐えられず夢子が愛想笑いを浮かべる。


 しかしながら、3人は笑顔を受かべることもなく無言でお互いに目配せをするようにする。


 そして、目配せの結果誰が口を開くのか決まったのか、そのうちの1人が夢子に興味のなさそうな口調で話しかけた。


「ふ~ん、そう。あんまりうるさくしないでね。」


「はい~。」


 夢子は従順な返事をするが、3人はとくに反応することもなく3人での談笑を再び始めた。


(まあ、仲良くしてもらえるとは思ってなかったし、にらまれるよりかは無視の方がいいか。)


 夢子はメイド冒険者としての能力が明らかに低いためか、他のメイドから友好的な態度をとられることがあまりない。


 このため、今のように同じ部屋で一緒になるメイドから無視されることもよくあることなのだ。


 それについて夢子は少し寂しさを感じていたが、一方で夢子は元の世界では成人していており、学園のメイド達とは文字通り大人と子供ほどの年齢差があることから、それほど心に傷を負うことはなかったのだった。


 夢子は空いているベッドにいそいそと移動すると、ベッド下に用意された荷物かごに手荷物を入れてベッドに入る。そして仰向けになると、目をつぶり眠るようにした。


 部屋の3人は、ベッドに入るなり眠り出した夢子を少し観察していたようだったが、またすぐに談笑に戻ったようだった。


 だがもちろん、夢子は眠っていたわけではなく、それどころか眠るつもりもなかった。


 夢子が眠るふりをしたのは、3人の注意が自分に向かないように油断させるためだった。


 夢子はベッドに入る作業をしながら、テーブルにいる3人の位置を把握していた。


 そして夢子は目をつぶったまま、3人に向けて催眠魔法を小さく掛けた。


 それは眠らせるほど強くなく、睡魔を感じるくらいの強さである。


 夢子が魔法を掛け始めてから3分もたったくらいだろうか、


「ふぁ~あ。」


 3人はそれぞれ、あくびや目をこすりはじめる。そして、他の動作をするのも面倒くさそうにノロノロとイスから離れると、テーブルのランプを消してベッドに潜り込んでいったのだった。


 それからすぐに、3つの寝息が部屋から聞こえてくる。


「……」


 3人の寝息を耳で確認すると、夢子は無言で上半身を起こした。


 ランプの灯が消えた部屋はうす暗くなっていたが、夢子は先ほどから目をつむっていたので薄暗闇の中でもある程度目が効いていた。


 夢子は薄暗闇の中で3人を目視すると、先ほどの睡魔程度の催眠魔法ではなく、本当に眠らせるための催眠魔法を掛けなおしていった。


(これで3人とも完全に眠ったはず。)


 3人が眠っていることを確認すると、夢子はベッド下に入れた荷物から小さなメモ帳とペンを取り出した。


 そして、文字を判別することが難しい薄暗闇の中で、目と歯を食いしばるようにしながらメモ帳に文字を書き始める。


 その小さなメモ帳は夢子の日記帳だった。


 夢子は日々の出来事や仕事の事、この世界の常識などを日記帳に書き込んでいたのだ。


 可能なら明るい日中に日記帳を付けたいところだが、日中は訓練やメイドの仕事で忙しいため日記を付ける時間がない。


 このため、時間がとれる夜に日記を付けようと考えたが、他のメイドの様子を見ていると、日記を付けているメイドは一人もいないようだった。


 そんな中で夢子が日記を書き始めたら、おそらくかなり目立つだろう。


 すでに悪い意味で目立っている夢子としては、これ以上悪目立ちしたくないという思いがある。


 夢子は人目を避けて日記を書く方法を探していた。


 そして夢子が考え出したのが、中部屋が割り当てられたときに同部屋のメイドを眠らせて、他のメイドに気づかれず一人で行動する方法だったのである。(大部屋では眠らせる人間が多すぎて不自然さが出るし、一人部屋は割り当てられたことがない。)


 4人がいるはずの部屋の中で、一つの物音だけが部屋に響いていた。

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