58 リオーネVSファーフニル
私はウー・マイ、ブブカと別れ、自分の部屋に戻る事にした。
「ご主人様ー。どちらへ行かれるのですか? 我もつれていってくださいませ」
こいつはファーフニル、最強のドラゴンを名乗る変態だ。
なぜこんな事になってしまったのかというと、ウー・マイとブブカがファーフニルに襲われていたのを偶然私が助けてやった事が原因だ。
その時に触手で縛る攻撃をしたのをこのファーフニルが変な世界の扉を開けてしまったようで、それ以来彼女は私の下僕になると言っているのだ。
「ああーん、無視して放置プレイも良いけどー、もっと相手してくださいー、いじめてくださいーん」
「あのー、少し黙っててもらえませんか?」
コイツとの戦闘で魔力を使い果たした私は歩いて戻る破目になっていた。
私の究極魔法インフェルノブレイズはレベル30のクソザコに落ちぶれた私にとっては魔法力の大半を使い果たす大魔法なのだ。
しかしいざ歩くとなると、この山はどれ程遠くにあったのだろうか?
私はポンコツ女の群れから逃げたくてただひたすら遠くを目指して飛んだので周りに何があるかとかは全く考えていなかった。
ああ、足取りが重い。
明日は間違いなく無断欠勤扱いになってオクタヴィアにネチネチ言われるんだなー。
そう考えるとますます足取りが重くなってきた。
……と思ったら、私の背中におぶさる形でファーフニルが覆いかぶさっていた!
「ご主人様ー、相手してくださいませー」
「いい加減にしてください! 私は朝までに家に帰らないといけないんですっ!」
「なーんだ、そんな事でしたら我におまかせくださいませっ」
そう言うとファーフニルは本来のドラゴンのスタイルに戻った。
「ささっ、どうぞご主人様。お乗りくださいませ、快適な空の旅をお約束致しますわ」
ファーフニルはそう言うと伏せた姿勢になり、私を背中に乗せようとしていた。
まあ歩くよりはマシなので今回は乗せてもらう事にするか。
「わかった、では頼むよ」
「はああうううううん、ご主人様が我の背中にぃいい!」
やっぱりやめようかな……。
乗りかけてから降りようとするとファーフニルは巨体でジタバタしていた。
「ああーん、じらさないでぇー、じらすのはベッドの中だけにしてー」
私はこの変態ドラゴンの首を絞めてやりたいと思った。
ダメだ、コイツの背中に乗りたくない。
だが時間が無いので乗るしかないのだが、私は渋々背中に乗った。
「ああーん、ご主人様に足で踏まれて幸せですぅー」
「もういいから早く飛んで下さい、もうすぐ夜が明けてしまいます」
「わかりましたよー、ご主人様の意地悪ぅー」
ファーフニルは私を乗せると空高く舞い上がり、高速でバーレンヘイムの空を飛んだ。
そのスピードは全速力で私が飛ぶよりもよほど早かった。
流石はレベル70クラスのドラゴンといったところか。
そのスピードのおかげで私は自分の家の近くに一時間少しで到着できた。
◆◆◆
「アレ? オレ達どうしてたんだ?」
リオーネは正気に戻ると部屋の中の散々たる有様を見ていた。
「確か、鍋を食べていたのまでは覚えているんだが、その後の記憶が何もない……」
周りには死んだように眠っているパラケルスス、オクタヴィア、トモエの三人が転がっていた。
「テンタクルスー? どこ行ったんだー?」
リオーネは姿の見えないテンタクルスを探しに外に出かけた。
そこに丁度巨大なドラゴンが降りて来る姿が見えた。
「あ、リオーネさん。大丈夫ですか?」
「え……ドラゴンの背中からテンタクルスの声??」
私はどうにかファーフニルの上から飛び下り、宿舎の前の広場に着地した。
その直後、ファーフニルも着地し、ドラゴンから女性の姿に変化した。
「あら、ご主人様。そこの品の無さそうな獣女は誰でしょうか?」
それを聞いたリオーネがカチンときたらしい。
「おう、テンタクルスよー、そこの性格の悪そうな緑トカゲ女は誰なんだ?」
「誰が……性格の悪そうな緑トカゲだ、この獣ふぜいが!?」
「なんだと。テメエ、テンタクルスの何なんだよ!」
ああああー、変態ドラゴン女と狂暴ライオンの女獣人がにらみ合いを始めてしまった。
私は一体この二人をどうすれば良いのだ?