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セカンド・ジェネレーションズ 〜逆襲の二世男子〜  作者: あゐおゐ ゑゐる
第3章 「暴力と権力」

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03-03

 ゆっくりとした足取りで近付いて来るシズヤに対し、ルイは臨戦態勢をとりつつも対話を続け、情報の獲得を試みる。


「ところで君は誰なんだい?」


「あ? 言う訳ねぇだろ」


「目的は?」


「さぁね」


「誰かの指示で動いているのかな?」


「ノーコメント」


「ここに僕の仲間がいたはずなんだが、どこにいるか知ってるかい?」


「地獄じゃね?」


「……そうか」


 ルイはシズヤの発言を、仲間の死を暗示したものと解釈する。

 顔色を変えずにはいたが、湧き上がる怒りが全身から滲み出るのをチヒロは感じ取った。


「チヒロ君」


「なんだ? ルイ」


「僕が闘っている間、後ろに転がってる連中の持ち物を漁ってくれ。財布やスマホを回収するんだ。あとは、車の鍵があると嬉しいかな」


「わかった」


 チヒロはルイに言われた通り、気を失っている男達の元に駆け寄って服を漁り始める。


「盗っ人野郎が! させるかよ!」


 シズヤは地面を蹴り、ルイを避けるようにしてチヒロの方に向かって走り出す。

 しかし、ルイはそれを許さない。


 俊敏なステップでシズヤの前に立ちはだかると、鋭い右フックで先手を打つ。


「ちぃっ!」


 左腕でルイの攻撃を防いだシズヤは、そのままの体勢からカウンターで右ストレートを繰り出す。

 ルイは体を屈めて拳を避けると、重心を低く構えてシズヤの懐に潜り込む。


 そして放たれる右アッパー。

 鋭い一撃がシズヤの腹部に叩き込まれる。


「ごへっ――!」


 殴られた痛みに唾と空気を吐き出すシズヤであったが、上向きの衝撃を堪えて踏ん張り、すかさず反撃に転じる。

 スカした右手を素早く引き戻し、懐にいるルイの左肩に肘鉄をねじ込んだ。


「ぐっ!」


 シズヤの攻撃に軸足が揺らぐルイ。

 その隙を見逃さず、シズヤは左膝でルイの胸部を蹴り上げる。


 ルイは蹴られた勢いを敢えて殺さずに数歩後ろに下がり、間合いを取った。

 そして呼吸を整え、再び構え直しての臨戦態勢。


「痛っっってぇな、クソが!」


 怒りで額に血管が浮き出るシズヤ。

 攻撃を貰った部位を手で擦り、怪我の程度を確認する。


 出血こそ無いものの、打撲にしては痛みが鈍く、重い。

 下手したら骨にヒビが入っているのではないかと認識する。


 シズヤは、間違いなく生身での打撃以上のダメージが自身に入ったことを感じていた。


「テメェ、何か凶器を持ってやがるな?」


「まぁね」


 シズヤは構えたルイの両手を注視する。

 暗くて視認し辛いものの、月明かりを反射して闇夜に煌めく金属製の何かが見えた。


「メリケンサックか。素人の分際でナメた真似してくれんじゃん。人が手加減してりゃいい気になりやがって」


「だったらあなたも武器を使えばいい」


「要らねぇよ。うっかり殺しかねないからな」


 そうは言ったもののシズヤは内心焦り始めていた。

 自分は相手を捕まえるのが命題であり、ルイに重症を負わせる訳にはいかず、武器を使うのは得策ではないからである。


 かと言って、このまま体力の削り合いになれば生身のシズヤが不利になることは必至。

 そして何より、シズヤの想定以上にルイは強かった。


「そうかい。ならば押し切らせてもらうよ」


 ルイは縮地で間合いを詰めると、拳を突き出してシズヤに攻撃を加える。

 シズヤはメリケンサックの直撃を避けるために、ルイの手首や腕を弾いて攻撃を躱してゆく。


 ルイの攻撃の合間合間にカウンターを仕掛けるものの、シズヤの攻撃もまたルイにいなされ、互いに決定打のない小手先の応酬が繰り広げられる。


「ちっ、キリが無ぇな」


 長引く戦闘。

 打開策が見つけられないシズヤは手をこまねく。


「ルイ! 車の鍵があったぞ! ポルシェ!」


 ヒカリの足元に倒れている男からスマートキーを回収したことをチヒロは伝える。

 ルイは視線をシズヤから逸らすことなく、次の指示を叫んだ。


「チヒロ君! 素晴らしい! そしたら鞄を全て持って準備しておいてくれ! こいつを倒したらすぐに逃げるよ!」


「了解!」


 ルイの後方でチヒロは、落ちていた鞄をいそいそと拾う。


「おいおい教祖様、俺の愛車を持ってくつもりか? 許さねぇぞ」


「大の大人が四人いて、メーカーはポルシェ。車種はパナメーラかな?」


「……よく分かったな」


「いい趣味だね。必ず返すよ」


「持ってかせねぇつってんだろ!」


 戦闘再開。

 今度はシズヤが先に間合いを詰めて先手を取る。


 反撃の隙を与えないように怒涛の連撃でルイを押し込んでゆく。

 ルイは攻撃を躱すか、最小限のダメージで済むように衝撃をいなし、防戦に回っていた。


 そのまま攻防の立場が転ずることなく、ルイは徐々に壁の近くへと追い詰められてゆく。

 そして、背水の陣。


 壁に行く先を塞がれ、ルイは逃げ場を失った。


「観念しとけやぁ!」


 シズヤはルイに殴りかかる。

 対し、ルイは閉じていた壁の扉を思い切り開け放つ。


 すると、解放された隠し通路から勢いよく灰色の煙が飛び出して来る。

 文字通り、シズヤは煙に巻かれてルイの姿を見失った。


「うぉぇっ! ゲホッ! ゲホッ!」


 煙を思い切り吸い込んでしまったシズヤは、目、鼻、喉に痛みを覚え、更に意識までもが遠退き始める。


「野郎っ! どこだっ!」


 必死に煙を振り払い、曖昧な五感でルイを探すシズヤ。

 しかしその努力も虚しく、ルイは煙の中からシズヤに攻撃を加える。


 顔面に会心の一撃。

 メリケンサック付きの重い拳を食らったシズヤは一瞬で意識を失い、背中から地面に倒れ込んだ。

Beethoven / Piano Sonata No.14, 3rd movement

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