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81 魔神かアシュラか料理の鬼神

 ウー・マイの動きは人間を遥かに超越していた。

 これはすでに腕が何本もある魔神の領域だ。

 

 しかしやはりどう見ても彼女は人間に違いない。

 では一体どうやってあれだけの料理を作っているというのだ??


「ハイヤー! 出来たアル。これそっち持ってって!!」

「はい! わかりました!」

「次、そこの蒸した魚持ってくるアル」

「わかりました!」


 彼女の指示は的確そのものである。

 一瞬の無駄すらなく、厨房の全てを仕切っている。

 これがあのナンモナイ山でうろたえていた人間の娘とは信じられない。


「そこの人、ぼーっとしてるなら何か中で手伝うアル!」

「えっ? ハイ」


 私は何故か手伝いをさせられる事になった。


「触手よ伸びろー」


 伸ばした触手に手伝わせて私は皿洗いをした。

 洗っても洗っても皿がどんどん追加されていく。

 この食堂がここまで盛況になったのは初めての事だろう。


「アイヤー、A定食10人前完成アルね!」


 10人前を一瞬で用意した能力、彼女は本当に人間だといえるのか?


「おい、本当にこれをこうするだけでそんなに味が変わるのかよ?」

「そうアル、だからどんどん肉を叩き潰すアル!」


 リオーネが指示に従って二本のナイフで肉を粉々にしていた。


「料理長、これ伸ばせばいいんですか?」

「その魚をこねてこねて平たく伸ばしたら細く切るアル」


 サイクロプスの料理長が知らない間に降格していた。


「こねて伸ばしたものをこっちに持ってくるアル!」


 なにやら魚を練ってぶよぶよにした平たいものが彼女に渡された。


「ウー家極意! 天使髪麺!」


 彼女が不思議な形の剣で空中に放り投げたものを素早く切り刻んだ。

 まるで髪の毛のように細く切られたものがスープに入れられ、熱湯の中で泳いでいるようだった。


「ヨシ! 茹で加減はこれで最高アル!」


 熱湯の中の細長いものが取り出され、器に一つずつ入れられた。


「魚のすり身麺スープ完成アル!」


 そして彼女はまたすぐに別の料理に取り掛かった。

 先程リオーネに叩き潰させた肉を受け取ると今度は何かのスパイスを入れ、肉を高速でこね始めた。


「アイヤーアアア!」


 その表情は鬼気迫るものだった。

 まるで鬼神かアシュラと呼ばれる別の魔界の魔神。

 とても人間の表情には見えない程だった。


「ハイッ! ハイッ! ハイッィ!!」


 こねた肉の塊が何やら白いぼそぼそした魚肉を砕いた塊の上に置かれていく。

 そして彼女はそれを全体につけたものを、今度は高温の油に沈めた。


「最初は強火、その後は中火でじっくりと揚げるアル!」


 そして彼女は油の中から黄金に輝く肉の塊を取り出した。


「これをこの布の上に置いて余計な油をとるアル」


 油をとった上げた肉がどんどん積み上げられていく。


「完成! これぞ麺置活、ウー・マイ風アル!!」


 完成した料理は芸術品といえるほど素晴らしい出来栄えだった。


「ふー、これで一通りの料理が全部完成したアル」

「料理長! ご苦労様でした!!」

「アンタスゲーよ! これから毎日ここで働いてくれ」


 ウー・マイは食堂のスタッフに絶賛されていた。


「ふぇ? ワタシが料理長? 無理無理無理、そんな大役できないアルよ」

「そう言わずにそこを何とか、お願いします!」

「ううう……仕方ないアル。引き受けたアル」


 そして食堂からは大きな拍手が鳴り響いていた。

 彼女の料理を食べた全ての者がその腕を称賛していた。


「姐さん、いったいどこにいたんっすかー!?」

「ふぇ? ブブカ……どうしたアル?」

「どうしたもこうしたも、姐さんがどこにもいないから、オレっちずっと探し回ってたんすよ!!」

「それは悪かったアル」


 どうやらこのオークのブブカは彼女を捜しまわっていたようだ。


「……そうですね、とりあえずあなた方をここの職員として採用しましょう」

「ふぇ? アンタはあの時の触手男アルか」


 どうやら彼女は私の事を覚えていたらしい。

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