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プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ・プロローグ

「そう……ですね。おおむね、よろしいかと」


「いや……まだやれることはある……!」


 今までシンプルに「へへ、負けました~」とやっていたが、もっと哀れにできるはずだ。

 培ってきた演技力をフルに活かし、負けた瞬間によだれや涙やあらゆる液体をまき散らしながら「許してくださいぃ! 降参しますぅ!」と叫んでみる。靴とかも舐める。

 ループから抜け出したすぎて、恥ずかしいという気持ちすらわき上がってこない。……壊れ始めているのかもしれなかった。

 

 ループ。


 …………やはり、負け際にこだわるのはコンセプトから考えて間違っていない気がする。

 別のベクトルから攻めてみよう。


「――オレは親父を憎んだ。だがそれ以上に、無力なまま死んでいった母が憎かった……。

 それが“愛”だと、ずっと信じていた。信じるしかなかった。

 オレはなにか間違っていたのか……? オレは、どうすれば――どうなれば、ここで生きて良いと許された……?」

 

 負ける直前に、悪役の悲しき過去(創作)を語ってみる。

 試行錯誤した結果、十回目くらいで観客が鼻を啜る音が聞こえてきたし、なんならセロくんもちょっと泣いていた。悪役冥利に尽きる。

 が、これも結局ループ。

 


「そう……ですね。おおむね、よろしいかと」


「いや、むしろ道中……バトルにインパクトが必要か?」


 というわけで見た目重視で“大魔術”を使ってみるが、セロくんの“打消し”であっけなく消滅。

 ループ。

 

 訓練場で待機し限界まで魔術を組み立て、足を踏み入れた瞬間に不意打ちで放ってみる。

 魔術障壁が消し飛ぶんじゃないかと思うくらいのものができたが、“打消し”で消滅。

 ループ。

 ……というか、セロくんの対魔術師性能高すぎだろ。さすがにアンブレラはセロくんに勝てるんだろうが……どうやって勝つのかが想像できない。

 

 

「あの……アルター=ダークフォルトくん。

 そ、その剣は……?」


「安心しろ。決闘訓練の規定に則り、殺傷能力はない」


「う……うん。そうだけど、ね……?」


 セロくんが目を逸らし、観客がどよめくのも無理はない。


 なぜなら、俺が手に持っているのは木剣ではなくエログッズ……。

 “ヤリイカのペペロンチーノ”に入っていた“謎の棒”だからである。


「行くぞッ!! ちんちんブレード!!」


「やっぱりちんちんじゃん!!」


 セロくんが悲鳴をあげる。

 が、なんやかんやで負け。

 そして、結局ループ。


 これ以上のインパクトは出せない――

 




「そう……ですね。おおむね、よろしいかと」


「いや、まだ……」


 ――そうだ、まだインパクトを残せる。

 そうだな……いっそ全裸でいくのはどうだろう。


 ルネリアが部屋から退出した後、鏡の前で服を脱ぐ。


 見違えるほど筋肉がついていたし、そういえばいまや疲労も筋肉痛もあまり感じないが、どうでもいい。

 “ヤリイカのペペロンチーノ”から“棒”を取り出し、構えてみる。


「まだいけるな……」


 “ヤリイカのペペロンチーノ”をさらに漁る。“年齢別膝小僧図鑑(カラー版)”を左手に、“謎の赤い布”も頭に装備してみる。


「おお……」


 さすがにインパクト抜群だ。

 名付けるなら「ちんちんの魔術師」……いや、「裸のちんちん術師」のほうがそれっぽいか? 街中に出現したら三秒で討伐対象にされるだろう。“二つ名持ち”の冒険者たちが大挙し、あっという間に囲まれる様子が容易に想像できる。もちろん俺は抵抗するが? このちんちんブレードで。……そうだ、こういう奴が実は悲しい過去を持っていたら革命が起きるんじゃないか? 過去は長尺で語ろう。たくさん語ろう。観客は泣くだろうか、驚くだろうか、しらけるだろうか、笑うだろうか。それとも――。




 それとも。




「…………あ……?」


 なんか見づらいな、とは思っていた。

 目のピントが合わない。面白すぎる格好だからか? そんなことも思った。

 だが、真実はなんのことはない。

 

 泣いていたのだ。

 目に涙が溜まる。見づらくなる。ただそれだけ。

 ただそれだけがきっかけで、


「――――ちくしょう!!」


 俺は爆発した。


「いつ!!! 抜け出せるんだよ!!」


 手に持っているものを全て鏡に投げつける。


「どうやって!! なんで!! なにが!!」


 頭に被った布を叩きつける。

 暴れてめちゃくちゃにしたかった。

 どうせ元に戻る部屋のものたち。どうせなかったことになる時間。

 めちゃくちゃになって欲しかった。


 分かってる。

 それでも――きっと円環状の次の日はやってくる。


 六時には素振りをしているアイナを俺は六時半ごろに訪れ簡潔に予定をすりあわせてルネリアは七時二分にやってきて大抵入れ違いになるがパンとスープと野菜のプレートを置いていってくれて授業が始まるが剣術の授業以外はスルーでもよくて昼食は最近は食べる気がしなくてそれから剣術で決闘で、

 

 ルネリアが言う。


 ――そう……ですね。おおむね、よろしいかと。


「……うっ……くっ……」


 何度も“今日”と“明日”がやって来てまた同じ“今日”と“明日”がやってくる。

 ルネリアにいくら窮状を訴えてもそれは通じない。どころか、明日七時二分にここに来るルネリアは、もしかしたらこの部屋の惨状すら“無いもの”として扱うかもしれない。



 一切の異常は伝わらない。

 アイナにも、誰にも。

 それが、なによりも辛かった。

 ひとりが嫌だった。



「は…………ははは……」

 


 俺の心は折れた。

 とっくに折れていた。


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