166 誰が一番ポンコツか
なんだかんだと鉄道敷設の工事現場にやって来たのは、ファーフニル、パラケルスス、アリア、エリザベータ、トモエ、そしてオクタヴィアだった。
「あら、変態触手魔族さん。こんなに女の子達を集めてどうするつもりですか?」
別に何もしません。
むしろお前ら何をしに来た、このポンコツ軍団。と言ってやりたい。
「貴方様、拙者もお力になりたいと思い馳せ参じました」
「ご主人様ー。我もおいてけぼりは嫌なので来ました」
「妾は寝ていても特にやることも無いのでェ、それなら手伝ってやろうと来てやったからねェ。ありがたく思うんだねェ」
暇つぶしに来ただけならすぐに帰ってください。
しかしこの連中、無駄に能力だけは高いのが尚更荷厄介ではある。
実際その辺りのミノタウロスやサイクロプスよりも華奢な身体なのにそれクラスの鉄骨や資材を簡単に運べる連中だ。
「ご主人様、ここに鉄道を敷設するのですね。それなら一直線にやった方が早くないですか?」
「あ、あの……ファーフニルさん? 一体何をしようというのですか??」
ファーフニルは上空に舞い上がると、女性の姿から巨大なドラゴンに姿を変えた。
「ほえー、あのねーちゃんごっつカッコええやん!!」
アリアがファーフニルを見て目をキラキラさせている。
「では、我の力を見せましょう! ファーフニルブレス!」
ズゴォオオオオオン!!
ファーフニルの口から放たれた巨大なブレスは、目の前にあった森と山を一瞬で一直線に何もない焼けた地面に変えてしまった。
「どうですか、我の力は!」
「そこのポンコツ羽根つきトカゲェ。ブレスの火が残っていて大火事になるでしょうがァ!」
エリザベータはファーフニルがブレスで焼き払った森にブリザードの魔法を放った。
炎が凍り付き、ファーフニルのブレスの残り火は完全に消えた。
「どう? 妾の華麗な魔力こそあのお方に相応しいのよ」
「ぐぬぬぬぬ……」
ファーフニルがドラゴンの角と尻尾を出しながら魔族の姿に変化して悔しがっていた。
私を巡って争わないで下さい。
そのせいで工事が頓挫したら私のせいになってしまうんです。
「ダーリン、工事しようと思ったけど、地面カチンカチンで何も掘れんわな」
「え?」
エリザベータの魔力は辺り一面を凍らせてしまい、工事をしようにも地面が掘れない状態になっていた。
この連中には適度とか、バランスとかいう言葉は存在しないのか……。
こんなに地面をカチコチにしてしまっては、スコップもツルハシも使えない。
「あ、あの……エリザベータさん。こんなに地面がカチコチになってしまうと工事ができなくなってしまいます」
「やはり我の力が必要ではないか、ファーフニルブレス!」
だからそれもやめてください。
ファーフニルのブレスは一瞬でカチコチになった地面を灼熱の焦土に変えてしまった。
「また燃え残りが森に引火してるんですが!!」
そこにトモエが腰の剣を引き抜き駆け出した。
「二人共まるでなっていませんわ。風よりも速い拙者の剣技なら火炎すら消し去ります。旋風裂空斬!」
トモエの剣は一瞬で燃え残りの木を吹き飛ばし、森の火災は一瞬で消え去った。
だが、その旋風は森中の木をなぎ倒し、結局森林だった場所は一面のハゲ山と焼け野原が残っただけだった。
「ま、まあこれだけ拓けたら鉄道工事進めることでけるわ。アンタら、気合入れやー!」
「「オー!」」
まああのポンコツ連中のせいで森は吹き飛んだが、工事はそのまま進める事ができそうだった。
「テテンタクルス―、ワシも役に立つものを持ってきたのだ、ゴーレムくん14号バッサイくんなのだ」
パラケルススはゴーレム14号を起動させると、大森林を瞬く間に切り拓いてしまった。
一番のポンコツの存在を忘れていた私は、ハゲ散らかされたかつて森だった場所を眺めながらこのポンコツ連中を連れてきたことを深く後悔していた。