人違いです!女神様
そっくりさん、ドッペルゲンガー、生き写し。
どれも瓜二つなモノを指す言葉だが、実際に会ったことがあるかというと多くの人は『ノー』と答えるだろう。
しかし、『実際に街で見かけたことがあるぞ!』という噂話に付き合わされたり、『同じ職場や学校に居るんだよ!ほらっ』とそこまで似てない写真を見せつけられ、愛想笑いで誤魔化した経験はあるかと聞かれると、おそらく『イエス』と答えるに違いない。
また、体感と反するかもしれないが、統計をとってみると、世界には『そっくりさんが三人はいる』らしい(要出典)。
おまけに現代科学でも『育ちも環境もまるで異なっているのになぜ同じ顔立ちになるのか』については、『何かしらの遺伝子が影響している』としかわかっていないらしい。さらに、『どうすれば全く同じ顔立ちを作れるのか』、『そもそも何をもって似ていると判断しているのか』などは、依然として謎として残っている。
閑話休題。
さて、そんな『そっくりさん問題』は、現代論争が交わされているABC予想に並ぶ現代の未解決問題な訳なんだが、悲しいことに、学問の現場だけでなく、日常生活でも意識外に追いやられている。
追いやられているはやや誇張かもしれないが、人生をかけて、この問題に向き合う狂人は誰一人としていない(少なくとも僕の周りには)。
理解はできる。
現実でそっくりさんに出会える確率はごく僅かで、出逢えたたとしても数人規模。
生活する場所もバラバラとこれば、実害はない。
だってそうだろう。
落としたスマホをたまたま悪質な『そっくりさん』に拾われたり、逆に犯罪者と自分が遺伝子レベルでたまたま『そっくりさん』だった。そんな天文学的な確率の事象が立て続けに襲いかかってこなければ、笑い話で済むはずなんだから。
何が言いたいかというと、この問題が極めて死活的になってくるのは、日に一度のペースで知りもしない赤の他人と間違えられ、実に十五回も誤認逮捕をされた、僕ぐらいなもんで、
「今何と?」
「あー…言いにくいことなんですが…僕は世界なんて救ったこともないし。根源?ってのもよく知らないし、勇者を育てたことも、 ましてや世界層大統領なんて役職にもなった覚えもありません。」
「……結論から言うと?」
「…あー…人違いなんですよ、女神様。
僕は、スドー・シュン。英雄じゃない、ただのサラリーマン、スドー・シュンなんです…」
そしてその特性が、おそらく最悪のタイミングで発生したようだった。