61 黄金の出どころは?
ファーフニルの持ってきた黄金はとんでもない量だった。
それは金貨だったりインゴットだったりもあったが、大抵は金の塊そのもの、眩しいばかりの黄金だった。
「ご主人様ぁー、これだけあれば足りますかー?」
「あ、あのー、ファーフニルさん、これはどこで手に入れたのですか??」
「あー、これは我の山にあったものです。目障りな連中をぶっ殺したら自然に手に入りましたのよ」
さらりと言っているが、ファーフニルの言っているのはかなり物騒でヤバい話だ。
この黄金は持っていた者から殺戮して手に入れた血なまぐさい黄金というべきいわくつきのモノだ。
こんな黄金を手にしては下手すると呪われそうだ。
「あ、あのー、ファーフニルさん。目障りな連中とは?」
ファーフニルはあっけらかんと答えた。
「いろんな連中がいたねー、まあなんか細長い武器を持って山に登ってきた連中や平べったい武器を持った連中が大半だったかな、どいつもこいつも我の巣の近くで寝られないような大きな音を立てていたので腹が立ったからぶっ殺して持っていた黄金を取っただけよ」
これは間違いなく金鉱山がファーフニルの山にあったといえるだろう。
その細長い武器や平べったい武器は金を掘るための道具だと見て間違いない。
ファーフニルに見つかるとは運の悪い連中だ。
金の鉱山で一山当てようと思ったら実はこの変態ドラゴンの巣のすぐ近くだったというわけだから。
「ご主人様ー、金をたくさん持ってきた我を褒めてー。褒めてー」
ファーフニルは尻尾をパタパタして私にご褒美をねだっている。
それをオクタヴィアが冷めた目で見ていた。
「では、この黄金をあなた方が壊した石塀の修理に使います。また、ファーフニルさんの持っていた黄金はバーレンヘイムにおけるナンモナイ山の金鉱から取れたものなので国庫のモノを横領したとして全部没収します!」
オクタヴィアは血も涙もないのか?
せっかく集めた黄金を全部没収されそうになってファーフニルが涙目になっていた。
「えええー。これは我のため込んだ宝だったのに」
涙目になっていたファーフニルの肩を叩いたのはパラケルススだった。
「お前、黄金が欲しいのか?」
パラケルススはどや顔でファーフニルに話しかけていた。
しかし、長身のファーフニルに比べるとパラケルススは半分以下のお子様体形だ。
その光景はシュールといえよう。
「そこの小娘、キサマが黄金を持っておるのか?」
「ないっ!!」
ファーフニルが盛大にずっこけた。
「小娘ー、我を愚弄するとは、命がいらないようだなー!!」
「まあまてまてまて、ワシは天才美少女錬金術師なのだ。錬金術とは金を作り出す学問」
「では小娘、キサマは黄金を作り出せるのか?」
「ふっっふっふーん」
パラケルススがドヤ顔で自信ありげに背をそらしていた。
「出来ないのだ!」
今度はファーフニルだけでなくリオーネまでずっこけた。
「キサマ、マジで殺す! ハラワタ引きずり出して殺してやる!!」
「まあ落ち着けよ、短気変態トカゲ」
リオーネはなだめるつもりだろうがその言い方は火に油を大量に注ぎ込んでいるぞ。
「錬金術はロマンなのだ、金を作るために幾多の実験と失敗を繰り返し、やがていつかは金を作り出せると信じる。これが科学と文化の発展につながるのだー!!」
「ロマンで腹は膨れん! やはりキサマを食らったほうが腹は膨れそうだ」
パラケルススはドラゴンの姿になったファーフニルに頭からかじられそうになっていた。
「待つのだ、待つのだ! お前の望みをかなえてやるからワシを食おうとするな」
ファーフニルはパラケルススの命乞いを聞いてやり、地面に彼女を下した。
「我の望みを叶えるとな。では、我とご主人様に決して切れない絆を作ってくれ」
やめてください、貴女の愛が重いです。
そしてそれを聞いたトモエの目線も非常に痛いです。
「なんだそんな事か、ワシに任せるのだ! ここにワシの作った特製の飲み薬がある。これを飲めばたちまち好きな相手とくっつくことができるのだ!」
私は最悪に嫌な予感がした。