43 お掃除をしましょう
結局私は朝までまともに寝れなかった。
エリザベータは部屋の隅っこでのの字を書いている。
「エリザベータさん、出かけますよ」
「やーョ、面倒くさい」
虚勢を捨てた途端性格代わりすぎだろう、やる気も無くこのままではニートコースになりかねない。
「貴女の今の立ち位置は住所不定無職なんですよ!」
「え、えええー! 闇の貴族と呼ばれた妾が住所不定無職ー!!」
この言葉は彼女にかなりの大ダメージだったらしい、気力の抜けたエリザベータは真っ白に燃え尽きながら口から魂が抜けかけていた。
そして灰になりかけた彼女は形を保てずその場でスライムのような姿になっていた。
「エリザベータさん、魂抜けかけてますって!!」
私は彼女をゆすってどうにか魂を体に戻す事にした。
魂が口の中にどんどん戻っていく。
そしてシュポンと魂が体に戻るとゲル状になっていたエリザベータは元の美女にもどっていた。
マズイ! 女性に触れているとまたアブソリュート様の呪いが発動する!!
……だが、その後私には何の呪いも襲いかからないかった。
「ううう、妾なんて、どうせ住所不定無職でこの世界にいる価値ないんだ。それならまたいっそなにも飲まず食わずでミイラになってやる、ミイラになって周りを怖がらせてやるー」
マジでどうなってるのよ、このダメ吸血鬼。
「うううーうるさいのだー! 寝てられないのだー!!」
「あ、パラちゃんおはよう」
「テンタンスーおはようなのだー」
このダメ吸血鬼に振り回されている間にもう朝である。
仕方ないので私はエリザベータの首に縄をつけてでも庁舎に連れていく事にした。
「いーやーだー、オクタヴィア怖いーーー!!」
一体彼女は何をやったのだ? エリザベータはオクタヴィアをかなり怖がっていた。
それでもどうにか私はエリザベータを庁舎まで連れてきた。
パラケルススは資料のまとめと片づけを始めてくれた。
「あら、変態ロリコン悪趣味触手魔族さん。おはようございます、また女連れですか。いい御身分ですね」
「あのー、オクタヴィアさん。彼女に見覚え有りませんか??」
「何を言って……えっ!? エリザベータ……さん??」
「は、はい、お久しぶりです。オクタヴィア……さん」
エリザベータがとてもしおらしい態度をしていた。
彼女は家の中では態度が大きくできるが外に出ると途端に態度の小さくなる典型的な内弁慶の外地蔵といったタイプのようだ。
「テンタクルスさん、一体どうやったら彼女が元に戻ったんですか??」
「浴槽に沈めておいたら知らない間にこうなった」
「信じられない……」
なんだかんだでエリザベータは書類を作る事で庁舎の私の部屋の隣の空き部屋に住む事になり、仕事は適任者のいなかった庁舎総務統括に抜擢された。
「さて、エリザベータさん。復帰そうそうで何ですが、お仕事をしてもらいます」
「ㇵイッツ!! 分かりましたっ!!」
コレだけ態度が違うともう呆れるを通り越して笑いが出てきそうだ。
「とりあえずそこのテンタクルスさんと一緒に貴女の閉じこもってた部屋の大掃除をお願いします」
「え、ええー、あの部屋ですか!?」
「そうです、貴女のせいで誰もあそこに入れませんでしたから」
まあ仕方ないと言えば仕方ない。
そして私もパラケルススと一緒に大掃除を手伝う事になったのだ。
「詳しくは清掃班のリーダーのトモエさんに聞いてください」
「わかりましたっ!」
トモエとは誰なのだろう? 私はまだここにきて数日なので庁舎のスタッフがどんなのがどれだけいるのか全部は把握できていないのだ。
「とにかく清掃班に向かいましょう」
「わかりましたっ!!」
エリザベータは外では常にこんな態度らしい。
いいえと言えない性格、これは確かに色々とため込むわけだ。
そして私達は清掃班の所に到着した。
「こんにちわー、オクタヴィアさんにこちらに来るように聞きました」
「どうぞお入りくださいませ……って、あーーー!! 貴様は!?」
私達を出迎えたのは黒髪の鬼娘だった。
トモエってコイツの事だったのか!?