19 最強無比の女将軍!?
私達は食堂に向かった。
食堂は一階の大きく作られた別館に存在した。
見た目はまあまあ普通である、ちょうどお昼時だったので他にも利用者はいた。
「ここが食堂ですか」
「そうです、アタシは普段使いませんけどね」
普段ここを使わないという事は、オクタヴィアは持参するタイプなのだろうか。
私は普段から外食が基本だった、というよりも嫁が大体何かを作ってくれるので食事に事欠いた事は無かったのだ。
「それで、ここの食事代はどれ位なんだ?」
「知りませんよ、普段使いませんから。今アタシは持ち合わせありませんからね」
ここは私が出すしかないようだ、最初からそういう風に目論んでいたのかもしれない。
まあ給料は普通に出るだろうから最悪は経費で落としても良いだろう。
「そこそこ人がいるようだな」
「そのようですね」
本当にそっけない、塩対応で取り付く島が無いというのか……。
「とにかく何か頼もう、メニュー表はどこにあるのかな」
「さあ、わかりません」
探そうともせずわからないという態度、嫌われるにも程があるだろう。
辺りにはメニュー表らしいものも無い、ひょっとして選べない全部同じ物が出されるタイプの軍の食堂と同じなのか?
いや、それにしては統率が無さ過ぎる、私はオクタヴィアを座らせたまま食事の提供をしている方に歩いてみた。
「はいはい、兄さん何にするんだい?」
「いや……ここ初めてなので」
「そうかい、壁の物を見て注文しな」
そう言われて壁を見ると汚い字でメニューが書かれていた。
Aセット 300ゴールド
Bセット 450ゴールド
Cセット 550ゴールド
Sセット 1,000ゴールド
まあ定番のセットしか置いてない……はずの所で私は自分の目を疑った!
サラダ……10,000ゴールド
???? サラダが一番高い??? サラダって付け合わせでついてくるものではないのか??
「あの……サラダってなんでこんなに高いのでしょうか?」
「おんや、まー。兄さんここ来たばかりかい? サラダは高級品に決まっとるだろ」
決まっていると言われても、元々野菜なんて植えればどこでも生えるもんだろ。
このぼったくりサラダは一体どんな高級野菜を使っているのだ?
「まあいい、ではそのサラダも二つ頼む」
「兄さん? 大丈夫? 今日は特別な日なのかい?」
「まあそう考えてくれ、では二つ頼む」
まあ私の年収からしたら全然懐が痛むものではないはず……ポリコールに全財産横取りされたので今の手持ちとしてはかなりキツイが経費でどうにかなるだろう。
「他には何を頼むんだい?」
「では、Sセットで」
「兄さんお金持ちだねー、Sセットは昨日良い物が手に入ったので特別メニューだよ」
昨日の良い物……? 私はとてつもなく嫌な予感がした。
「リオーネちゃーん! Sセット入ったよ」
「わかった、任せろ!」
リオーネ? 聞き覚えのある名前だ。
まさか最強無比の魔獣将軍リオーネ? まさかそんなわけないよな……あの最強の女将軍がこんな場末の食堂で働いてるわけが……。
リオーネ将軍はアブソリュート様との権力争いで敗れてどことなく姿を消した人物だ。
彼女は四天王に匹敵する力だったが、アブソリュート様と犬猿の仲だったのでお互い相容れる事は無く、直接対決の末敗れたのだ。
食堂の奥には厨房が見えた、そこには……私の嫌な予感通りの物が存在していた。
昨日の私の就任パーティーで出された軍竜焼きの成れの果てがそこには巨大な塊として残っていたのだ。
「オレの肉切り包丁は天下一品よ!」
??? 奥の方から聞き覚えのある声が聞こえた、やはりリオーネ本人の声だ。
そして彼女は鞘から巨大な剛剣を引き抜いた。
オイオイオイオイ! それは肉切り包丁じゃなく獣王剣ビーストカイザーではないか!?
「獣王咆哮剣!!」
技と剣の無駄遣いといわんばかりに魔獣将軍リオーネと思わしき人物は目の前の軍竜焼を削ぎ斬りしていた。