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セカンド・ジェネレーションズ 〜逆襲の二世男子〜  作者: あゐおゐ ゑゐる
エピローグ 「Intermission」

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06-66

 西島マタイチロウは内閣総理大臣専用車に運ばれ、国家財政管理庁の庁舎に到着する。

 内閣総理大臣秘書官である若い男と共に車を降りて建物の中に入ると、厳重なセキュリティを顔パスで通過し、警備員に見送られた二人は複雑な造りの通路を深く、奥まで進んでゆく。


 辿り着いたのは、人気の無いデッドスペース。

 有るのは、電源の入っていない古びた業務用エレベーター。


 秘書官はスーツの内ポケットから鍵を取り出すとエレベーターの右側に立ち、戸枠の鍵穴に鍵を刺す。

 同様に、マタイチロウはエレベーターの左側に立ち、自身で所持していた鍵を戸枠の鍵穴に刺す。


「総理、スリーカウントでお願いします」


「あぁ」


「それでは参ります。さん、に、いち」


 秘書官の合図で二人は同時に鍵を回す。

 起動する業務用エレベーター。


 チーンと古ぼけたベルの音が響き、ゆっくりと扉が開く。

 二人は籠内に乗り込むと、マタイチロウは操作ボタンの上部に設置されているカメラ付きの機械に顔を近付ける。


 虹彩認証。

 瞳の虹彩の模様を読み取り、予め登録されている人物本人か否かを確認できる生体認証技術である。


 虹彩の主を西島マタイチロウであると認識した機械はエレベーターの扉を自動で閉じ、籠はゆっくりと下に向かう。

 元いたデッドスペースは庁舎の地下階。


 そこから更に深い地の底へと下りてゆくのである。

 エレベーターが止まり、扉が開くと、二人の目の前にはトンネルのような薄暗く長い通路が現れた。


 壁や天井はコンクリートの打ちっ放し。

 足元が見えるように、小さな灯りが等間隔に設置されている。


 粛々と通路を歩く二人。

 時間にして一時間。


 通路の終わりに存在していたのは、壁に埋め込まれている小さな鉄扉であった。

 扉の横にはスキャナーが設置されており、マタイチロウは右手をかざす。


 スキャナーが読み取ったのは、手に埋め込まれているマイクロチップ。

 読み取り成功の合図で緑色のライトが光り、扉が開く。


 奥には開けた空間があり、音楽が流れていた。

 聞こえてくるのはタルティーニ作曲、悪魔のトリル。


 マタイチロウと秘書官が扉を抜けると、空間の中にはいくつもの円卓が疎らに置かれており、それぞれの席にはスーツを着た男の老人が着座していた。

 全員、齢七十は優に超えているであろう。


 中には八十、九十代と思しき老人も散見された。

 卓の上には豪勢な食事と酒が並び、老人たちの両隣には面積の少ない水着を着た若い女が座る。


 マタイチロウが進んで来た通路と同様に辺りは薄暗く、目を凝らせば老人たちは女の胸や尻を好き放題に弄っていた。


「来たか、西島。座れ」


 どこからか嗄れた男の声が聞こえる。

 声と同時に天井のスポットライトが光り、空間の真ん中にある円卓が照らし出される。


 その円卓には誰も着席しておらず、マタイチロウのための席であることが暗に示されていた。

 秘書官を入口の脇に残し、促されるままにマタイチロウは歩を進め、照らされた卓の椅子に着座する。


 するとすぐに際どい水着の女が二人現れ、それぞれが持って来た料理と酒を卓上に置くと、マタイチロウの両隣に座る。


「……どうも」


 マタイチロウは小さく礼を言い、軽く頭を下げた。


「で、まず最初に何か言うべきことがあるんじゃないかね? 西島よ」


 再び嗄れた男の声。

 緊張で肩を竦め、マタイチロウは慎重に言葉を選び出す。


「……此度も藤原ルイの捕獲に失敗し、誠に申し訳なく思っている次第でございます」


 マタイチロウは頭を下げ、全身に嫌な汗を掻く。

 脇の下にまで汗染みを作り、スーツの灰色が濃くなる。


「この、たわけめ。せっかく公安から仕入れた情報を流してやったというのに、しくじりおって」


「……申し訳ございません」


「一度ならず二度までも藤原ルイを逃し、今も尚こんこんと貴様ら政治家や大企業の暗部を晒され続けておる愚か者めが。いつまでも総理の座についたままでいられると思うでないぞ、西島」


「……はい」


「そして自由勤民党がいつまでも与党であり続けられるとも思うでない。儂らは政党など、どこでもよいのだからな」


「……はい」


 失態を責められ、小さくなるマタイチロウ。


「おい、小童」


 別人の嗄れた声。

 先程より低い音域で、ドスが効いている。


「テレビ局やブンヤには規制を掛けているんだろ?」


「はい、勿論でございます」


「なら何故こんなにもホイホイとスキャンダルを報道をされているのか? 訳を言え」


「……二世会です」


「あ?」


「テレビ局や新聞社にもイルミンスールの二世信者が数多くいるのです。しかも皆そこそこの年齢で、そこそこの役職に就いております。スキャンダルの報道にゴーサインを出しているのが二世会の人間だったようで、規制が意味を成さず、我々は後手に回らざるを得ず、このようなことに……」


「週刊誌も同じか?」


「左様にございます」


「なるほど。イルミンスールを長く活かし過ぎたようだな。飼い犬に手を噛まれるとは、まさにこの事」


「はい」


「で、そいつらは始末したのか?」


「は?」


「は? じゃないぞ、西島。早急に消し給えよ、そんな輩は」


「しかし、いくら二世会と言えども奴らはイルミンスールの信者です! 迂闊に手を出し、イルミンスール本体を敵に回そうものなら、藤原ルイの比ではない量のスキャンダルが暴露されてしまいます!」


「そこをどうにかするのが君の仕事だろう。君がやったということが分からなければいいだけの話じゃないのか?」


「ですが、それは余りにリスクが高過ぎます。イルミンスールの教祖の妻である藤原ナミが独自に動いているという情報もありますし……」


「では、このまま彼奴らを放っておくというのか? 好き放題させておいていいと思うのかね? それで状況が好転するとでも?」


「いえ、それは……」


 ここでまた別の嗄れ声が割って入る。


「まぁ、もういいじゃないの、その件は。埒が明かないから、この辺で終いにしよう」


「……そうですか。あなたがそう言うのであれば」


 と、ドスの効いた低音は引き下がる。


「さて、西島よ。お前さんが二世会に対して無力だということはよく解った」


「……返す言葉もございません」


「そんな無力なお前さんではあるが、現職の総理である限りは情報を与えておかねばならんのよ。大国についてね」


「大国……、外交のお話ですか?」


「大国の次期大統領であるトマス・ケインは、隣国を仮想敵国とする公約を掲げている過激派でね。自国ファーストを声高に語りつつ、隣国由来のディープステートを全て解体すると宣言しているのさ」


「それは、我が国ではイルミンスールが対象になっているということでしょうか?」


「お前さん、鈍いねぇ。イルミンスールだけじゃないよ。自由勤民党も、僕らも対象に入っているのよ」


「まさか、時の政府や省庁までディープステート扱いですか?」


「そうゆうこと。だから大国に好き放題させないような政策を頼むよ、西島」


「……か、畏まりました」


「それから引き続き、二世会の抑止力となるような法案作りにも邁進してくれ給え」


「……仰せの通りに」


「あ。あと、今まで通り増税もよろしくね。ステルスなやつをさ」


「……はい」


 〈酒池肉林〉と名付けられた、この会合に集まる老人たちは、国家財政管理省の現役官僚、及びOBである。

 省の名前の通り、国家予算の全てを取り仕切る役割を果たしている。


 というのは表向きの話。

 その実態は、国民からいかに金を巻き上げ、自分たちがいかに甘い汁を啜れるかということを考えて行動する組織である。


 賄賂、中抜き、ばら撒き、キックバック。

 国民は彼らの財布であり、税金を湯水のように使う。


 国家予算の全てを牛耳っていることから、政治家の大半は国家財政管理省の言いなりであり、オールドメディアや天下り先の企業も支配下に置かれている。

 この省は実質的に、この国の支配者。


 自分たちさえ良ければ、それで良い。

 国民が苦しもうが、国家が衰退しようが、知る由もない。


 罪の意識などは皆無。

 必要とあれば邪魔者を容赦なく排除し、どんな罪をも無かったことに出来る程の権力を持つ。


 国家財政管理省の実態を知る者は、彼らを〈罪無省〉と呼ぶ。

続編


セカンド・ジェネレーションズ 〜The 2nd Half〜


2025年12月25日 投稿開始


https://ncode.syosetu.com/n3366kd/

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