3 皇帝陛下の(元)料理人
テンタクルスの相棒になるポンコツ天才料理人の話です。次までたぶん続きます。
「元皇帝付き特級厨師! 『ウー・マイ』! お前を皇帝陛下暗殺未遂の容疑で捕らえる!!」
「フェ!? 何アルか??」
ここは鉄華地方と呼ばれる肥沃な大地に存在する国『崑』それは豪河と趙江と呼ばれる二つの大河の恩恵を受ける世界最大級の大国である。
崑とは始祖帝『劉克』が立てた国であり、『金玉族』の国である。
始祖帝劉克は流浪の民であった金玉族を統治し、武力をもって幾多の民族を統治し、始祖帝を名乗り、『崑』を建国した初代皇帝である。
崑の民は幾多の種族によって成り立っているが、金玉族はその中でも特別扱いである。
「金玉族にあらずば人にあらず」がこの国の闇であると言えよう。
物語はその始祖帝劉克よりずっと後の話。
ここは特級厨師、味翔と呼ばれた伝説の男『ウー・マオ』の館である。
「ワタシなんも悪い事してないアル」
「やかましい! 自分の胸に聞いてみろ!」
「自分の胸……おーい、ワタシのおっぱいよー、何か知ってるかー?」
このウー・マイという娘は間違いなくアホである!
自分の胸に聞いてみろと言われてわざわざたわわな胸を人前で出して胸に話しかけるアホなのだ!!
「えーい! アホかぁー!!! 本当に胸に聞くバカがどこにおるかぁー!」
「ここにいたアル」
ウー・マイは何が間違っていたのかまるで分っていないようだった。
「ワシは崑の大臣、トウアクである。ウー・マイ、貴様は皇帝陛下の食事番だったのをいいことに……事もあろうか猛毒のカエンドクタケを食事に入れた! これは紛れもない事実、皇帝陛下を暗殺しようとしたものである!!」
「えー……おかしいアルよ」
トウアクは彼女が否定する事は想定済みだった。
何故なら本当に食事にカエンドクタケを入れたのは彼の手下である。
「ワタシ、カエンドクタケだけでなくヒネズミの皮、ソクシソウに冬人夏草も入れたアル」
この告白にトウアクは盛大にずっこけた!!
「きききキサマは本当に、陛下を殺すつもりだったのか!?」
「えー違うアルよ、皇帝陛下に父さんの奥義を披露しただけアル」
「一体どういうことだ!?」
ウー・マイがドヤ顔で話し出した。
「父さん言ってたアル。体悪い人、体の悪いとこと同じもの食うといいアル。皇帝陛下全身ダメダメ、なので毒を以て毒を制すをやっただけアル」
「はぁ???」
「毒は陰、セイヨウの言葉でいう『マイナス』アル。算術で『マイナス』と『マイナス』を掛け合わせると『プラス』になるアル」
「お前は何を言っているのだ??」
「つまり、毒の『マイナス』と毒の『マイナス』を掛け合わせると『プラス』の陽になって陛下の身体元気になるアル! これぞウー家の秘術アル!!」
「そんなワケ有るかぁあああ!!! 即刻この娘をひっとらえろ! 一族郎党処刑だ!!」
「イチゾクロウトウ……アンタもスケベアルネ。このスケベニンゲン」
ウー・マイはアホである。
しかし天才であるのも間違いはない。
「貴様、ワシを愚弄しておるのか?」
「大臣サン、ワタシ可愛いから一族に加えたいって意味でショ。第三婦人くらいなのかなぁ。でも、スケベな事あまりしたくないアルよ。こんな事してまでワタシが欲しいって……ワタシってやっぱり国一番の美少女アル」
色目遣いにウー・マイがたわわな胸を強調してきたのを見て、トウアクは開いた口がふさがらなかった……。
「違うわぁアア!! 一族郎党とはお前の家族全て皆殺しという意味じゃあああ!!」
「えー酷いアル! アンタ人間じゃないアル。鬼アル悪魔アル!」
「……でもワタシ以外父さん死んじゃって誰も残っていないアル」
もうこのアホ娘の発言を気にしていたら頭がおかしくなりそうだとトウアクは思った。
「つべこべ言わずに、さあ、大人しく捕まって伝説の七厨具を渡してもらおう!」
「アレは父さんが仲間と鉄華全土を旅して集めた宝アル。絶対渡せないアル!!」
トウアクの指示で、ウー・マイを囲んでいた兵士たちが一斉ににじり寄ってきた。
「者ども!かかれっ!!」
「仕方ないアル。父さんの伝説の厨具の力見せてやるアル!」