156 温水プールで遊ぼう
パラケルススとアリアはプールで遊ぶのを目的に、工事を進めた。
何がそこまで二人を駆り立てるのか。
「プールのためならえーんやこーら」
「プールのためならえーんやこーらなのだ」
二人とも楽しそうに作業をしていた。
パラケルススは、ゴーレムと自身も馬鹿力を使って作業を進めた。
二人共見た目が華奢な女の子に見えるのに体の数倍以上の岩石や資材を運んでいる姿は、とても信じられないものだ。
まあデザートアントというアリの魔族にホムンクルスの身体での馬鹿力、二人共見た目を遥かに上回る力の持ち主だ。
二人よりも屈強なゴリマッチョ姿の男の魔族があまりの不思議な光景に唖然としていた。
「ふたりとも、すげえ……」
サイクロプスとミノタウロスが口をあんぐりと開けている。
「そこ、サボっとったら昼メシ抜きやでー!」
「ひいー、姐さんんスンマセン!」
「すぐやりますー」
土木班の魔族は二人の働きを見て触発されて動いていた。
そんなこんなで工事はテキパキと進み、それから一週間もせずにプールを作ることができた。
「やったー! 完成したでー!!」
「よーし、楽しむのだー!!」
「コレが宿舎の地下に廃熱利用で作ったプールですか」
「妾は流れる水は渡れぬのよォ!」
「ご主人様―。我水浴びしても良いですかー?」
「打たせる修行用の滝は無いのか?」
「料理長が休みをくれたんだ、水浴びしてもいいか?」
なんだかんだとプールの噂を聞きつけてポンコツ女達が全員集合した。
しかし全員そろうとある意味圧巻である。
なんというか、目のやり場に困る。
私はバーレンヘイムに追放後、以前のような触手による生殖本能が何だか衰えたような気がする。
まあ下手に女に手を出すとアブソリュート様の呪いで地獄の責め苦を受けることになるので女に手を出そうとしなくなったのが響いているのかもしれない。
そんなこんなでポンコツ女達は全員で大型プールを楽しんでいた。
「ほう、これは使い方を考えれば大きな収益になるかもしれませんね」
「何か難しいこと言ってるようだけどよくわからないので遊ぶのだー」
「ガルルルル、やっぱり水浴びは気持ちいいな! でも何だか水が温かくて少し変な気分になるな」
「これは地下の溶岩の熱を使って水をお湯にしとるんやで、この工事頑張ったんウチやねん。もっと褒めて褒めてーな」
アリアが胸を張ってドヤ顔をしている。
しかしアリアの擬態は……パラケルススよりもよほど出るところが出ていてくびれるところがくびれている。
これが長年の経験の差というものなのだろうか。
パラケルススは浮き輪を使ってバチャバチャとお子様用プールではしゃいでいた。
こう見るとどう考えても元がマッドサイエンティストのジジイだとは思えない。
やはりホムンクルスを作る際の脳の容量を子供にしたのが本当に知性まで子供になっているのかもしれない。
そんなこんなでプールを楽しんでいたポンコツ女達は昼過ぎまで好き放題に遊んでいた。
「そう言えばお腹がすいてきたのだ」
「せやな、動いて遊んだら腹減ったな」
「何か食べる物はないのォ?」
全員がお腹すいたを連呼している。
ここに店を作る予定はなかったが、外部解放を考えるなら収益込みの店を作っても良いかもしれないな。
「そう言う思って料理長からお弁当の差し入れだ! みんな食え」
全員がリオーネの持ってきた大きな袋を見て喜んだ。
中に食べ物が入っているとわかっているからだろう。
袋を開くと、中に入っていたのはパンに挟まれた肉のホットサンドのようなものだった。
そしてホットサンドを手に、私を含めた全員がお昼を食べながら休憩した。
食事はホットサンドだったが、その中身は肉とソースが絶妙のバランスで合わせられており、野菜がアクセントになってとても美味しいものだった。