154 地熱と溶岩での湯沸かし法
予算の方は騎竜戦艦、バッカスの無駄遣いを、むしろどちらもプラスに転用できたので、いくらでも使える。
それを踏まえた上で、このオートマチックスマートハウスの新宿舎建築は、抜本的な見直しをする必要がある。
まずはエネルギー面だ。
魔素を取り込む大型パネルは家の屋根の上に巨大なものを取り付ける形になる。
この家の居住者数は大きく見積もって5階建ての10部屋。
つまりは50部屋が必要になる。
この50部屋をどうやってエネルギーを確保しつつ、快適な居住空間にできるか。
それが今後のこの宿舎建設計画の肝になる部分だ。
「テンタクルススー。とりあえず見直したのだー。全体のエネルギーを考えて一つの部屋で使えるエネルギーがかなりショボくなったのだ」
「ショボいって……どれくらいですか?」
「当初の計画の100分の一なのだ、これだとお湯を沸かしたり、部屋をあったかくしたり寒くしたり、照明を点けてドア動かしたりテーブルやベッドをしまうことくらいしかできないのだ。」
あの、それで十分です。
本来の100分の一って、一体一部屋にどれだけのエネルギーを使うつもりだったんですか?
「い、いえ。それだけ使えれば問題ありませんよ」
「問題大アリなのだ。このエネルギー量だと全然足りないのだ」
素人目にはこのエネルギー量あれば十分に成り立つはずなのだが。
「では一体何にそんなに使うんですか?」
「それは当然乾燥させたり水を回す力なのだ」
「つまりそれは?」
「プールで遊べなくなるのだー!」
そんなもんいらないだろう。
むしろそんな物一つ一つの部屋につけたらどれだけの無駄が増えることやら。
「それはどう考えても部屋に一つ一つはいらないかと……」
「えー、せっかく面白いシステムを作ったのにそれを実践できないと悔しいのだー」
なんだ、パラケルススの珍発明を全部の部屋につけたかっただけなのか。
そんな物は当然却下だ。
「そんなもの部屋にいりません」
「やだやだやだ、プールが欲しいのだー。ワシも遊びたいのだー」
なんだこの駄々っ子は。
これはどうにかしてプールを作らせないと駄々っ子が拗ね続ける流れらしい。
「仕方ないですね、では部屋の一階に大型プール設置にしてはどうですか?」
「わかったのだ、それでならどうにかできるのだ」
だが問題は、その大型プールの水やエネルギーの確保をするかだ。
「ところで水やエネルギーは魔素や光を使うだけではとても賄えませんよ。いったいどうやるつもりですか?」
「フッフッフー、それはもう考えてあるのだー。テンタククルス、以前サンドイーターに追いかけられたこと覚えているか?」
忘れたくても忘れられませんよ。
あんな危険な目にはもう遭いたくありません。
「それが何の関係があるのですか?」
「あの時、サンドイーターをやっつけた時に下の大きな溶岩があったのだ、あれを使うのだ」
何だか嫌な予感しかしない。
だがパラケルススは何の危険性も考えずにそのアイデアを使おうとしている。
「そ、そんな溶岩を使って溶けたりしないのですか?」
「その対策はバッチリなのだ」
何をどうバッチリ対策しているのかがまるで見えない。
「そ、そうですか。それで……溶岩で何をしようというのですか?」
「溶岩の上にでっかい蓋を作ってその地熱でプールを沸かすのだ。そのプールの水をろ過したものを各部屋に回して、下水をまた溶岩に戻すのだー」
この説明で理解できるヤツはどれくらいいるのだろうか?
残念ながら私には半分くらいしか理解できなかった。
全部理解できるのは天才か大バカ者だ。
とにかくパラケルススは溶岩を何かに使ってエネルギーにしようということだけは分かった。
しかし、そんなにうまく行くものなのだろうか?
私は不安を感じながらパラケルススの説明を聞いていた。