98 パンとうどんとラーメンと
食肉植物化した巨大小麦は不気味な鳴き声を上げていた。
「シャゲゲエェェェーー!!」
うーむ、コレを作っているのを見たら多分食欲はかなり削げると思う。
それくらい不気味だ。
何よりも不気味なのは、小麦はたくさんの実がついている。
その実一つ一つに目玉が出来てギョロギョロとこっちを見ている事だ。
こっちみんな。
そして、巨大食肉小麦(大きいのか小さいのかわけわからない名前だ)は、蔓を伸ばして攻撃してきた。
「私と触手で対決しようというのですか!」
いくらレベル30のクソザコになっているとはいえ、流石に食肉植物に負けるほど私は弱くない。
……と思っていましたが、小麦には勝てなかったよ。
私は食肉小麦に捕まり、宙ぶらりんにされてしまった。
「ワシのテテエンタクルに何をするのだー!!」
なんと、パラケルススの手が体から離れて私を捕まえていた小麦の蔓を斬り飛ばした。
「フッフッフー、これぞワシの必殺技ロケットぱーんちなのだー!!」
なんちゅー技だ。
しかし今回は助かった。
しかしロケットパンチ、はその後壁に刺さったまま戻ってこなかった。
「しまったのだー! ワシのロケットぱーんちがー!!」
よく見ると、パラケルススの手はそのまま残っていた。
どうやらアレは手の形をした武器というものなのだろう。
怯んだ食肉小麦はその後再び私達に襲いかかってきた。
「ブヒー! オラ脂っこいから食べたら胃もたれを起こすブー!!」
トンソックがフルプレートアーマーごと取りこまれようとしていた。その時!
「ファーフニルブレス!」
食肉小麦にファーフニルがブレスを吐いて丸焼けにして私達を助けてくれた。
「ご主人様―、無事ですかー?」
「は、はい。どうにか助かりました。ありがとうございます」
「ワシも感謝するのだ」
ファーフニルは尻尾をパタパタして喜んでいた。
「わーい、ご主人様に褒めてもらえましたー」
とりあえず後で何か渡してやろう。
何をあげれば喜ぶかは、この変態ドラゴンの事だからあまり今は考えたくない。
食肉小麦は力尽きて、その場で動かなくなり、目が閉じた。
目の無い食肉小麦はタダの大きな小麦でしかなかった。
私達はこの小麦を抱えて食堂に向かう事にした。
◇
「アイヤー、コレはでっかい小麦アルね。これを粉にするのはかなり大変アルね」
「姐さん、力仕事ならオレっちに任せるっすー!」
「ワシも手伝います、料理長!」
まあパワーファイターのオークとサイクロプスなら力任せにこの小麦をすりつぶすのは出来るだろう。
「テテンタククスー、もしすり潰し用マシーンが必要ならワシが作ってやるのだー」
「い、いえ。今は結構です」
「ちぇっ。残念なのだ。ゴーレムくんの新しいの作りたかったのにー」
いやもう貴女が何かやると毎回ロクな事になりませんから。
「てんたくるすのオッサン。コレだけ小麦粉があれば何でも作れるアルね。ちょっと待ってるアル」
そう言うと、ウー・マイは小麦粉を水で伸ばして色々な形に作った。
丸い物、細く切った物、それにさらに叩いた物等、白い色々な物体が作られた。
「それではワタシの腕の見せ所アルね!」
ウー・マイは小麦粉から色々な食べ物を焼いたり揚げたり蒸したりで完成させた。
「完成アル! これぞ、ウー・マイ特製ラーメン、それとウドン、それに蒸しパンと揚げパンアルね!!」
そこには今まで見た事もないような料理が、並べられていた。
「これ、食べても良いんですか?」
「もちろんアル! たくさん食べて感想を欲しいアル」
私達はみんなでラーメン、ウドン、蒸しパンに揚げパンを食べた。
美味い!
これは今までに無かった味だ。
「姐さん、コレメチャ美味いっすー!!」
「これは美味いのだ、おかわりを寄こすのだ!」
みんなが、がっつく様に食事をしていた。
今日の食堂には小麦で作った新メニューが並んだが、やはり今日も新作を巡って壮絶な争奪戦が繰り広げられていた。