68 ゲンキニナールグレートX
私は午後も仕事に振り回された。
どうやらファーフニルは金鉱の私物化以外にも、かなりいろいろとロクでもない事をしまくっていたようだ。
「ご主人様ー、我もう頭下げ疲れましたー」
「誰のせいでこうなってると思ってるんですか!?」
ファーフニルには当事者という意識がまるでない。
意識がないから反省もしない、反省しないから繰り返す。
私はこのポンコツをどうやったら使い物になるようにできるか、それを考えて悩んでいた。
「テンタククッススー、元気出すのだー」
パラケルススが私を励まそうとしてくれている、それはいいのだがその変な瓶は何だ?
「パラケルススちゃん、その……瓶はいったい何ですか?」
「これはワシが元気のないオマエの為に用意したゲンキニナールグレートXなのだ!」
もうパラケルススの発明でまともだった覚えがまるでない。
それにそのネーミングセンス、それを治す薬は存在しないのか?
「え……それを飲めと言うのですか?」
「そうなのだ! これを飲めばたちまち元気になれるのだ!!」
「あの……勘弁してください」
パラケルススは嫌がる私を力で押さえつけ、口に瓶の中の液体を流し込んできた。
パラケルスス、このポンコツホムンクルスは見た目は幼い少女なのにその力はとんでもないバカぢからだ。
私はその力を跳ねのける事の出来ないクソザコになっているので、なされるがままに薬を飲まされてしまった。
苦い、エグイ、辛い、しょっぱい、臭い、重い……あらゆるマイナスを集めたような味が混ざってカオス化している。
私はそれを強引に飲まされ、ものすごく気分が悪くなった。
「う……うげぇえ、クソマズイ」
「良薬は口に苦しなのだ! これで元気が出るから大丈夫なのだ!!」
苦しどころか、えぐし、辛し、しょっぱし、臭しみたいなものまで全部混ざってたんですが……。
「!!!?? ウゲアアアア!!!」
私の体の奥底からすごい力がみなぎってきた!
全盛期のころのような力だ!
そうだ、これが本来の私の力だったのだ!!
「フ……フハハハハハハハ! これだ! これが私の本来の力だぁあああ!!」
パラケルススよ、先ほど不味いのを飲ましたのは許してやろう。
これが本当の私の力だ、私は元魔王軍最強の元帥でありナンバー2だったのだ!!
この力があればあのクソ忌々しいポリコールをフルボッコに殴れる!
「す……凄い。これがご主人様の本当の力、素晴らしいですわ! このちからで全力でいじめてくださいませ!!」
ファーフニルよ、私はちからを取り戻したとはいえ、そんな趣味はない。
さあ、これから私の本当の戦いが始まるのだ!!
「おーい、テンタンタクスよー」
「フフフフ、何ですか? パラケルススさん……」
「この薬だが、副作用がある事を忘れてたのだー」
「!!?? なん……だと……!?」
何だ、この奥底から込みあがる何とも言えない不快感は!!
「このゲンキニナールグレートX、原材料が一つ足りなくてなー、持続時間は5分だけなのだ」
「何だとー!? その時間を過ぎるとどうなるのだ!?」
「ワシにもわからん、まだ作ったばかりなのだ」
「ウボァーー!!」
私の中の魔力が暴走をした!
その魔力はたまる一方であり、放出する場所がない。
私の体は風船のように膨らみ、魔素が際限なく蓄積されてしまった。
「ああ……が。がぁあぁぁー!」
「アーア、ワシ、も~知らないのだ!」
「パラ……ケルス……スゥゥゥーーー!!!」
私の魔力は限界を超え、大爆発を起こした!
掃除するはずだったエリザベータの元々いた倉庫はその爆発で何もなく吹っ飛んでしまった。
「う……うげえええ。ぎぼぢわるい……」
魔力の暴発した私は着ていた服を吹き飛ばし、全裸で地面に転がっていた。
「一体何があったのですか!?」
騒ぎを聞いて走ってきたオクタヴィアは爆発跡の中心で全裸で倒れている私を見て、汚物を見るような目で見ていた。
「さて、また修理費増えましたね……」