万華鏡のように
万華鏡は鏡を組み合わせて幾何学的な模様を見せる道具です。
長方形の鏡を三枚、正三角形になるように並べて、筒形の容器にいれたものが一般的です。
万華鏡は、鏡を直角三角形に置くものや、鏡が二枚だけのもの、円柱の内側を鏡にするものなどもあります。
その森ではクスノキが並んでいる。めしべの大きな小さい花が咲いている。
木の根元に小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には、柏餅が乗っている。
皿の横には湯気のあがる湯呑も置かれていた。
「んとね。白猿さん。ネットのニュースの話だけどね。災害で水道が断水した町で、それまで使えなくなっていた井戸を再活用しているのを見たの」
「災害時の井戸の活用はありだな。水は溜まってて単に使わなかっただけの場合と、水が枯れてるとか埋められてるなどで、掘りなおす必要がある場合もあるな。いずれにしても、飲めない場合が多いかもな」
「んとね。飲むのには適さない場合でも、洗濯とか掃除には使えると思うの」
「そうだな。手や顔を洗ったり、布で身体を拭く清拭にも使えるぜ。トイレを流すのにも使えるかも。火災が起こった時の消火用や農業用にも使える。沸かせば飲める品質の場合は料理にも使えるぜ。いずれにせよ、井戸があれば飲料水の節約になるな」
「井戸水っていろいろなことに使えるんだね」
「ただし、枯れ井戸を再活用する場合は注意点もあるぜ。水が完全になくなっている可能性もあるし、地域によっては地下水が汚染されていることもあるんだ。使う前にプロによる水質検査は必要だな。ポンプや配管が損傷していることもあるしよ」
「んとね。井戸って、ロープをつけたバケツを垂らしてくみ上げるわけじゃないよね」
「普通は手押しポンプを使うぜ。レバーを上下させると管の中が真空になって水をくみ上げられるんだ。弁に水が溜まってないと汲めないから、最初に少し、管の中に水をいれておくんだ。この水を『呼び水』という。何かのきっかけになる『呼び水』の語源だな」
「ポンプの先はどうなっているの?」
「金属や塩化ビニルの水道管が入っているぜ。水道管の一番下には無数の穴とかスリットが開いている。先端は槍状になっているんだ。枯れ井戸の場合でも、これを水の出るところまで深く刺せばいいんだ」
「パイプの長さが足りなくなるとどうなるの?」
「同じ太さの水道管を継ぎ足せるようになっている。一気圧では理論上では十メートルの深さの水を汲みあげられる。まぁ、実際に通常のポンプで使えるのは五メートル程度らしいけどね」
「んとね。スリットのある先端の水道管の中を覗いて見たら、いったいどんな風に見えるのかな」
「光の入るところでその水道管を覗いたら、同心円の模様が見えるかも。円形の万華鏡みたいなものだからよ」
「面白そうだね。一度見てみたいの」
「今回は枯れ井戸の再活用に焦点を当てた話題だったな。これがほんとの枯れ井戸焦点」