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セカンド・ジェネレーションズ 〜逆襲の二世男子〜  作者: あゐおゐ ゑゐる
第5章 「愛と誠」

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05-02

 両手でこめかみを抑え、蹲るカズシゲ。


「そうよ、カズシゲちゃん。笑っている場合ではないわ」


 カズシゲは怯えながらも、抑えた指の隙間からマタイチロウとエマを交互に睨む。


「何だ、その目は? 誰のお陰でこんな贅沢な暮らしが出来ていると思っているんだ? えぇ?」


 マタイチロウはカズシゲに近寄り、見下す。

 カズシゲは尚も反抗的な視線を送り続けた。


「人がせっかく議員にしてやったというのに、調子に乗って馬鹿な写真をSNSに上げたのを忘れたか! そんなもの、国民どもの反感を買うに決まっておろうが! この愚か者めが!」


 容赦の無い叱責には訳がある。

 数ヶ月前、カズシゲは官邸に友人を呼び、飲み会を開いた。


 そしてあろう事か官邸内で記念写真を撮影し、SNSにアップロードしていたのである。

 その陽気な姿を写した投稿は当然のように炎上し、一時期メディアを賑わせるに至った。


 後に責任問題を追及されたマタイチロウは、自由勤民党の議員であったカズシゲを更迭したのである。


「……ちっ、反省してるっつーの。その話はもういいだろ……」


 反省の色を微塵も見せず、カズシゲは口ばかりの謝罪をする。

 それを聞いたマタイチロウの額には血管が浮かび上がり、眉間がピクついた。


「カズシゲ、いいか。暫く大人しく私の言うことだけを聞いていろ。熱りが冷めて、国民どもがお前の愚行を忘れた頃合いを見計らって、お前を私の秘書にしてやる。それまで騒ぎを起こさず、私の指示に従うんだ」


「へいへい」


 政治家の息子として甘やかされてきた弊害。

 カズシゲは立派な放蕩息子に育っていた。


 総理大臣という権威をもってしても庇い切れない炎上に対する怒りに、息子からの反抗的な態度に対する怒りが積み重なる。

 息子に再び暴力的制裁を下し兼ねない状況を見兼ねたエマは二人の間に割って入る。


「あなた、もうよしてくださいな。キリが無いわ。そんな話をするために家族全員を呼び付けた訳ではないんでしょう?」


 マタイチロウは荒げていた息を整え、震える手を強く握る。

 押さえつけていた怒りは深呼吸と共に吐き出された。


「いいか、お前たちに集まってもらったのは他でもない。例のニュースについてだ。何者かが、何某かの意図を持って、我々に宣戦布告をしている」


「ニュースって、ソーラーパネルの? 宣戦布告って、何のことかしら? よくある週刊誌のスッパ抜きではないというの?」


「ありふれたスッパ抜きならどれだけ良かったか。しかし、これからまだまだこの手のスキャンダルが出てくるぞ」


「他にも何か世間を騒がせるようなことがあるの?」


「無い訳がなかろう! 沢山ある! 腐るほどある! お前にも心当たりがあるだろう! 大企業との癒着! 税金の着服! パーティー券のキックバック! そうやって自由勤民党は第一党の座を手に入れ、長いこと政権を維持してきたのだからな!」


「そう。それは知りませんでした」


 素知らぬ顔で、しらばっくれるエマ。


「明言していないからな! わざわざそんな事を口に出す馬鹿もおるまいて! しかし、こうなってしまった以上、我々は早々に手を打たねばならない!」


「どうするおつもりですか?」


「藤原ルイという男を見つけ出すんだ。お前たちにも独自のコネクションがあるだろう」


「藤原ルイ? はて、どちら様?」


「イルミンスールの教祖の息子だ。奴が教祖を殺し、建物に火をつけ、雲隠れをし、我々のスキャンダルを流している可能性が非常に高い。いや、むしろ、その可能性以外あり得ない」


「あぁ、思い出しましたわ。昔、イルミンスールの講演会に招かれた際にお会いしたことがあります。確か、おかっぱ頭の男の子ですよね。それで、居場所の手掛かりはありまして?」


「無い。が、イルミンスールの情報は教祖の妻から提供されている。警察と公安の捜査情報も本庁から逐一報告が入る。それらの全てを駆使して、是が非でも藤原ルイを見つけ出し、捕まえるんだ。いいな?」


 エマはミキオと目を合わせ、首を傾げる。


「そんなもの、そのまま警察や公安に任せておけばよろしいのでは? 私たちが何かをするまでもないかと思いますけど」


 危機感ゼロ。

 事態の深刻さに気が付いていないエマの余裕綽々な態度に、マタイチロウは再び大きな溜め息を吐いた。






「という訳で、父さんから手に入れた情報は全て渡した。それを手掛かりにルイの捜索を継続してくれ」


 マタイチロウの部屋から自室に戻ったミキオは早速、シズヤに電話で指示を出した。


「いやいやいや、無茶振りが過ぎる。俺は探偵じゃねぇ。この広い世界の中から人ひとりを見つけ出すってのは容易じゃないぜ?」


「国外に出た記録は無い。高飛びが出来ないように、空港は真っ先に手を回したからな。少なくとも国内に潜伏している」


「国内つっても、それでも広いだろうがよ」


「そう言うと思ってな。お前が捕まえた二世会の二人の素性が判明した」


 シズヤは二人を捕まえた後、所持していた身分証明書から得た情報をミキオに送っていた。


「素性? あいつらただの信者じゃねぇのか?」


「一人は背乗りの外国人だ。公安のデータベースから見つかった」


「背乗り? 何だそりゃ?」


「外国人が良からぬ目的でこの国に潜伏する際に、この国の人間になりすますことを背乗りという。良からぬ目的とは、概ねスパイやテロ活動のことだ。とどのつまり、素性の知れない、不法滞在をしている危険な外国人ということだな」


「げっ、そんな奴捕まえちったのかよ。後から報復とかされない?」


「されるかもな」


「ざっけんな!」


「で、もう一人の方だが――」


「何事も無かったかのように続けんな! スパイだぞ! テロリストだぞ! テ、ロ、リ、ス、ト! ヤベェだろ!」


「そうだな。で、もう一人の方だが、難民申請中のメロメ民族だった」


「……ちっ、無視しやがって。んで、そのメロメ民族ってのも聞いたことねぇワードだぞ。まさかそいつもテロリストってことはねぇだろうな?」


「察しがいいな。国外ではテロリスト認定されている民族だ」


「あぁん? さっきから人が黙って聞いてりゃ、なんでそんな危なっかしい連中がこの国にいやがるんだ! どうなってんだよ、この国はよぉ!」


 国家の存亡に関わりうる事情を知り、憤ったシズヤは声を荒げた。

Vivaldi / L'Autunno

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