44 トモエ・カンナギ
「貴様ぁ! この不埒者! ここに何をしに来た!?」
「まままま待って下さい、これには深ーいワケが」
「問答無用!」
黒髪の鬼娘は腰のカタナを引き抜き私に切りかかってきた。
彼女は話を聞くという事を知らないのか!?
「のわーーー!」
私はどうにか触手を伸ばして彼女のカタナを絡め取る事に成功した。
だが、触手はそれだけでは済まない事をしてしまっていた。
「キャアアア、何をするだぁー!」
「へっ?」
私の触手は自己防衛の為とはいえ、黒髪の鬼娘の全身を縛り、形のいいおっぱいをくるりと回るように絡みついていた。
「このような公共の面前でこのような不埒者に辱めを受けるとは、カンナギ家の名に泥を塗ってしまった……。何たる恥辱!」
「だから誤解なんですってば」
私はどうにか触手を引っ込めた。
これでどうにか済むと思ったのだが、事態は更に悪化してしまった。
鬼娘はその場に座り込み、恥ずかしげもなく上に来ていた服を全部脱いでしまった。
そして形のいいおっぱいがとても健康的で魅力的に見えた。
だが、そんな場合ではない、彼女はカタナを逆に持っていた。
「かくなる上は、この恥を拙者の腹を掻っ捌く事でお詫び申し上げる!」
「わーーーダメダメダメダメ!!」
「離せー、このような恥をかいてまで生きていくわけにはいかんのだーっ!!」
私はどうにかこうにかで彼女から刀を取り上げ、全身を触手でグルグル巻きにして動けなくした。
「少しは落ち着きましたか?」
「何たる恥辱、このような変態に負けるとは。拙者はまだまだ未熟」
「だから変態じゃないんですってば」
どうにか話が落ち着けばいいんだが、と思っていたその時、またまたまたまたまたまたアブソリュート様の呪いが私を襲った。
まああれだけ縛ったりしてしまったらエッチな事をしたと認識されても仕方ない。
「ギャギャガギャアアアーーー!!!」
アブソリュート様の呪いで今度は千切れる寸前まで全身を縛られて解かれて縛られてを何百回と繰り返すような痛みに襲われた。
「何なのだ……この面妖な光景は」
「あのねェ、あのテンタクルスは女性にエッチな事をするとああなってしまうのョ」
エリザベータは黒髪の鬼娘に私の事を説明していた。
「そうなのか……それは難儀だな……って、お前は、拙者の初めての接吻を奪った女!」
「エリザベータです、どうもよろしくお願いしますゥ」
「はぁ、お前、昨日の女なのか? 全然態度が違うではないか」
黒髪の鬼娘は今ある物事を整理するのに混乱していた。
そして私は数分苦しんだ後ようやくアブソリュート様の呪いから解放された。
「あのですね、エリザベータさんはミイラから復活したばかりで調子にのってたんですよ」
「そうなんですゥ、妾なんて所詮は役立たずでここに来ても仕事のできないダメ吸血鬼なんですゥ。あー死にたい」
「信じられん」
黒髪の鬼娘は茫然としていた。
それよりどうにか仕事の話をすすめないと。
◇
「なるほど、つまりはこのエリザベータ殿が引き籠ったまま鍵が無くなってしまいミイラになってしまった。それを元に戻そうと風呂に沈めていた所に拙者が鉢合わせてしまったというわけだ」
「そうなんです、これで納得していただけましたか?」
「出来るわけなかろう! 拙者はまだ結婚もしていない殿方に裸体を見られてしまったのだぞ!!」
「だからそれはすみませんでしたって」
「すみませんでしたでは済まぬぞ。其方、責任を取って貰わんと」
「責任って何ですか?」
黒髪の鬼娘がもじもじしながら顔を真っ赤にして私の方を見たり見なかったりで小さな声で言った。
「拙者を、其方の伴侶にしていただきたい」
「ええええーーー!! 伴侶って、つまり妻にしろというのか!?」
「拙者、『トモエ・カンナギ』と申します。貴方様、どうぞ不束者ですがよろしくお願い申し上げます」
「あ。あの……もし、断ったら?」
「その時は責任を取ってもらう為、絶対に殺します!」
また厄介なのに惚れられてしまった、私は一体今後どうすればいいのだ!?




