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164 低反発安眠マット

 パラケルススは間違いなくアホだ。

 しかし頭だけは良い。


 つまり行動力を持ったアホという一番タチの悪いものだ。


 そのパラケルススがまた何か閃いたらしい。

 パラケルススが何かをすると、大抵ろくなことが起きない。


 私はいつものことだろうと冷めた目で彼女を見ていた。


「よく眠れるベッド? 何か睡眠の魔法でもかかっている呪いのベッドですか?」

「それだと寝ることはできても起きれないのだ。テンテンタクルはアホなのか?」


 アホにアホ呼ばわりされる程の屈辱は有りませんよ。


「そうですか、でもそれではどうやってよく寝ることができるのですか?」

「フッフッフー、それはワシの構造力学の研究結果を見ればわかるのだー」


 またいつものドヤ顔と胸張りだ。

 もうこのスタイルは見飽きた。

 そしていつまで経っても、パラケルススは脳と胸は成長しないようだ。


「その研究結果って、何をするんですか?」

「低反発ベッドを作るのだー」

「低反発? それは一体」


 低反発って意味がイマイチよく分からないが、何を意味するのか。


「低反発は文字通り低反発なのだ」


 だからその低反発って何なのかを私は彼女に反発したい。


「ですからもう少しわかるように説明お願いします」

「仕方ないのだ、ワシが説明するからよーく聞くのだ」


 コイツマジでぶん殴りたい。

 いや、触手でがんじがらめにしてオシオキしたい。

 だが私はそんな気持ちを抑えてこのポンコツの言うことを聞いた。


「低反発とは文字通り、跳ね返ってくる力が小さいことなのだ。つまり、普通のベッドに倒れ込むと沈んでしまうのだ。だからと床とか地面、固い板の上などで寝ると全く形が変わらないので体に負担がかかって痛くなるのだ」


 確かにそうだ。

 ベッドは沈み込むのが普通だし、床や板の上で寝たら固くて寝心地が悪い。


「それで身体の沈み込んだ分だけ跳ね返してくるくらいの圧力が低反発なのだ。つまり、沈み込んだベッドが元の形に戻ろうとするので、グッスリスヤスヤ寝ることができるのだ」


 最後の説明がイマイチよくわからないが、なんとなくは想像がついた。


「それで、その理論は分かりましたがどうやってその低反発を作る事ができるのですか?」

「フッフッフー、それはこの天才であるワシがもう試作品を作ってあるのだー。これぞスリーパーくんなのだ」


 そう言うとパラケルススはベッドを用意したが、どう見ても何の変哲もないベッドだ。


「あの。見た目では何も変わらないように見えるのですが……」

「そう思うなら倒れ込んでみればいいのだー。ワシも倒れ込むのだー」


 そう言ってパラケルススは私ごとベッドの上に倒れ込んだ

 すると沈み込んだはずのベッドは何だか柔らかく私達の身体を跳ね返してきた。


「こ、これは?」

「これこそが低反発マットなのだ。沈み込んだ身体をその分だけ元の場所に押し戻そうとする効果、これが低反発なのだ」


 確かにこれは心地の良い感触だ。

 ベッドに沈み込もうとする身体がその分跳ね返される。

 これなら下手にベッドに沈み込んで朝起きると変なスタイルのまま固定ということは減るだろう。


「確かにこれは素晴らしいですね。ですがもしこれを移動用の貨車に乗せると寝過ごしたままどこかに行ってしまうことはありませんか?」

「しまったー! 確かに気持ちよくて眠りすぎたらそのまま目的地を通り過ぎて寝過ごしてしまうのだ」


 やはりこいつはアホだった。

 しかしこの低反発ベッドは確かに便利かもしれない。

 むしろスマートハウス計画のベッドなどをこれにすれば快適生活を送れるやもしれない。


「ちょっと計画見直しですね。ところでこの中身って何でできているのですか?」

「あー、それを持ち上げたらダメなのだー!!」


 私が低反発マットを持ち上げると、その中からは何やら小さな粒がびっしり詰まっていたらしく、一気にザーッとこぼれだしてしまった。


「ひどいのだー、ワシがせっかく頑張って中に詰め込んだのにー」


 パラケルススはその場にへたり込んで大泣きしてしまった。

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