「考えた?」
「はい、これ。」
突如差し出された小箱を、押し付けられるがままに受けとる。
意図がわからず彼の方を見やると、楽しげな表情で
「開けてみて。」
とだけ言われた。
中には、綺麗な装飾の施された チョコレートが並んでいた。
「チョコ…レート………?」
「そ。俺の手作り。
隠し味入れたからさ、当ててみてよ」
突然の状況に頭が追いつかないものの
「ほら」
と促されるがまま、一つを口へ運んだ。
舌触りの良いそれは口の中でなめらかに溶ける
が、とくにこれといって特殊な味はしなかった
彼と目を合わせると
「俺のこと よーく考えたら、きっとわかるよ」
と、応えられた。
彼が入れそうなもの?隠し味?
何が、入っているというのだろう?
「……二種類のチョコレート……」
「じゃ、ないね」
「ちなみに、隠し味は愛でした!とかでもないよ?それは隠してない」
楽しそう……というか、[それ]は隠してないんだ…………
考えれば、わかる…
彼のことを、よく、考えれば…
「ごめん…………わからない………」
お手上げだった。
彼のこと、まだわかってないってことになっちゃうのかな……
少し不安になり俯いた。
「ないんだよね」
「………へ?」
気の抜けた声を出してしまった
「隠し味なんて、入れてないんだよ。ふっつーのチョコ。
俺のこと、いっぱいかんがえてくれるかなーって思って考えた嘘なんだけど………」
あぁっ、もうっ、
そんな顔で見ないで!
「考えた?」