169 ドカーンとやってみよう!
機関車を山の向こう側に通すのに、山の上をえっちらおっちらと異動するのは大変だ。
斜めが多い分だけ荷運びが落ちる可能性もある上、無駄にエネルギーを消費してしまう。
そう考えると真っすぐな線路を敷く方が工事としても楽だと言えるだろう。
「まあ穴掘りならウチに任せときー。ウチは穴掘りのエキスパートやねん」
「穴掘りならギガンテックドリルくんも得意なのだ」
またこの二人はしょーもないことで争っている。
この二人が顔を合わせるとケンカばかりになっているのは気のせいだろうか。
「あの、アリアさん。穴を掘るのは良いのですが、どういう計画で掘り進めるのですか?」
「そりゃあもちろん、手とスコップとつるはしで頑張って掘るだけや、他に方法あらへんやろ」
「フッフッフー、原始的なのだ、きわめて非効率なのだー」
「なんやて! ほなアンタならもっとええ方法あるってのかいな!」
「当然なのだ、ギガンテックドリルくんに任せれば山の横っちょに穴を開けるなんてちょー簡単なのだー!」
それを聞いたアリアが不敵な笑いを見せた。
「アホはアンタや。アンタ、横にトンネル掘る際に気をつけなアカンことって何やと思うねん?」
「アホとはなんだ! 何を気をつけろってのだ!?」
「ホンマチンチクリンは何も知らへんねんなー。トンネル工事で一番気をつけなあかんのは工事中の穴の崩落や、下手したら死んでまうねんで」
「うーむ、それは気づかなかったのだ、でもギガンテックドリルくんなら壊れても修理すればまた使えるのだー」
「アンタ一人だけで穴掘るつもりか知らんけど、そんな穴で線路敷くなんてでけへんねんで」
アリアの言う通りだ。
工事で掘る穴とドリルで掘るだけとは別ものだ。
線路を敷くにはかなり大きな穴が必要だ。
それを大型ドリルがあるというゴーレム一体だけで作るのは時間も手間もかかる。
「なんだとー、それなら戦斗巨人ゴライアス君も使えばいいのだ!」
あの、それやると山そのものが無くなるのでやめてください。
一応山には何も知らずに生きている魔族や魔獣もいるんです。
「あの、パラケルススさん。それをやってしまうと山にいる生き物が全て行き場を失いますので勘弁してください」
「テテンタルルルがそういうなら仕方ないのだ」
あきらめてくれたのは良いのだが、またまた名前を間違っていてもうツッコミを入れる気にすらならない。
しかし安全にトンネルを掘る方法と工期のことを考えなくてはいけない。
そこにのっそりと現れたのは昼寝から目を覚ました寝起きでぼへーっとした態度のファーフニルだった
「ご主人様ー、我も何か手伝えることはありませんかー?」
「あ、ファーフニルさん、大丈夫ですよ。トンネルを掘る方法をみんなで考えていただけですので」
「なんだ、あんなもの我に任せれば一瞬で終わるのに、ドカーンと行きます!」
「え??」
そう言うとファーフニルは巨大なドラゴンの姿に変化した。
「ファーフニル…フォトンブレス!!」
「なっ! 何をやっているのですか!? 貴女は!!」
ファーフニルはエネルギーを蓄え、口から貫通式の光弾を吐き出した。
ズドゴォオオオオオオーン!!!
「ほら、ご主人様、一瞬で終わりました」
「な、何ですかアレは……」
ファーフニルが口から放った貫通光弾は山の裾野から一直線に大きな風穴を開け、その穴は山の反対側まで一瞬で貫いていた。
「すごいやん、何が凄いって、すごい熱で放った光の塊が一瞬でトンネルの壁を溶かしてまた固まってるからめっちゃくちゃ硬い壁になっとるわ」
アリアがファーフニルの作ったトンネルを見て感心していた。
「我、ご主人様の役に立てて良かった……」
安心したファーフニルは再び寝てしまった。
あれだけトンネル工事の方法では言い争っていた時間は何だったのだろうか。
私はファーフニルのブチ空けたトンネルを眺めながら茫然としていた。