私と音楽と吹奏楽と
吹奏楽の曲を詩のようなものにしてみました。実際にホールで演奏している場面を表現しました。
注釈は入れていますが、音楽の専門用語が多く、更に様々な楽器が出てくるので、吹奏楽などの経験や知識のある方しか分からない可能性がありますが、そうならないような工夫はしています。
なので、音楽に興味のある方は短い作品なので読んで頂けると嬉しいです。
楽曲はオリジナルです。お読み頂く方の心に音楽を感じてもらえたら嬉しいです。
私は1stトランペットです
舞台の後、ひな段の一番上に座ります
55名のメンバーの準備が出来ました
ふぅと呼吸を整えます
会場の照明が暗くなり、舞台に明かりが灯ります
ピンスポットが指揮者を照らします
指揮者がタクトを振り上げました
輝かしいトランペットのファンファーレで始まりました
アレグロ コンブリオ(陽気に速く)で軽快に始まりました
続いて低音楽器が重厚な音を響かせます
木管楽器が速いパッセージのスケールを奏でます
ほぼ完璧に曲をスタートすることが出来ました
ここでコケるとガタガタになり、立て直す事はほとんど出来ません
日頃あまり付き合いのない人達とも、この時はひとつになります
吹奏楽で大切な事は音を合わせることです
テンポ、音程、少しのズレでも人の耳には聞こえてしまいます
アインザッツ(音の出だし)が少し狂っただけで全体がバラバラになります
音程も狂うと何を演奏してるのか分からなくなります
なので舞台の上では皆がひとつになる必要があるのです
楽章が終わり曲の雰囲気が変わりました
アダージョ・カンタービレ・ソステヌート(ゆるやかに歌うがごとく音をつづけて)
華やかな出だしとはがらりと変わり、美しいメロディーが流れます
オーボエのメロディーにフルートが続きます
川のせせらぎのような美しい旋律が流れます
ピッコロに始まり、グロッケン、ビブラフォンと続き、幻想的な雰囲気に包まれます
泉から湧き出る噴水のようです
少し長めのクラリネットのカデンツァ(独奏)でこの楽章が終わります
突然雷のようなティンパニが響きます
アルラ・カッチア(狩の音楽ふう)
狩りが始まりました
各楽器がけたたましく演奏し、まさしく狩りを想像させます
スネアドラムがみんなを煽ります
シロフォンが、縦横無尽に鍵盤を叩きます
チューバ、バストロンボーン、バスクラリネット、バリトンサックスの低音楽器が獣のように暴れます
そして、狙いをつけたトランペットの鋭い矢が刺さり、獣は倒れ、狩りは終わります
アマービレ(愛らしく、柔和に)
美しいホルンの音色に始まり、柔らかくトロンボーンが続きます
サキソフォンが甘く囁きます
その声は女神様のようです
木管楽器は美しい旋律を奏で、中低音のハーモニーが引き立てます
コントラバスが優しくテンポを刻みます
神秘的な輝きを感じさせます
アッチェレランド(次第に速く)
ユーフォニアムのソロをきっかけに次第に曲が速くなっていきます
アレグロ・マ・ノン・トロッポ(速く、しかしあまり速すぎないように)
金管楽器の優雅なコラール(賛美歌)が響きます
教会のステンドグラスのような輝きです
曲は最終章になりました
コン・フオーコ(熱情をもって)
皆が心を込めて音を奏でます
重厚で、しかし決して荒くない音を奏でます
全員でのユニゾン(複数の人が同じ旋律(または同じ音)を演奏すること)が会場に響き渡ります
アレグロ・ヴィヴァーチェ(はなはだ急速に)
急にテンポが速くなり、音が流れ星のように降り注ぎます
夜空に花火がちりばめられているようです
木管楽器が飛び跳ねるように演奏します
それは妖精達が嬉しそうに飛び回っているようです
アラルガンド(クレッシェンドしながら次第に遅く)
全員で次第に遅く、ダイナミックに奏でながら徐々に終曲に向かいます
アンダンテ・マエストーソ(おごそかにゆっくりと)
チャイムとシンバルに導かれて次々と異なる金管楽器によってファンファーレのシャワーが観客を祝福します
荘厳な鐘が鳴り響くような美しい音達です
徐々に大きく、次々と鐘の音が重なり合っていきます
全ての楽器達がキラキラと輝いて舞台を彩ります
そしてトゥッティ(全員で演奏すること )で美しい純正律のハーモニーが会場全体に響き渡り、余韻を残して曲は終わりを告げました
会場はしばらく静寂に包まれました
そして大きな拍手が鳴り響きました
私は指揮者の指示で立ち拍手に応えます
心地よい疲れと満足感に浸りながら何故か涙が流れていました