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セカンド・ジェネレーションズ 〜逆襲の二世男子〜  作者: あゐおゐ ゑゐる
第6章 「罪と罰」

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06-07

 自由に身動きが取れなくなったシズヤは、がくんと頭を垂れる。


「大丈夫ですか?」


 ルイはシュンサクに近寄り、その身を案じる。


「大したことはない。――ってカッコつけたいところだけど、正直めちゃくちゃ痛い。痛くて痛くて死にそうだ……」


 シュンサクの顔から血の気が引き、一気に青白くなる。

 呼吸は浅く、速い。


「貧血ですね。もう少しだけ踏ん張ってください」


 ルイは右肩で、シュンサクの左肩を支える。

 手助けを求めるために周囲を見回すと、シュンサクを追って来たのであろうチヒロがバルコニーに立っていた。


 いつの間に――、とルイは思う。


「チヒロ君! 肩を貸してくれないか?」


「……あぁ、今行くよ」


 ルイの声に反応したチヒロは振り向き、二人に近付く。

 左肩でシュンサクの右肩を支えるチヒロ。


 三人はゆっくりと歩き、慎重に階段を降りる。

 見渡せば、地上で争っている人間の三分の一ほどは道路に倒れ、乱闘の規模は最初に比べて小さくなっていた。


「おい、手伝え! 抜け出すぞ!」


 階段の下で戦いながらケンジが叫ぶ。


「チヒロ君。ちょっと重いけど、織田さんは任せるよ」


「了解」


 ルイはシュンサクの肩からゆっくり抜け出ると、柵に手を掛けて階段から飛び、地上のチンピラを背中から踏み潰す。

 そしてそのままケンジに加勢すると、敵を倒してゆく。


「渡部さん! 流石にこの人数はキリが無いのでは?」


「仲間を呼んだ! 間もなく迎えが来る!」


 どこからかパトカーのサイレンの音が近づいて来る。

 音の数は、複数。


「おいおい、治外法権じゃなかったのか?」


「警察は手を出さないって話だろが! どうなってる?」


「こっちはチャカ弾いちまってんだ! 捕まりゃムショ行き確定だぞ!」


 戦うことに必死であったチンピラや黒スーツは動揺し、公権力には敵わないことを身に沁みて知っているからこそ、大いに狼狽える。

 怪我の程度が低く、体の自由が利く者たちは、我先にと蜘蛛の子を散らしたように乱闘の場から逃げ出し始める。


 しかし、それでも諦めない者もいた。

 お上から降りてきた特命の重要度を理解し、逮捕される危険を顧みずにルイを捕まえようと、或いは殺そうと奮闘しているのである。


 それは彼らが、今が千載一遇の好機であることを知っているが故の英断。

 ここで逃せば、次は無い。


 再び雲隠れをされてしまえば、今度こそルイを見つけ出すのは至難の業であると考えてのことであった。


「怯むな! 逃がすな!」


「追え! 捕まえろ!」


「警察なんぞにビビってんじゃねぇぞ!」


「教祖野郎を殺しちまえ!」


 ルイたちが居た建物を背に、右手約三十メートル先の丁字路。

 赤色灯を回したセダンの覆面パトカーが二台停止する。


 勢いよく扉が開き、中からスーツ姿の男四人が拳銃を構えながら車を降りる。

 うち一人は背の低い小太り。


 ケンジの部下の到着である。


「警察だ! 動くな! 両手を上げて地面に伏せろ!」


 銃を向けられたチンピラたちは指示に従い、地面に膝を着く。

 しかしルイを諦めない者たちと、言葉が分からないメロメ民族は戦うことを止めない。


「Don't mind! Don't stop fighting!」


 ルイの言葉を聞き、メロメ民族は怯んだ敵に追い討ちをかける。

 旗色は一気に変わり、軍配はメロメ民族側に上がった。


 しかし、それでも尚、形勢逆転を狙う者もいる。

 最後まで抵抗するのは黒いスーツの男たち、十人ほどである。


 ケンジの部下たちに近寄り、銃を構えて対峙する。

 銃口の向く先は、小太り。


「どうせ撃てへんやろ、子豚ちゃん」


 パン!


「うぐぉあっ――!」


 黒スーツの男がきっちり照準を合わせる前に、小太りはあっさりと引き金を引いていた。

 男は撃たれた右腕を抑えながら跪く。


「警察舐めんな」


 小太りは無表情で小さく呟く。

 他のスーツの男たちはその光景を目の当たりにし、実力差をまざまざと見せつけられる。


 自分たちに勝機が無いことを察すると、男たちは大人しく指示に従うことにした。

 各自銃を捨て、両手を頭の後ろで組み、地面に跪く。


 そして始まるメロメ民族によるリンチ。

 無抵抗となったチンピラや黒スーツを殴り、蹴り、これでもかと痛めつけてゆく。


 轟く罵声。

 響く怒号。


 流れる血。

 仲間が殺されて怒りが収まらないメロメ民族によって、凄惨な状況が作り上げられてゆく。


「行くぞ」


 ケンジはルイ、チヒロ、シュンサクを引き連れて、パトカーへと歩いて行く。

 一台の後部座席にはチヒロとシュンサクが乗り込む。


 もう一台の後部座席の扉を開き、ケンジがルイのエスコートをするが、ルイは振り返りメロメ民族に向かって深々と頭を下げる。

 しかし、もはや誰もルイのことを気にしてはいなかった。


 メロメ民族の関心は、目の前の敵を如何にして苦しませるかということにしか向いていなかったのである。

 頭を上げたルイとケンジは車に乗り込み、その他ケンジの部下も車に戻る。


 最後まで警戒をしていた小太りは、その場にあるチンピラたちの車全てのタイヤを首尾良く銃で撃ち抜き、パンクさせてゆく。

 銃声に唖然としたメロメ民族を尻目に、小太りも車に乗り込んだ。


 屋根のパトランプを収納すると、二台の覆面パトカーは静かに走り出す。

 そして暫くの後、遠くからパトカーのサイレンが鳴り、メロメ民族街に近づいて来る。


 地元の警察が一足も二足も遅れてやって来たのである。

 騒動の全てを、闇に葬るために。




◇◇◇◇◇




 この出来事は結局、翌日のニュースで取り扱われることとなった。

 ネットニュースやSNSのみならず、報道管制が敷かれている地上波のテレビや新聞でも報道されたのである。


 しかし、真実は語られない。

 ルイやチヒロの名前は勿論のこと、シュンサクやケンジが所属する警察の「け」の字すらも登場することはない。


 違法で悪質な移民であるメロメ民族と、国粋主義を謳う右翼団体による諍いに過ぎないという内容が流布されたのである。

 死者や負傷者の有無すらも不確かであり、報道の規模は極めて小さなものであった。


 その筋書きを描き、情報統制を主導しているのは総理大臣である西島マタイチロウと自由勤民党、そしてイルミンスールである。

 また、警察内での根回しは、織田シンジを始めとする警察官僚によって実施され、不都合な真実は隠蔽されることになった。


 こうして全てが闇へと葬り去られる。

 深く、淀んだ、闇の中へと。


 しかし一週間後、その闇を照らすようなスキャンダルが世間を賑わせることになる。

 それは、自由勤民党の議員複数名が過去の選挙において不正を働き、得票数を意図的に改竄したという内容であった。


 取り沙汰されたのは不正を疑われた議員たちの、とある共通点。

 それは、議員たちとイルミンスールとの間に強い相互協力的な関わりがあるということ。


 そして不正が発生した地区の選挙管理委員会上層部に、イルミンスールの信者が紛れ込んでいるということであった。

 まず週刊誌から暴露されたのは、イルミンスールの教祖であった藤原ナユタと不正議員とのツーショット写真。


 イルミンスールの会合や講演会で、議員たちが演説をした際に撮影されたものと報じられている。

 その中には、西島マタイチロウの姿もあった。


 そして以前に暴露された政治資金パーティーのチケットの売却先に、イルミンスールの信者が数多く含まれているという情報が顧客リストと共に流出した。

 更に追い討ちをかけるように、不正議員が得たキックバックの一部が選挙管理委員会の信者に、商品券という形で賄賂として渡されているという情報までもが暴露された。


 議員たちが言い逃れの出来ない状況。

 マネーロンダリングに対する世間からの冷たい風当たり。


 これらは全て、藤原ルイと二世会の仕業である。

 以降、数カ月に渡り、週に一度のペースで様々なスキャンダルが世に出回り続けた。


 ルイが再び公に姿を現す、その日まで。

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