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セカンド・ジェネレーションズ 〜逆襲の二世男子〜  作者: あゐおゐ ゑゐる
第5章 「愛と誠」

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05-01

 自室でテレビを観ていたミキオは、自由勤民党員による贈収賄の報道に焦り、冷や汗を掻きながらシズヤに電話を掛ける。

 しかし、シズヤは電話に出ない。


 発信を切り、再度の発信。

 やはりシズヤは電話に出ず。


「くっそ! 麻雀中か!」


 シズヤは唯一、麻雀に熱中している時だけは電話に出ないことをミキオは理解していた。

 寝ている時も、入浴中も、トイレの最中でさえ電話に出るシズヤが着信を無視するのは、麻雀を打っている時なのである。


 ミキオはシズヤの雀荘に電話を掛ける。

 するとすぐにシズヤの部下が応答した。


「お電話ありがとうございます。雀荘・華うららです」


「西島ミキオだ。そこにシズヤはいるか? 急ぎの用なんだ」


「恐れ入りますがシズヤさんからは、誰にも対局の邪魔はさせるなと申し付けられております」


「だと思ったよ。麻雀を打ち終わったらすぐに折り返すよう伝えてくれ」


「畏まりました」


 ミキオは電話を切り、スマートフォンで大手のニュースサイトを開く。

 そこでは有名なお笑い芸人の不倫報道と、大御所俳優の覚醒剤使用疑惑が大きく取り上げられており、イルミンスール記念会館の火事と自由勤民党員の贈収賄についての記事は小さく取り扱われていた。


「父さんの仕業か」


 権力者は自分たちの不都合を目立たなくさせるために、常に著名人のスキャンダルを数多く握っている。

 どうやらマタイチロウはそのうちの二つをリークさせたようであった。


 続けてミキオはSNSのアプリを開く。

 一口にSNSと言っても、その種類や機能は多岐にわたり、利用している人間も様々である。


 そこで飛び交う情報もまた多種多様であり、時にはマスメディア発信のものより純度の高い情報が流布することもある。

 ミキオの開いたアプリは〈モノモース〉という、老若男女問わず人気の高いものであった。


 検索欄をタップし、現在のトレンドを表示する。

 そこでは芸人や俳優のスキャンダルも去ることながら、贈収賄についての話題も大いにバズっていた。


 その理由は明確である。

 テレビや新聞、雑誌、ネットニュースより圧倒的に明確な情報が流出し、拡散しているのだ。


「やられた……。藤原ルイめ……」


 目下マスメディアで騒がれつつある自由勤民党員の贈収賄問題であるが、総理大臣であるマタイチロウによる情報統制が働いていることから、週刊誌を始めとする各メディアは情報源となる書類の一部を黒塗りで隠していた。

 しかしミキオが目にしたモノモース上の情報には、そうした類の忖度が一切見られなかった。


 いつ、誰が、誰から、どれだけの金額を受け取っていたのか。

 それらの情報が包み隠されることなく、詳細が記載された書類が撮影された画像が無加工でアップロードされ、拡散していた。


 新鮮な生の情報に対する人々の食い付きたるや、ピラニアの如く。

 無論、モノモースの利用者は自由勤民党とその党員に対する批判のコメントを呟く。


 #自由勤民党


 #贈収賄


 #賄賂


 #裏金


 こうしたハッシュタグの付いた批判や罵詈雑言の嵐。

 ミキオは画面をスクロールするが、次から次へと湧き出るコメントに読み込みが追い付かずにいた。


「最初に呟いた奴が、藤原ルイに近付くヒントになり得るか……」


 延々と画面をスクロールするミキオ。

 しかし、そんな行為は無駄であると嘲笑うかのように、増殖していくコメント。


 そして埋もれる、最初の呟き。

 食い入るようにスクロールしていた画面が切り替わり、マタイチロウからの着信が表示される。


 ピタリと指を止めるミキオ。

 恐る恐る通話ボタンをタップするなり、スマートフォンのスピーカーから爆音が響き渡る。


「今すぐ私の部屋に来い!」


 ミキオは咄嗟に片耳を塞いだが、スマートフォンを持っていたせいで塞げなかったもう片方の耳がキーンと鳴る。


「……はい、すぐに向かいます」


 ひと言だけを返し、ミキオは通話を切る。

 待ち受けるマタイチロウの怒号が憂鬱なのも去ることながら、それ以上に贈収賄のスキャンダルがミキオに与えた衝撃は大きかった。


 ソーラーパネルの一件には関わりが無いミキオであったが、かと言って他にやましい所が何も無い訳でもない。

 いつ自分が槍玉に挙げられてもおかしくないという恐怖。


 ミキオは、死神の鎌の切っ先が首元に突き付けられているような感覚に陥っていた。

 藤原ルイという死神に。


 自室を出てマタイチロウの部屋へと向かうミキオ。

 ノックをして扉を開けると室内には、マタイチロウの他に母と兄の姿があった。


 母であるエマは足を組んで椅子に座り、ワンレングスボブの髪を指でいじる。

 兄であるカズシゲは床に正座をさせられており、太っているが故に痺れた足をもぞもぞとさせていた。。


「扉を閉めなさい、ミキオ」


「……はい」


 入室するなり面を食らい固まっていたミキオは、マタイチロウの声で我に返り扉を閉める。


「座りなさい」


 ミキオは促された通りに、エマの座る卓に近付き椅子を引く。


「誰が椅子に座っていいと言った? カズシゲと同じく床だ」


 椅子を元の位置に戻したミキオはゆっくりと膝をつき、正座をする。

 その姿を見たカズシゲはミキオをせせら笑った。


「何が可笑しい! この馬鹿息子めが!」


 マタイチロウは卓上のスタンドライトをおもむろに掴み、カズシゲに投げつける。

 ライトは勢いよくカズシゲのこめかみに直撃し、できた切り傷からはどくどくと血が滴り始めた。

Vivaldi / L'Estate

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