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91 カトブレパスのステーキ

 今日の食事も美味しいに違いない。

 やはり食事が美味しい事が、生きているという証なのだろう。


「アイヤー、今日のステーキは一つ目牛の香草焼きアルね」


 一つ目牛とはカトブレパスの事である。

 魔獣の一種だが確かに牛と言えば牛だ。

 しかしその肉は固くて不味いというのが定番の、安い肉の代表ともいえる。


 しかしこれは別次元だ!

 これがカトブレパスの肉だと誰が信じられようか。


 噛めば噛むほどいい香りが鼻につき抜け、肉は柔らかくジューシー。

 カトブレパスでこれなら、ドラゴン肉のステーキでもトラウマになれずに食べる事が出来そうだ。


「ご主人様、我の顔をずっと見て何を考えていますの?」


 そういえばファーフニルもドラゴンだった。

 そしてその尻尾は切ってもトカゲのように何度でも生えてくる。


 まあだからと言って、ファーフニルの尻尾を食べようとは思わないが。


「いや、みんな美味しそうに食べてるなと思いましてね」

「我もあの場であの人間を食い殺さなくて正解でしたわ」


 オイオイ、流石に本人の前でいう事じゃないだろうに。


「あまりそういう事を言う物じゃありませんよ」


 私はこの料理が出来るまでの工程を思い出していた。



「料理長! オレはあと何枚この肉を切ればいいんだ?」

「そうアルね。あと20枚は頼むアル」

「わかったぜ!」


 リオーネがウー・マイ料理長の指示で動いている。


「姐さん、オレッちはどうすればいいっすか?」

「ブブカはそこの肉たたきで切った肉を叩くアル」

「了解っす!」


 なるほど、あの硬いカトブレパスの肉を少し厚めに切ってから叩いて伸ばしてたのか。

 それであの柔らかさになるわけだ。


「そして今度はこの肉を特製の蜜壺に沈めるアル」


 蜜って……アレはキラーホーネットの蜜なのか。

 肉を蜜に漬けるって……甘くなり過ぎないのか??


「そして、半時蜜壺に付けた肉を……テイヤァー!」


 ウー・マイは今度は肉を丸い鉄板鍋の上に並べた。


「はいッ! はいッ!! はいィーーッッ!!」


 辺りに香ばしくていい香りが漂う。


「よし、これで焼けたアル!」


 香ばしく、良い色に焼けた肉は肉汁を滴らせていた。

 これに……これを使って完成アル!!


 アレ? これはどこかで見覚えがある様な……?


 私はその緑色の物体をよく見てみた。

 それは、以前切り取られた私の触手だった。


「あのー、ウー・マイさん? それは一体?」

「あー、コレはその辺に生えていた草アル。何気に使える食材なので今育ててるアルよ」


 あのー、それって草じゃなくて私の触手のなれの果てなんですが……。


 しかし私はあえて黙っている事にした。



 そうやって出てきたのがこのカトブレパスのステーキである。


 そして人数分用意されたカトブレパスのステーキは……噛めば噛むほど味が広がり、

 甘みと奥深さを感じるものだった。


「美味い、コレは美味い!!」

「美味しいですわ」

「滴る血、この血の多さが素晴らしいですわ」


 カトブレパスのステーキは全員に好評だった。

 食堂は閉店寸前の時間にもかかわらず、ずっと行列が絶えない。


 そして食事をしている魔族たちの表情が明るい。

 誰もがこの食事に満足しているのだろう。


 そして、よく見ると……食堂の隅にはオクタヴィアの姿も見えた。

 どうやら彼女も食事に来ているようだ。


 その表情は普段見せるツンツンした不機嫌そうな顔ではなく、とろける様な食事をして幸せそうな表情だった。


 その表情を見ていると、オクタヴィアがこちらに気が付いたらしい。

 いきなり顔を真顔にして下を向いて食事を続けていた。


 そして、時々こっちを強く睨みつけてきた。


 さて、どうしたものか……。

 私はあえてその後なにも見なかったふりをしながら食事を続けた。


 私達が食事を終えた頃、丁度閉店の看板がかけられていた。


 明日は一体どんな食事が出来るのだろうか?


 私は食事を楽しみにしながら、明日する仕事の事を考えた。

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