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セカンド・ジェネレーションズ 〜逆襲の二世男子〜  作者: あゐおゐ ゑゐる
第3章 「暴力と権力」

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03-05

 ズキズキとした顎の痛みが次第に脳を覚醒させ、シズヤは失っていた意識を取り戻す。

 閉じていた目を開けば、空には満月。


 少し遠くの空はゆらゆらと赤らみ、灰色の煙がもくもくと立ち上っていた。

 仰向けに倒れていたシズヤは両手を地面に着き、上体を起こしてからゆっくりと立ち上がる。


「痛ってぇ……」


 上着のポケットからスマートフォンを取り出し、現在の時刻を確認する。

 画面にはクモの巣状にヒビが入っており、シズヤは萎えた。


 見れば、ミキオからの着信履歴や未読メッセージが大量に蓄積されており、更に気持ちが萎えてゆく。

 シズヤは連絡を返すのを後回しにすることにした。


「三十分近くくたばってたか、クソ……」


 顎の他に、腹部の痛みもシズヤに追い討ちをかけてくる。

 やはり肋骨にヒビが入っているようであった。


 左手で脇腹を抑え、右手でスマートフォンを持ち、ライトの機能を使用する。

 周囲を照らしながら見渡せば、三人の仲間はまだ意識を失った状態であった。


 そのうちの一人に近付き、しゃがんで頬をぺちぺちと叩く。


「おい、ずらかるぞ。おーい」


 シズヤは同じ要領で、順繰りに仲間を起こしてゆく。

 四人は森の中を歩き、車を停めてあった場所へと移動した。


「任務は失敗だ。保険で捕まえておいたコイツら連れてくぞ」


 シズヤの仲間たちが待避所と道路の境にある側溝の蓋を持ち上げると、手足を縛られ、ガムテープで口を塞がれた二世会の男二人が横たわっていた。

 シズヤの仲間は二人の持ち物を探り、車の鍵を見つけると、停めてある乗用車のロックを解除する。


 二世会の二人は後部座席に雑に放り込まれると、シズヤ達も車に乗り込み、その場を離れる。

 向かうは、市街地。






 シズヤ達は二世会の二人を車に残し、二十四時間営業のファミリーレストランに立ち寄る。

 テーブルの上には様々な飲食物が並び、各々が好き好きに飲み食いをしていた。


「食ベ物ヲ、オ取リクダサイ」


 配膳ロボットが運んで来たフレンチトーストを回収したシズヤは、ナイフとフォークで一口サイズに切り分け、口に運ぶ。

 お供の飲み物はブラックコーヒー。


 上着のポケットからスマートフォンを取り出し、シズヤは電話を掛ける。

 相手は内閣総理大臣の息子である西島ミキオ。


「もしもーし」


「シズヤか。その後の首尾はどうだ?」


「失敗した。大失敗。最悪」


「失敗だと? 失敗する要素がどこにあった?」


「対象のガキが思った以上に強くてよぉ、久々に喧嘩で負けたわ」


「情報によると、親から色々な習い事をさせられていたらしい。武術や格闘技にも長けていたとか」


「ちっ、そういうことは先に言っとけよ」


「先に言おうが言うまいが失敗は失敗だ。対象は今どうしている? 分かる範囲でいい。教えてくれ」


「逃げたよ。建物に火ぃつけて。俺の車を盗んで」


「で、今、お前は対象を追っている最中か?」


「いや、俺たち全員気絶させられちまってよぉ。あいつらが逃げてからもう軽く一時間は経ってるな。だから潔く諦めて、ファミレスで飯食ってまーす」


「何だって? じゃあ今、奴がどこにいるかも分からないのか?」


「全然分からんね。皆目見当もつかねぇよ」


「馬鹿野郎!」


 ミキオの怒号を遠ざけるために、シズヤはスマートフォンを耳から離す。


「マズい。非常にマズいぞ、それは……」


「何がそんなにマズいってのさ?」


「不確定要素の多い情報ではあるが、どうやらイルミンスールの教祖である藤原ナユタが死んだらしい。そして、捕獲対象である藤原ルイは教祖の長男であり、次の教祖となる男だ。送った情報を確認していないのか?」


「してたり、してなかったり。んで、それが何よ?」


「藤原ルイは次期教祖であるにも関わらず、二世会なるイルミンスールを潰すための組織を作っていたという話だ。もし本当に教祖が死んだとなれば、そいつらが本格的に動き始めたと考えるのが妥当だろう。何なら、教祖は息子であるルイに殺されたのかもしれない」


「あぁ、だから血まみれの奴がいたのか」


「ルイの他にも誰かいたのか?」


「血まみれの若い男と女が二代目教祖と一緒に逃げてった。ありゃ返り血だな。あと、二代目教祖を迎えに来てた男が二人いたもんで、そいつらは捕まえてあるぞ」


「全員、二世会の人間と見ていいだろう。捕まえた二人から何か有益な情報は得られたか?」


「いや、何も知らねぇの一点張りだわ。事務所に連れて帰ったら拷問確定。車返してもらわなきゃならんしね」


「何か情報を吐いたら教えてくれ。どんな些細なことでもいい。それから、お前の車に関しては警察に根回しをしておくからな」


「ありがとよ。ちなみに、そいつら生かしておく価値ある?」


「あるかもしれないな。生かさず殺さずで暫く飼っておいてくれ」


「猫以外は飼いたくないんだけどなぁ……。ま、しゃあない。しくじりの代償ってことで」


「はぁ……」


 電話口からでも分かる程に、大きな溜め息を吐くミキオ。


「この件、早急に処理しないと僕らも終わるかもしれないな」


「何が?」


「イルミンスールはパンドラの箱だ。もしもルイが不都合な真実を知っていたとしたら……。もしもそれを世間に公表したら、非常にマズいことになる。僕の政治家生命も終わるし、シズヤへの援助も打ち切らざるを得なくなるだろう」


「アイツ、そんなヤベェ奴だったのかよ。てか、お前が失脚したらうちの猫ちゃん達はどうなるよ?」


「下手したら保健所行きじゃないか?」


「んなもん許されねぇだろ」


「僕だって、せっかく党内で動物愛護法改正の気運を高めてきていたのに、それを台無しにされるのは困る」


 ミキオは再び溜め息を吐き、つられてシズヤも項垂れ、溜め息を吐く。


「……あと、父さんにこっぴどく怒られる」


「……てことは、俺も親父にこっぴどく怒られるじゃん」


 二人は改めて、同時に溜め息を吐いた。

Chopin / Nocturne Op.9 No.2

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