40 浴場と謎の美少女達
私は宿舎の自分の部屋にパラケルススを連れて帰り、乾燥ミイラを持って帰った。
「ここがワシの新しい研究室になるのかー」
「あまり無茶な事はしないでくださいよ、一応共同住宅の宿舎なんですからね」
まあパラケルススの研究室はここに作られてもはた迷惑なので庁舎のミイラが見つかった開かずの扉の部屋を改装すればいいだろう。
ここは食う寝るところに住むところと考えればいい。
とりあえず子供用の服も用意しなくてはいけない上、私の給料が入るのは次の月である。
当面はどうやって生活するかを考えると私は頭と胃が痛くなってきた。
「テンタククスー、そのオバケどうするのだ?」
「とりあえずは水につけてみようと思います。幸いこの部屋には風呂もありますから」
私は部屋に備え付けの風呂の中に庁舎から持ち帰った乾燥ミイラを沈めてみる事にした。
バスタブに水を入れる前にこの干物を入れようとしたが、入らなかった。
どうやら乾燥してカチカチに硬くなってしまい、関節などが曲がりようがない。
まっすぐな形だと風呂に入れるには高身長でバスタブには入らなかった。
「仕方ない、やはり公衆浴場に持っていくか」
「ワシは今日は疲れたのでここで寝てるのだー」
パラケルススはそう言うとすぐにいびきをかいて鼻ちょうちんを作りながらさっさと寝てしまった。
まったく人の苦労も考えないで気楽なものである。
「さて、浴場に行きますか」
私は一通りの準備をして宿舎の一階にある浴場にこの大きな干物を持って向かった。
◇
浴場は結構広く、今の時間はだれも使っていなかった。
この浴場は一応男湯と女湯に分かれているが時間によってそれが入れ替わるらしい。
清掃には時間を要するのでその間は利用できないが基本的には源泉かけ流しで一日中いつでも利用できるのだ。
今の時間はこの場所は男湯の時間である。
私は服を脱ぎ、干物を浴室に持って入った。
そして、大きなバスタブの中に乾燥ミイラを沈めた。
「ふー、疲れた」
私はこの数日の疲れを風呂で癒す事ができた。
ここ数日は目まぐるしいくらいに忙しく、とても大変だった。
それ故に私は風呂の中で疲れて寝てしまっていた。
その後私が気が付いた時は数時間が過ぎていた。
いかんいかん、ついついウトウトしてしまった。
不幸な事に私が寝ていた間の時間にこの風呂は女湯の時間に変わってしまっていた。
なにやら人の気配を感じる。
そのシルエットが見えた瞬間、その人物がガラッと開けた扉から見えたのはあられもない姿の黒髪の美少女だった。
「…………」
「……キャアアアアああーーーーー!!」
最低最悪のタイミングだ、私が風呂から上がろうとした瞬間、ちょうど彼女と鉢合わせてしまった。
彼女は見事に私の裸体をダイレクトに見てしまったのである。
「ま、待ってくれ!! これは誤解だ!!」
「この不埒者ぉー! そこに直れ!!」
「だから誤解だって!!」
黒髪の美少女は憤怒の形相で私を見ている、その頭部には立派な角が生えていた。
どうやら彼女は鬼族の娘のようだ。
「何が誤解だ!! そんな所で女子とまぐわっておるではないか!!」
「へっ?? 女」
「フフフ……」
そこにいたのは銀髪でナイスバディーの妖艶な女性だった。
何故だ何故だ何故だ??
こんな所に女性がいるわけがない、私が風呂に入った時は確かに他には誰もいなかった。
「公共の浴場で不純な男女の交わりをするとは! 恥を知れ、この痴れ者ぉ!!」
「だから私は何が何だかわからないんだって!!」
「問答無用!!」
ブチ切れた黒髪の鬼娘は脱衣所に置いていたカタナと呼ばれる特殊な剣を握り、私に斬りつけてきた!
「天誅ー!!」
「のわー!! 誰か助けてー!!」
その後すぐ、黒髪の鬼娘のカタナが私に振りかざされた、私はどうにか白刃取りでそれを止めたのだが、このままではマジで風呂場で惨殺される!!!
マジで誰か助けてくれ!!
「女の敵! 死ねぇー!!」
「うわー! 死ぬー!!」
私がカタナで真っ二つにされそうになった瞬間、妖艶な美女がその刀を受け止め、黒髪の鬼娘を片手で顎に指をかけていた。
「子猫ちゃん、オイタはダメヨォ」
謎の美女は薄笑いを浮かべ、全裸のまま鬼娘にキスをした。