表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/169

42 バンパイア イズ 豆腐メンタル

 毎度毎度のアブソリュート様の呪いで酷い目にあった私はようやく立ち上がる事が出来た。


「アーッハッハッハッハッハ、とても面白いモノが見れたわョ」


 コイツ、人の不幸で笑うタイプだ。

 エリザベータは空中に浮いたまま寝転がって私を見ていた。

 この女、かなり性格が悪そうだ。


「ねェ、お酒無いの? お さ け」

「ありませんよそんな物」

「あら、貴方堅物なのねェ、仕方ないからとっておきの物出そうかしら」


 そう言うとエリザベータは部屋の天井に蝙蝠の羽で飛び上がり、天板を外した。


「確か、ここに置いてたのョ、あったあった」

「何故貴女がこの部屋の勝手を知ってるんですか?」

「あら、そりゃァこの部屋が元々(わらわ)の部屋だからョ」


 そういえばそうだ、この部屋は宿舎でもグレードの高い執政官用の部屋だった。

 天井裏から酒を取り出したエリザベータはラッパ飲みで酒を飲みだした。


「アハハハッハ、ねェ、貴方も飲みなさいョ」

「い、いえ。私は遠慮します」

「あら、貴方下戸なの?」


 冗談じゃない、私にとって酒なんて水みたいなものだ。

 飲もうと思えばいくらでも飲める、しかしそれで下手に巻き込まれたくないのだ。


「テンタンタンスー。ワシも飲みたいのだ」

「ダメです、お子様はジュースか水でも飲んでなさい」

「えー、ケチー、ワシも飲みたいのだー! 飲みたいのだー!!」


 どうやらパラケルススはホムンクルスになる前はかなりの酒好きだったようだ。


「アラアラ、お嬢ちゃん。それじゃァお姉さんが飲ませてあげましょうかァ」

「ダメだっての!!」


 しかしエリザベータはパラケルススに酒をそのまま飲ませてしまった。


「うへぇ。ワシ何だかクラクラするのだー、元の身体だとこんな事はありありえないのらー」


 言わんこっちゃない、パラケルススの今の身体は子供と同じだ。

 この身体でアルコールを入れたらこうなるのも当然である。


「アラー、パラケルススちゃんぶっ倒れちゃったァ」

「貴女が飲ませるからでしょ!」

「そんなこと言ったってー、こうなると思ってなかったんだから仕方ないでしョ」


 パラケルススは顔を真っ赤にしてその場で寝てしまった。


「いい加減にしてください! 貴女は一体何を考えているんですか!!」


 流石に頭にきた私はエリザベータを大声で強く注意した。


「え、えええー。そこまで強く言わなくてもいいじゃないのォ」


 先程まで享楽的で強気だったエリザベータがいきなり涙目で泣き顔になっていた。


「あーあ、どーせ(わらわ)はダメな奴ですよ。引き籠った挙句に出られなくなってミイラになってしまったんですし、あー死にたい」


 ひょっとして私は彼女の変なスイッチを入れてしまったのかもしれない。

 そう思ったのだが、彼女は部屋の隅っこでブツブツ言いだした。


「どうせどうせどうせどうせ(わらわ)なんて眷属も一人もいないボッチで一族の落ちこぼれ、男にも見向きもされないダメダメなんだわ。あー死にたい死にたい」


 そのどんよりした後ろ姿は絶世の美女にあるまじきトホホぶりだった。

 まさに素材の無駄遣い。


「そんな事ありませんよ、貴女はとても魅力的な女性です」

「本当にィ?」


 ダウナーな上目遣いでエリザベータが私を見上げていた。


「ほ、本当ですよ。貴女はとても魅力的です」

「嘘じゃないよねェ、貴方は(わらわ)が好きかァ?」

「はい、好きですよっ」

「本当に本当? それじゃァ。抱いて」

「へっ!?」


 それだけは勘弁してくれ! これ以上アブソリュート様の呪いは喰らいたくない。


「それはっ! それだけは勘弁してください!!」

「嘘なんだ、やはり嘘なんだっァァァあああ! (わらわ)なんて魅力が無いから抱いてもらう事も出来ないんだ、やはり死ぬー、死なせてー」


 何だこの豆腐メンタルは、ひょっとしてあの偉そうな態度はこの豆腐メンタルを隠すための虚勢だったのか。


「死ななくていいですから、貴女は可愛いです、美しいです」

「それじゃあ抱いてョ」

「だからそれは無理ですっ」

「やっぱ死ぬー!!」


 ……私は精神不安定な彼女をなだめるのに結局朝方までかかってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白いと思ってくれましたらブクマ・☆☆☆☆☆ポイント評価お願いします!

ゆーたん(たけのこ派)

別作品です、こちらもどうぞよろしくお願いします。

双子が姉妹の令嬢として再度生まれて人生を入れ替えてやり直す話です

<運命のゆりかご・生き別れの双子令嬢は猫に導かれ互いの人生をやり直す

元ゲームクリエイターが転生して救世主になるファンタジーです

『転生クリエイターのマップチェンジャー』圧倒的な魔力でチート能力を使い一瞬で天変地異を巻き起こす元ゲームクリエイターの転生者はハズレスキルの地面作成(マップチェンジ)を使いこなし救世主となる!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ