74 エンドレスくすぐり地獄
私は三日間くすぐり地獄を受け続けた。
「勘弁して、勘弁してくださいー……そろそろ頭がおかしくなりそうですー!!」
ポンコツ連中はローテーションを組んで私をくすぐり続けた。
パラケルスス、リオーネ、エリザベータ、トモエ、ファーフニル、全員が三人ほどで私の身体を押さえつけながらくすぐる、それを後の二人は休憩しながら見たり食事したり。
それをオクタヴィアは傍観しながら時々食事を用意していた。
「あ、そうそう。連休は今日までですからね。明日には仕事に戻ってもらいます」
オクタヴィアの冷徹さに磨きがかかっていた。
「ご主人様。我は本当ならこんな事はやりたくない……むしろやられたいのですが、みんなで決めた事ですから」
「やめてやめてやめてー! ギャハハハハ……死ぬ―、死ぬ―!!」
今はファーフニル、パラケルスス、リオーネの三人が私をくすぐっている。
「よーしこのマッハくすぐり君一号を試すのだー」
「やめてやめて、勘弁して下さい」
「ダメなのだー、ストレッチのお返しはしっかりさせてもらうのだー!!」
「アギャアアアアー!!」
パラケルススの珍発明、マッハくすぐり君一号は私の全身を超高速微細動でくすぐった。
「フフフフーン、ワシの作ったマッハくすぐり君一号は一秒間に2万回の高速微細動で全身のどんなところでもくすぐる事が出来るのだー!」
何それ怖い。
てかもうやめてくれー!!
「ワシはやられた事は10倍にして返す性格なのだー!」
「勘弁してー!!!」
「いーや、絶対お返ししてやるのだ、10倍返しなのだ!」
マッハくすぐり君は私の敏感な場所を強烈にくすぐった。
「ウボアー! 助けてー ボスケテー!!」
あまりのわけのわからなさに私は意味不明な叫びをあげていた。
「拙者にもやらせるでござるよ。てんたくるす様、さあ、さあ、お覚悟を」
トモエの目がすわっていた。
口はニヤニヤした半開きである。
何か悪いスイッチ入ったままの様に、トモエが私の足の裏を持った。
「これは本来書を書くための道具だが、これでくすぐるととても愉快になる」
勘弁してください、てかあなたローテーションの順番じゃないのでは?
「トモエ、今はオレの番だぜ。もうちょっと待ってな」
リオーネはいつの間にやらライオン頭の獣人から人型に戻っていた。
「テンタクルスー、どうだい、狩られる獲物になったような気分は?」
マジ勘弁してください。
そろそろマジでヤバくなってきている。
「さてと、オレはこれを使うかな」
そういうとリオーネは尻から生えたふさふさの尻尾を私の鼻の前で動かした。
「どーでー、オレの尻尾。なかなか可愛いだろー」
てか鼻の前で左右に振らないでください。
私はくしゃみが出そうになっていた。
しかしくしゃみが出そうになる瞬間にまた鼻に刺激を受ける事で、くしゃみの出ない消化不良を何度も経験させられた。
「ファ……ファ……また出ないー!!」
このくしゃみが出そうで出ないってのは、かなり体に不快感を与える。
リオーネはそれをわかった上で私の鼻をくすぐっているのだ。
そんな身の毛もよだつおぞましいくすぐり地獄はその後もしばらく続いた。
◆
私がくすぐり地獄から解放されたのは……それから数時間後の事だった。
「ゼェ……ゼェ……マジで死ぬかと思った」
「……」
他のポンコツ連中はくすぐりに全員力尽きて寝ていた。
「はい、何も食べてないんでしょ」
オクタヴィアが私に食事を用意してくれた。
「ありがとうございます」
「明日には仕事ですからね、今から寝ている暇はないですよ!」
やっぱり塩対応……。
次の日、仕方なく私は全身ヘロヘロの状態で庁舎に向かった。