34 美少女ホムンクルスの大誤算
「若いって……すばらしーのだ!!」
「だからアナタはさっさと服を着てくださいって」
パラケルススは錬金術実験で自らをホムンクルス美少女の肉体に移し替える事に成功した。
それはいいのだが、早く服を着てほしい、このままでは目のやり場に困る。
「ちぇっ、いちいちやかましーのだ、そこにある服を持ってくるのだ」
「これ、ですか?」
「違うのだ、その隣のピンク色のやつなのだ」
「何故同じのが三つもあるんですか?」
パラケルススが持ってこいと指示したのはピンク、青、黄色の三色の色以外デザインが全く同じような服だった。
「プリティナファンなら全部そろえるのは常識なのだ! そしてワシはティナブロッサムちゃん推しなのだ!!」
この元ジジイ、一体何を言っているのだ??
「はやくいいからそのティナブロッサムちゃん変身セットを持ってくるのだ!」
「あ、ハイ。わかりました」
私は仕方なくフリフリの魔女ともメイドともつかない謎の衣装を持ってきた。
そしてパラケルススはそれに着替えたのだ。
「やはり思った通りなのだ! ワシのこのホムンクルスの身体、ティナブロッサムちゃんとほぼ同じ体系、スタイルだったのだ!」
私はワケが分からなかったが、本人はとても嬉しそうなのでツッコミを入れるのはやめておいた。
そして服を着替えたパラケルススはドヤ顔で謎の円盤の入った薄い箱を持ってきた。
「これがワシの最推し、『パステルプリティナ』のデイブイデーなのだ!」
「へ? コレ、何ですか?」
「神聖なプリティナをこれ呼ばわりするでないのだ! プリティナは尊いのだ」
ますますこの元ジジイがワケわからなくなってきた。
パラケルススはドヤ顔でプリティナシリーズについて解説してきたが、初代からパステルまでととかいう話で二時間近くは無駄に付き合わされた。
「ワシが美少女になりたかったのはこのティナブロッサムになりたかったからなのだ!」
「ヘーソウデスカ」
「そしてワシはこのホムンクルスの身体になって野望を叶えるのだ!」
「アナタは一体何をするつもりなんですか?」
「勿論、美少女とキャッキャウフフするハーレムを作るのだー!!」
元々ハーレムを持っていたが全てを失った私はすこぶる興味ない話だった。
だがパラケルススはそれを実現しようとしているのだ。
「まあ好きにしてください」
「お前はつれない奴なのだ、ワシはお前を好きになれないのだ」
まあアナタに好かれても嫌われても私はすこぶるどうでもいいんですけどね。
「は! しまったのだ!! ワシとした事がこれは考えていなかったのだ」
「どうかしましたか?」
「高くて上に置いた薬品の瓶が取れないのだ、取ってほしいのだ」
どうやら元のジジイだった時のパラケルススの身長が高めだったのに対して今の少女の身長では薬品の瓶が取れないらしい。
仕方ないので私は代わりに薬の瓶を取ってあげた。
「オマエ良い奴なのだ。お礼に少しこの薬品を分けてやるのだ」
「それは何ですか?」
「最強の惚れ薬なのだ! 昔作ったけど硬くて瓶が開けられなくなって諦めていたのだ。今のワシのパワーは53万パワーなのだ」
そういうとパラケルススは瓶の蓋を開けて私に中身を見せてきた。
辺りには凄まじい臭いが立ち込めている。
「この惚れ薬はワシの最高傑作の一つなのだ。一度使えば効果は一生続く」
何それ怖い。
「使い方は簡単、このように一度飲んで……」
惚れ薬を飲み干してしまったパラケルススはその場にぶっ倒れてしまった。
しかし、本来惚れ薬って相手に飲ませる物では無いのか? この元ジジイ、馬鹿なの!?
しかしそのまま置いておくのも悪いので私はその体を抱きかかえてベッドまで運んであげる事にした。
「ン……オマエは?」
「目を覚ましましたか? パラケルススさん」
ベッドに運ぶ前にパラケルススは薄目を開け、そして私を見つめてパッチリと目を見開いた。
「オマエ……何ていい男なのだー! ワシはオマエがだーい好きなのだー!!」
「は??」
「ワシ、オマエの為なら何でもしてやるのだ、パラちゃんと呼んで欲しいのだ」
……どうやらこの馬鹿、惚れ薬を間違えて飲んで自爆したらしい。
しかし抱き着くのはやめてくれ!! また呪いを受けてしまう!!!
そして案の定私はアブソリュート様の呪いで地獄の痛みを受ける事になった。