2 絶対結界「ダブルスタンダード」
「納得できません! 魔王様! 私と彼とで決闘をさせてください!!」
「はぁ? そういうの古いんですけどぉ、もっとヘイワに話し合いで済ませませんかぁ?」
こいつはどう見ても弱い、どう考えても実力では無くコネで四天王に推薦された無能だろう。
そうでなければ実力主義の世界の魔界で、決闘と聞いてそれを受けないわけがない。
「テンタクルス……おぬしの言わんことはわからんではない」
「では! 私がもし勝てたならば先程の件を全て無かった事にして下さい!!」
「センパイもわからない人ですねぇー! アンタが全てをオレにムジョウケンでゆずってさっさと消えるのが一番セイカイなんですよぉ。セケンがそれをのぞんでいるんすってば」
ポリコールのしゃべり方にはまるで学を感じない。知らない言葉を適当に並べればそれっぽく聞こえると思い込んでいるだけのバカ丸出しだ。
「魔王様! 魔界は実力の世界、私が彼に負けるようなら素直に命令に従います。しかし私が彼よりも強ければ魔界の秩序は私が守るべきだと言えます!」
「テンタクルスよ……わかった。今までの其方の功績に免じ、一度だけ決闘を許す」
これなら私が実力で負けるわけがない! 私のレベルは89、魔界の四天王でも『炎のインフェルノス』がレベル75、『暗黒のジェネシス』がレベル81、『万識のアーカイブス』がレベル85、現在最強の魔王『完全のアブソリュート様』が94である。つまり私は四天王最強なのだ!
「やめましょーよ。ケンカいくない。今はボウリョクヒョウゲンはやめるべきだと高次元の方々もおっしゃっておられますからさー……やめないならオレにも考えがありますよ!」
こいつの後ろ盾は謎の存在、高次元と呼ばれるもののようだ。
魔王様ですらその存在には怯えていた。
「うう……ぎゃぁぁア!! 我に干渉するなぁ!!」
魔王様が苦しんでいた……高次元の者が干渉したらしい。
「あーあ、高次元の方々に逆らうとひどい目にあうのに」
よく見ると魔王様の持っていた魔剣ディスブリングが消えてきた。
高次元の者が一瞬で剣を消したらしい。
創世より神を屠る剣と言われた魔王の象徴ともいえる魔剣ディスブリングが……高次元の者の干渉とやらで一瞬で消えたのだ!
「だからオレに逆らったらダメなんですよぉ。さっさとセンパイがタイジョウしないからこうなるんっすよ!」
コイツは典型的な虎の威を借る狐だ。
レベルはせいぜい20前半といったところだろう。
こういう世間知らずは鉄拳制裁あるのみだ!
「黙れ、私がお前の相手をする。触手スキルが使え無くてもお前ごときザコには十分だ!」
「あれー? いいんすかー??」
私は一瞬で跳躍し、ポリコールの顔面に軽くパンチを打ち込んだ。
軽いパンチだ、せいぜいレベル50のグレートデーモンが気絶する程度のものだ
「ブグォォォ!!」
ポリコールが壁まで吹っ飛ばされた、コイツ弱すぎだろう。
駆け出しの身の程知らずの人間の女勇者でも、コイツほど弱い奴はいなかった。
「殴った……オレを殴ったぁ! ママンにもぶたれた事ないのにぃぃ!!」
コイツ、最低だ……弱すぎの上にヘタレ。
こんなのが魔王軍四天王になんてなったら、魔界の恥としかいえない。
「テメェ……オレを怒らせたな! ブザマに踏みにじってやるよ!!」
こういうやつは態度だけはデカい。
しかし実力が全く追い付いていないのが定説だ。
「絶対結界・ダブルスタンダード!!」
コイツは結界形成能力だけはあるらしい、しかしその程度で何が出来るというのか。
「結界なんて私の強さで打ち砕ける、それで身を守ったつもりかぁ!」
先程は様子見の軽いパンチだったがそろそろ本気を出す事にした。
サウザンドスラッシュで一気に決めてやろう!
「食らえ! 我が奥義サウザンドスラッシュ!!」
「ムダだよ! テメェはもう動けないんだよ!!」
私はポリコールに踏みこんで連続攻撃を決めようとした!
……しかし何かがおかしかった。
私の攻撃が一切出せないのだ!!