エピローグ
月曜の昼休み。
教室の空気は、いつも通りほんわかしてる。
でも、どこか違っていた。
窓から差し込む光が、少しだけ誇らしげに見えた。
「颯、完走したんだって?」「タイム、2時間ちょいらしいよ」
「マジで?あいつ、体育“3”だったのに」「葵の弁当、ガチだったんだな」
陽太が笑いながら言った。
「お前、次はフルマラソン?それともトライアスロン?」
「いや、まずは“ちょっと走ってみる”の延長戦だって」
翔太が分析口調で言う。
「でもさ、完走って、やっぱすごいよ。俺、ちょっと感動した」
結衣が葵に話しかける。
俺は、いつもの席で弁当を開ける。
今日のメニューは、完走祝い仕様。
鶏そぼろと炒り卵の二色丼、ほうれん草のナムル、いちご。
「…なんか、俺より弁当の方が祝われてない?」
「うるさい。今日は“栄養と彩りの勝利弁当”だから」
「ネーミングセンス、料理部っぽいな」
「でしょ?」
放課後、颯は科学ノートの最後のページを開いた。
そこには、こう書かれていた。
《世田谷ハーフ完走。タイム2時間12分。心拍ゾーン維持成功。弁当最強。俺、ちょっと走ってみてよかった。》
葵は、料理部のレシピ帳に「ハーフマラソン応援弁当・全5週分」をまとめていた。
最後のページに、こう添えた。
《好きな人が走るなら、私は弁当で支える。それが、私の青春だった。》
そして、まだ見ぬ読者に向けて──
あなたが、ちょっと走ってみたくなる瞬間は、どんな時ですか?




