162 機関車量産計画
「やあ、ボクに任せてくれればどんな荷物でも運んでみせるよ」
なんだか癇に障る声だが、意思疎通ができるのは確かにメリットかもしれない。
この不気味な顔の円筒の物体が機関車というやつなのか。
「フッフッフー、機関車ドーモスが完成して鉄道が作れれば他にも同じような機関車を何台も用意するのだー」
ということは、この不気味な顔の物体がもっと増えるのか、それはかなりの悪夢だ。
「あ、あの……それは他の機関車というのにもこの顔をつけるということなのでしょうか?」
「そうなのだ、もう名前は考えてあるのだ。ボードン、バージ―、エドウィン、スペンサー」
そんなキモい物体の名前なんてどうでもいいです。
それより問題は実用性だ。
「それで、この機関車というものだと魔獣車とどれくらい性能が違うのですか?」
「それにはまずトロッコについての説明からなのだ」
トロッコ、まああの鉱山で使われる線路の上を走る小さな箱付きの台車のことか。
あんな小さなものを何のために使うのか?
「トロッコってあの高山で使われる手押し車のことですか?」
「そうなのだ。つまり機関車とは、トロッコを大きくしたようなものなのだー」
いや、トロッコを大きくしただけでは押すのに力が必要でミノタウロスやサイクロプスといった巨大モンスターがいないと成り立たなくなるのではないのか?
アイツらは確かにパワーは有るがが持続力が無いことで有名なモンスターだ。
デカい分だけ消費が激しい。
「あの。トロッコを巨大化したらそれだけ押すスタッフを確保しなくてはいけなくなるのですが、それにそんな長い距離を押せるだけのモンスターいませんよ。力と持続力に自身のある魔獣車の魔獣でもへたばって動けなくなりますって」
「それが素人の考えなのだ、ワシの機関車はデカい魔獣や巨大モンスターを必要としない巨大トロッコなのだ」
その必要としないためのものがこの不気味な円筒型の顔のついたやつなのだろうか?
「どうも話がよく見えないのですが、ここにいるドーモスさんがその魔獣や巨大モンスターの役割を果たしてくれるのですか?」
「その通りなのだ。この機関車ドーモスくんはこの魔石を食べさせることで力を発揮するのだー」
そういうとパラケルススはドーモスの口に巨大スコップで黒い魔石をいくつも放り込んだ。
確かにスコップで魔石を入れるだけなら大型モンスターに頼らなくても通常サイズのやつでも可能だ。
「ポっポッポー!! ボク力がみなぎってきたよ! ちょっと走ってきていいかな」
「行ってくるのだ、この線路はぐるりと一周できるようになってるから体を温めてて来ると良いのだ」
「それじゃあ行ってくるねー!」
そう言うとドーモスは凄い速さで下の部分の車輪を回して走り去ってしまった。
そのスピードは足の速いと言われるモンスターに匹敵するほどだった。
「な、何ですかあの速さは……?」
「フッフッフー、アレが機関車ドーモスくんのパワーなのだ」
パラケルススが自慢するだけのことはあった。
「あー楽しかった。もっともっとボクを走らせてよー」
「もう少し待つのだ、この線路工事が完成したらどこまでも走らせてやるのだー」
そしてパラケルススはドーモスの後ろに空っぽの大型トロッコみたいなものをくっつけた。
「この貨物車に物を詰め込んでやればその先で工事もどんどん可能なのだー」
「なるほど、これなら行った先ですぐ工事できるやん。チンチクリン、アンタなかなかやるやん」
アリアがパラケルススの機関車を素直に褒めていた。
確かに移動先に工事の材料をどんどん運べれば工事は順調に進みそうだ。
「あ、そうや。以前土木班の誰かが言っとった橋を回転する技術使ったらアレの向き変えることできるんちゃうか?」
「なるほど、確かにその通りなのだ!」
その後もアリアとパラケルススは鉄道工事の計画を楽しそうに話していた。