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60 ファーフニルの財宝

「あら、テンタクルスさん。今度はどこで可愛い女の子をひっかけてきたのですか?」

「ああーん、可愛いだなんて―、当然の事ですわ」

「へ?」


 ファーフニルはいつの間にやらドラゴンから女性の姿に変化していた。

 この状況下で女性二人を触手で縛っている私は変態扱い確定である。

 オクタヴィアの視線が冷たい。


「バカ、可愛いってのはオレの事だこの陰険変態トカゲ女!」

「あら、可愛くないケモノが何を言っているのですか、この単細胞ケモノ女」


 頼むから二人共これ以上やめてくれ、どう見ても痴話喧嘩にしか見えずに、私は二人の女を弄ぶ最低男に見られてしまっている。


「あなた方の情事がどうあろうとこちらには関係ありませんが、そこの壁の修繕費はいったいどうするんですか!?」


 オクタヴィアが指さした向こう側にあるのはファーフニルとリオーネが派手にケンカして瓦礫になってしまった石塀だった。


「オ、オレじゃねーぞ! この変態トカゲ女が悪いんだ!」

「誰が変態トカゲ女ですか、このケモノ女!」


 この二人の相性は最悪だ、なまじ強い者同士なだけに収拾もつかない。


「あのー、オクタヴィアさん。ひょっとして……これ、私が払う事になるんですか?」

「当然です、あなたの身内がやらかした事、連帯責任でも保証人でも書類は何でもいいからきっちりと弁償してください」


 オクタヴィアの冷徹さに磨きがかかっている。

 彼女の中の私の評価はもう底辺を通り越して奈落に向かっているようだ。


「はあ、困りました」

「ご主人様、一体なにがあったのですか? この様な陰険メガネ女、我が消滅してくれようぞ」

「やややややめてください! これ以上問題を大きくしないで」

「我はご主人様の下僕、困った事がありましたら何でもお聞き致します」


 その気持ちは有り難いがこの石壁の弁償代はかなり高くつきそうだ、これは私の中で初めての借金生活になるかもしれない。


「貴女達が暴れて壊した石壁の弁償代、いくらになると思ってるんですか!? これ以上私を困らせないでください」

「ふむ、そこの石壁を直す金があればいいのだな、黄金で良いか?」

「はいっ?」

「ご主人様、しばしお待ちくださいませ、我がすぐに用意致します」


 そういうとファーフニルはドラゴンの姿になり高速で山の方向に飛んで行った。


「すぐ用意と言っても……うぐぉおおおお!!」


 忘れた頃にやってくるアブソリュート様の呪いだ!

 まあ女性二人を触手攻めして一人は快感を感じたなんてなったらそりゃあこうもなる。


 今回の呪いは触手でギリギリギリと縛っては解くを何十回と繰り返された。

 縛る側は私の得意技だったがまさか縛られる側になるとは思わなかった。

 これはかなりキツイ痛さだ、これが気持ちよさに感じるなんて……間違いなくファーフニルは変態だと言える。


「あーあ、テンタクルスまた変な事になってる」

「自業自得です、そのまま放っておきましょう!」


 そこに回りの様子がおかしいと思って外に出てきたパラケルススとトモエにエリザベータまで加わった。


「テンタクックス―、何をやってるのだ?」

「ああ、変なものを食べておかしくなってしまった……死にたい」

「テンタクルス様、一体どうなされた?」


 もうややこしくするポンコツばかり増えて私は呪いの痛みどころではなかった。

 そんなやり取りをやっている中で再びファーフニルが大きな袋を抱えて飛んできた。

 ファーフニルの袋から落ちた物がパラケルススの頭に落ちた。


 コーン。


「痛いのだー、一体何なのだ? ってこれは……ピカピカの金なのだ!」

「ご主人様―。我の持つ財宝を持ってまいりました、コレだけあれば修理できますか?」


 ファーフニルはなんと、両手いっぱいの黄金や財宝を持って飛んできたのだ!

 足りるなんてものじゃない、宿舎全部新築にしてもまだまだおつりが帰ってくるくらいだ!

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